NOVEL TECHNOLOGY

神経埋め込み型センサーチップによる未来医療

カリフォルニア大学バークレイ分校の研究グループは体内に埋め込める極小サイズのワイアレス・センサーの開発に成功した。ウエラブル端末のマイクロ版となるチップで人体の神経、筋肉や器官の活動状態のリアルタイム・モニターが可能になると期待されている。

ヒト細胞核で生命サイクルを刻む時計

ニューヨーク大学の研究グループはヒト細胞内に内蔵される生命時計(核細胞の運動)を発見した。この細胞核の運動と生物活動の関係を調べることで、病気の発症メカニズムの理解が進むと期待される(Chu et al., PNAS (2017))。

代謝酵素を標的とした新しい膵臓癌治療法

肥満人口の増加と共に増加の傾向にある膵臓癌は癌死亡原因の3位であり、5年後の生存率は8-9%である。ボストン小児病院とMIT、ハーバード大学の研究チームはがん細胞が窒素を除くために使う酵素を標的とした新しい膵臓癌治療法を提唱している(Kalaany et al., Nature Comm. On line Aug. 15 (2017))。

ドラッグデリバリでスパイスが癌細胞を死滅させる

クルクミンはウコン(ターメリック)などのスパイスに含まれるポリフェノール化合物だが、ナノ粒子によるドラッグデリバリによって癌細胞を死滅させる働きがあることが最新の研究(によって明らかになった(Kalashinikova et al., Nanoscale, June 09 (2017))。

2型糖尿病の病因となるSLCA16遺伝子の変異

糖尿病患者の90%を占める2型は後天的な原因で進行するが、発症は遺伝的な要因が存在すると考えられていた。MITとハーバード大学の研究グループは2型糖尿病のラテンアメリカ人の遺伝子を解析した研究で、SLCA16遺伝子の変異による肝臓細胞の機能喪失が2型糖尿病の病因であることを突き止めた(Cell 170 1 199 (2017)))。

量子気体顕微鏡でハバード反強磁性体を観測

ハーバード大学の研究グループは新たに開発した量子気体顕微鏡で、低温原子の光格子が作るハバード反強磁性体の観測に成功した(Nature 545, 462 (2017))。強相関電子系での高温超伝導の理論解明に向けて大きな前進となることが期待されている。

アタカマ砂漠に世界最大の反射望遠鏡の建設が始まる

チリのアタカマ砂漠に140億光年の彼方を観測できる世界最大の反射望遠鏡(European Extremely Large Telescope, E-ELT)の建設が開始された。完成すればE-ETTは現在世界最大の反射望遠鏡の5倍の大きさとなる。

進展する遺伝子治療~遺伝子疾患に光

クイーンズ大学の研究グループは遺伝子編集による遺伝子疾患治療法の検証に成功した。難病とされる肝臓疾患など遺伝子変異で発症する疾患の治療に役立てることができるとしている(Nature Scientific Reports 7:2585 (2017))。

環境汚染物質ペルフルオロオクタン酸(PFOA)除去技術

ノースウエスタン大学の研究グループは飲料水からペルフルオロオクタン酸を除去する技術を開発した。この技術によって水に溶けているペルフルオロオクタン酸濃度を10ppt(1000分の1ppb)にまで下げることが可能になった。研究グループはペルフルオロオクタン酸を取り込むサイトを有する高分子で、ほぼ完全に除去することに成功した(L. Xiao et al.,  J.A.C.S. online May 30, 2017)。

世界最大のX線自由電子レーザーが稼働

欧州は連携してX線領域の範囲を広げた世界最大のXFEL(European XFEL)をハンブルグにある高エネルギー物理研究所DESYに建設した。2017年5月4日、ドイツのハンブルグに建設されていた世界最大のX線自由電子レーザーEuropean XFELが完成し、試運転で発振に成功した。

2018年から導入が始まるレジロボ

セルフ精算機先進国である日本のメーカー(Panasonic)がレジロボ(全自動精算システム)を開発した。これは自分でバーコードを読み取らせる全自動セルフ精算機の進化形で、バーコードの代わりにRFタグを商品に貼り付け、RFで読み取る操作をロボットが行い、客は買い物かごをレジに置くだけで良い。

空気から水を製造する技術

砂漠や干ばつ地帯では飲料水をつくることが生命線であり、農業には何らかの方法で淡水を必要とする。そのため海に近い地域では海水の淡水化や人工雲で降雨を起こすことが行われている。MITとバークレイ研の共同研究グループは空気中の水分子を凝集して純水を製造する技術を開発した(Science Apr. 13, 2017)

PTSDの薬剤治療が可能に

このほど英国とスイスの研究グループがPTSDの治療に市販されている抗生物質の一種であるドキシサイクリンが有効であることを発見した。76名に試験的に投与した結果、60%が恐怖感を抑えることがわかった。このことは通常は感染症に対して処方されるドキシサイクリン(Doxycycline)が酵素マトリックスと呼ぶ神経細胞がいの酵素蛋白をブロックするとされる。

自閉症を発現する遺伝子の発見

近年増加の一途を辿る自閉症には特別な遺伝子が関与していると考えられてきたが特定できていなかった。このほど機械学習のアルゴリズムを使った全ゲノム関連解析で、自閉症の発症に関係する遺伝子をこの手法で絞り込み、自閉症発現の鍵となる遺伝子が特定された(Nature Neuroscience Feb. 01 (2017)。

ボーズアインシュタイン凝縮系「超固体」の発見

MIT研究グループはボーズアインシュタイン凝縮した超流動状態にある原子のレーザー照射によって超流動でありながら固体の特徴である長距離秩序を有する超固体(Supersolid)をつくりだすことに成功した。

パーキンソン病に遺伝子治療の可能性

ロンドンのキングス・カレッジの研究グループはパーキンソン病などの神経変性を引き起こす遺伝子機能を阻害する遺伝子を発見した(PNAS, 112 44 E6000 (2017)))。世界で患者数が700-1000万人とされるパーキンソン病の治療はこれまで対処療法に限られていたが、今回の発見で抜本的な治療法につながると期待されている。

ヘリウム化合物の発見

中国の研究者を中心とした国際研究チームによってヘリウムが113GPa以上で蛍石型構造を持つ絶縁体結晶Na2Heをつくることが明らかにされた(Nature Chemistry, Feb. 06 2017)。研究チームは計算により仮想的な高圧力下でNaとHe原子の反応とNa-He化合物の安定性を調べて200GPa以上でNa2He相が安定化することを見出し実験に臨んだ

高性能フレキシンブルLiイオンバッテリー

パナソニッックは2016年10月にフレキシブルLiイオンバッテリーを市場に出したが、より高性能化を目指した電極構造の研究開発が精力的に行われている。シンガポール大学の研究グループはポーラスグラフェンとゲルマニウム量子ドットで容量1,220mAh/gで長寿命のフレキシブルLiイオンバッテリーの開発に成功した(Nature Comm. 8:13949, 2017)。

新しい塩基配列生命体の安定化に成功

遺伝子組み替えによって地球上に存在しない生命体を原理的にはつくることができる。米国の生命科学研究所が新しい塩基の組み合わせを持つDNAを持つ新種のバクテリアを合成したことを明らかにした。

世界最強のパワーレーザーが完成

英国とチェコの国際共同研究チームはこれまでの最大のレーザー出力を10倍高出力となる世界最強パワーレーザーの開発に成功した。国際共同研究チームは2011年から平均出力が高出力レーザーを開発し、このほど1,000Wの世界最高出力を達成した。

人間のDNAを合成する試みを目指すヒトゲノム計画2

ヒトの遺伝子をあたかも化学物質のように、合成しようとする研究を目指す研究者たちがいる。究極の生命科学ともいえるこの研究には技術的にも難関だが倫理的な命題「人間がクローンを作製してよいのか」が立ちはだかる。

生物を損傷なく観察する世界初のヘリウム顕微鏡

ケンブリッジ大学の研究グループが世界初となるヘリウムビーム顕微鏡を開発したことで、生体に損傷を与えることなく観察できる活気的なイメージングツールが登場した。ヘリウムビームを使うメリットは可視光と異なり試料を透過しないため、対象の形をそのままで観察できることにある。

試験運用が開始される脳死蘇生技術

機能停止した脳機能(脳死)を蘇生する技術が米国で開発された。米国のバイオテク企業バイオクオーク社が脳死の20件について試験的に蘇生措置を行う倫理許可を米国とインドの厚生省(NIH)から認可された。幹細胞とペプチドが投与され神経組織が再生する。

ナノワイヤーを使った高性能バッッテリー

カリフォルニア大学アーバイン分校の研究チームはナノワイヤーを金属コーテイングした新型バッテリーを開発した(ACS Energy Letters, 2016, 1, 57)。このバッテリーは長寿命でモバイル機器やEVの新展開につながると期待されている。

CERNが実験データをオープンアクセス化

CERNが300Tバイトに及ぶLHCのCMS実験データをネット上で公開した。社会に広く生データを公開すれば世界最先端科学を教材として提供することで社会貢献できるとCMS実験責任者は説明するが、この時期に発表される真意について憶測を呼んでいる。

サムスンがスマートコンタクトレンズ特許を申請

サムスンがスマートコンタクトレンズの特許を申請した。スマートコンタクトレンズには超小型のデイスプレイ、カメラ、アンテナ、センサーが含まれており、その一つは瞬きを入力デバイスとして用いるために使われる。これまでのグーグルグラスのように投影装置なしでコンタクトレンズ装着者が映像を見ることができるようになる。

HIVウイルスを駆逐する遺伝子工学的治療

テンプル大研究グループはT細胞中のHIVウイルスゲノムを遺伝子工学的手法に改変した。T細胞中のHIV-1ウイルスDNA中のRNAをマーカーとしてT細胞の核酸酵素でDNAを切断し、HIV-1DNAを遺伝子を取り除いて切断箇所を復元する遺伝子工学的手法でウイルスの複製を抑制し、患者の体内のウイルスを激減させることに成功した。

標準理論を覆す新粒子のインパクト

2016年に入りLHCはメンテナンスに入ったため確認は遅れているが、ATLASCMSの独立した実験グループで750GeVピークが見つかっているため、新粒子と認められるには確認が必要だが、世界中に2012年にLHCで発見されたヒッグスボソンを超える質量の新粒子が発見されたというニュースがネットでいち早く伝わった。

新型ウイルスセンサーを東芝が開発

東芝が大阪大学と共同で数分でウイルス感染を調べるウイルスセンサーを開発した。東芝であるが従来は検査に8時間を要していたウイルス感染の検査が数分で行える画期的なセンサー技術は応用が期待されている。感染検査の迅速化によって患者の症状が悪化するのを防げるとともにパンデミックを予防することができる。

カーボンナノチューブで太陽エネルギーを貯蔵

MITの研究グループが太陽エネルギーの革新的な貯蔵にtsながる技術を開発した。太陽エネルギーを化学エネルギーとして物質の自由エネルギーとして貯蔵するもので、太陽電池のように電気に変換して蓄電池に貯蔵したり熱エネルギーとして蓄熱するものではない。その利点はロスがなく高エネルギー密度で長期間の貯蔵が可能である点である。

次世代兵器を実戦配備する米海軍

米海軍が開発中のレールガンは10kg砲弾を超音速(秒速8,000km/h)で打ち出し、射程160kmに達し貫通力も飛躍的に向上する。2018年にはレールガンを駆逐艦に搭載し実戦配備する予定で開発を行っている。

IAEAが放射線による蚊の無精子化を提案

IAEAZikaウイルスをの対策として放射線による蚊の無精子化を提案した。ブラジルを中心とするZikaウイルスの感染流行を食い止めるためIAEAは放射線によるSterline Insect TechnologySIT)と呼ばれる昆虫の無精子化処理を提案した。ロイターによるとIAEAの専門家は216日にブラジル当局と打ち合わせを行う。

燃料電池で走る自転車(FCB)

Lindeの燃料電池自転車(Fuel Cell Bike, FCBとでも呼ぶべきか)は水素ボンベと燃料電池が独立したデザインでモーターはペダルの部分に仕込まれているすっきりしたもの。MBであるが都会で乗っても調和するだろう。

抗生物質が無力な細菌を生み出すMCR-1

すべての抗生物質に対して免疫性のある細菌が中国で発見された。細菌をポリミキシン系抗生物質を無力化する遺伝子を発見した研究結果が英国の医学誌、”The Lancet”に掲載された。プラスミド(注1)と呼ばれるDNAが細菌から細菌へ細胞内においてゲノム上の位置を転移して遺伝子情報を伝えることができるDNAをみいだした。

史上初のマントル掘削を目指して

インド洋の海底を数kmにわたって掘削することで、いよいよ人類は史上初めてマントルに到達することになる。プロジェクトチームはJOIDES Resolutionという名前の掘削船で謎に包まれたマントルの解明に挑むとともに、マントル中の生物存在の可能性についても調査を行う。

宇宙の起源を再現する重イオン衝突実験

ビッグバン理論によるとビッグバン後の状態はすべての物質がクオークとグルーオン粒子の混ざり合った「極限環境」にあった。世界最大の円形加速器器LHC14TeVという巨大なエネルギーで鉛イオン同士を衝突させ原子核同士を衝突させる。このほどLHCはこれまでの倍以上のエネルギーで鉛イオン衝突実験を行い、ビッグバン後を再現する状態をつくりだすことに成功した。

中国科学技術院が誇る「科学島」とは

中国に120の研究所を有する中国科学院は、発展著しい内陸Hefeiに市ある「科学島」に5つの研究所からなる「物理科学研究院」を設立した。6研究所が近接して建設されているが自然環境は素晴らしく、研究者が快適に研究生活ができる新天地となっている。

LHCが目指す暗黒物質の解明

暗黒物質をつくりだすことができれば、多次元へ流れ出すと重力波の存在を仮定したモデルを検証することができる。CERNの研究者は暗黒物質をつくりだすのに必要なエネルギーで「重力の虹」と呼ばれる理論の存在を検証することができると考えている。

中国企業化したSegway

Segwayはニューハンプシャー州のベンチャー企業であったが、2015年に北京を拠点とする中国のNinebot社が買収した。詳しい買収条件は公表されていないが、企業買収は投資家に高評価のようでNinebot社はMIUI Technologyなど4社から総額8,000万ドルの融資を受けた、ことを公表した。

血液一滴で感染症がわかるVirScan

米ハーバード大学医学大学院のスティーブン・エレッジ教授ら国際共同研究グループは、一滴の血液で過去から現在に感染したウイルスが分かる新技術「VirScan(バイルスキャン)」を開発し、6月5日発行の米科学誌「サイエンス」に発表した。

LHCが過去最高エネルギーを記録

ヒッグス粒子発見の後、アップグレードのため27カ月間の休止期間に入っていた世界最大の円形加速器LHC(Large Hadron Collider)が再び動き出した。LHCは前人未到の13TeV(テラは10の3乗ギガ)という、当初のエネルギーの倍のエネルギーの衝突実験を行えるようになった。

水で発電するマグネシウム電池

リサイクル電池といえばリチウムイオン電池が頭に浮かぶほど出回っている。一方でより環境に優しい新型電池が注目されている。無公害材料でつくられ水を注いで発電するマグネシウム空気電池である。

ダイソン流LED照明

Dysonの掃除機はサイクロンという新しい潮流を掃除機の世界にもたらし閉塞感のあった家電市場に、ファンレス送風機やエアークリーナーなど次々と、革新的な製品を送り出した。息子のJake Dyson が開発したLEDライトは期待通り魅力的な製品となった

食料危機を救うSmart Floating Farm

新しい概念のグリーンフロート、”Smat Floatin Farm”は温室栽培の「ビルなか農場」をメガフロート上につくりそれらをつなぎ合わせただけの簡単な構造物であるが、人類の直面している食料危機を乗り越えるかもしれない。

欧州の大出力レーザーELI

 最近、欧州に新たな巨大科学プロジェクトが現れた。Extreme Light Infrastructure (ELI)である。ELIは複数の世界最高出力のレーザー施設を別々の場所(3カ所)につくり、これらを関連させて最終的には第4のレーザーを含めて施設を共同研究に開放するもので、加速器、放射光、X線自由電子レーザーのようなスタイルで光科学を推進する。

日本の技術力

日本製品の国際競争力が低下している一方で精密機械分野は日本製品が圧倒的に支配し、顧客満足度が高い。

現代のバベル

上海ではとびぬけて高いビルが建設中であった。上海中心(上海タワー)は632m、128階でアラブ首長国連邦、ドバイのブルジェ-ハリファ(828m)に次ぐ世界2位の超高層ビルである。

Hoverboardの真実

もともとHoverboardというのはSF映画"Back to the future"ででてくる主人公がボードのように、地上を浮遊して動き回る乗り物のことであった。しかしいま実現可能なHoverboardと現実的でない空想のHoverboardが話題をさらっている。

独立国家を目指す海上都市

ドバイにある人口の海上都市がSabah Al Ahmad Sea Cityである。海上都市計画自身は古くから有る。夢の島を始め浅瀬の埋め立ては古くから行われているが、ドバイのそれは富裕層のための人工島となる。写真のように椰子の木をデザインした人口島で、豪華ホテル、別荘があり、およそ25万人が暮らせる施設となる予定だ。

戦争のゲーム化

人類の歴史を現代人と同じ新人類と定義すれば46億年の地球の歴史の一瞬に過ぎない20万年程度である。戦争の起源はメソポタミアで平和な生活を送っていた農耕集団に対して、その日暮らしで食糧難に陥った狩猟集団が攻撃したこととされる。

癌治療の加速科学

 癌治療の最前線は癌細胞の理解度が進むとともに近年、加速度的な発展をみせており、治療方法の概念が大きく変化しつつ有る。癌の発症の起源となるDNA突然変異の張本人であった放射線が逆に癌細胞を死滅させる味方になろうというのだ。

地上1000mの住み心地-Pt.1グリーンフロート

そう遠 くない未来、2050年に地球上の人口は90億人となりエネルギー需要は現在の2倍となると予測されている。人口増加で最大の問題は食糧と水、そしてエネ ルギーである。地球の収容限界が近い今日、実行には勇気のいる火星移住計画を含めて様々な救済プロジェクトが提言されいくつかは実行されつつある。

レーザー兵器が実戦に

米海軍はペルシャ湾でLawWSと呼ばれるレーザー砲の実戦での使用を認めた。LaWSは30kWレーザーでワシントンにある海軍研究所が中心となって進められた。電磁波兵器同様にLaWSの対人使用は当面認められず、無人機等が対象となる。一方で中国海軍は米軍も中止した電磁波兵器を実戦投入した。

サイバーナイフ

最近、ガンマナイフ(注)から発展したリニアック(直線加速器)定位照射装置も開発され、脳腫瘍以外の患部へのガンマ線ビームの集中が可能になった。小型リニアックをロボットアームの 先端に取り付けたこの装置はサイバーナイフあるいはリニアック(直線加速器)定位照射装置と呼ばれる

身近なナノテクーMEMS

MEMSという名を知らない人は多いかもしれないが、誰でもお世話になっている身近なナノテクの代表選手である。地味な響きのMEMSとはMicro Electro Mechanical Systemsの略で、Micromachineとも言われる。半導体の微細加工技術を用いて、小さなパーツを作る技術である。

タクシーの進化ーUber

都会でも時間帯によって流しているタクシーを捕まえられないことがある。例えば11時を過ぎたら六本木かいわいで空車をみつけるのはほとんど不可能である。空車が見つからないとき貴方はどうするだろう。普段よく使う無線タクシー会社に電話して空車を手配するのではないか。

室温ボース・アインシュタイン凝縮の発見

光は波動性と粒子性を併せ持つがボース・アインシュタイン凝縮状態では前者が支配的となる一方で、新たな量子的特性が現れる。これまで液体ヘリウム温度の現象だと思われていたボース・アインシュタイン凝縮を励起子ポラリトンを用いて室温で実現した(Lerario et al., Nature Phys. online June 5 (2017)。

脱合金ナノポーラス水分解触媒~水素社会へ向けて前進

クリーンエネルギーの一翼を担う燃料電池の燃料として水素は天然ガス(メタン)の水蒸気改質法に代わる新製造技術が模索されている。太陽エネルギーと触媒を用いる水分解反応は環境保全の点で理想的な水素製造法であるため、そのエネルギー効率を高める触媒開発が精力的に行われている。アルゴンヌ国立研究所の研究グループは最新の研究で、高性能の水分解触媒を開発した(Kim et al., Nature Comm. 8:1449, 2017)。

抗生物質が免疫細胞の細菌殺傷能力を阻害

ハーバード大学の研究グループは最新の研究で、マウスに投与された抗生物質の効果を調べ、抗生物質が免疫細胞の細菌殺傷能力を阻害する場合があることを見出した。(Yang et al., Cell Host & Microbe online Nov. 30, 2017)。

オピオイドに代わる新しい強力鎮痛剤UKH-1114

テキサス大学オースチン校の研究グループは従来は知られていなかった痛み信号伝達系に働く強力な鎮痛剤UKH-1114を発見した(ACS Chemical Neuroscience, 2017; 8 (8): 1801)。研究グループはマウス実験で従来の鎮痛剤(てんかん・発作で投与されるガバペンチン)よりも長時間効果を持続することを確認した。

ビッグデータ活用で明らかになる新しい疾病相関

シカゴ大学の研究グループが、米国の人口の1/3に当たる健康保険の請求者ビッグデータから(128,989家族、481,657人)抽出して、149の疾病を対象に遺伝的及び環境的因子を解析し疾病相関を調べた。大多数に遺伝子因子が認められ、その一部は従来の疾病分類と整合しない新たな遺伝的疾患との類似性が見つかった。

ウイルス感染症の治療法に進展

オーストラリアのRMIT大学の研究グループはウイルス感染で人体に与える影響を詳しく調べ、植物、きのこ、動物にみられるある種の生物学的プロセスがネズミ(と人間)へのウイルス感染力を増大させる働きがあることを突き止めた(Nature Comm. 8:69, 1 (2017))。マウスを使った実験で、蛋白質Nox2オキシダーゼ(注1)がインフルエンザ、風邪、テング熱、HIVなどのウイルス感染で活性化されると、体内の抗ウイルス反応を抑制しウイルス感染による影響が強まることがわかった。

変質者の異常さは脳神経障害に起因

刑務所に収容されている50名の囚人の脳MRI検査の結果を調べた最近の研究で変質者が発作的衝動に任せて反社会的な行動に出るのかが科学的に解明された。研究によれば変質者の行動の特徴は突発的な行動に価値を見出す一方でそれが引き起こす将来起きる問題を無視することにある(Buckholtz et al., Neuron July 5, 2017)。

光で動くナノモーター

これまでの光による原子操作は特殊なレーザービームや機器を用い、原子や粒子を弾き飛ばしたり、接近させたり回転させる手法によるもので応用範囲が限られていた。MITの研究グループは汎用光源で光と物質の相互作用を用いた新しいナノモーターの原理を提案した。

ゴムの柔軟さとダイアモンドの硬さを併せ持つ新炭素素材

2次元ネットワークの炭素素材であるグラフェンは新しい電子デバイス材料として世界各国で精力的に研究が行われている。中国と米国の研究グループが高圧下で合成に成功した高密度ガラス状炭素が「固くて柔軟な」従来は相反する性質を同時に持つ新材料として注目を集めている(Science Advances  09 Jun 2017: Vol. 3, no. 6, e1603213)。

光合成細菌による心臓疾患の新治療法

現代人の死亡原因のトップは心臓疾患であるが、スタンフォード大学の医療研究グループはこの光合成酵素を治療に使えることを発見した(Science Advances 3 6, e1603078 (2017))。心臓疾患を持つマウスの血液に光合成細菌を注入し光刺激を与えた結果、血液中の CO2を吸収し酸素濃度が上昇し疾患が改善された。

高機能ヒドロゲルガラス繊維

ナノ科学で(機械的強度など)材料の性質材料の性質を改良することができる。北大の研究グループは、ヒドロゲルにイオン性の結合を取り込むことによりそれを織り込んだ繊維の機械強度を改良する技術を開発した。

空気中の水分から水素製造する光触媒

貯蔵できるクリーンエネルギーとして注目される水素は、太陽エネルギーによる水分解で製造できる。MITの研究グループは空気中の水分を光触媒で分解して水素を製造できるコート材料が開発した(Daeneke et al., ACS Nano, June 14, 2017)。

CRISPRゲノム編集に想定外の遺伝子変位

CRISPRは癌治療やHIV治療の最終兵器として期待され、すでにヒト遺伝子治療が始まったゲノム編集技術だが、コロンビア大学の研究グループの研究によれば、特定箇所のCRISPR編集によって、意図しない数100箇所の遺伝子変異が生じる恐れがあることがわかった。研究は単一塩基や翻訳されない遺伝子など標的以外の変異が同時に生じることで危険性があると指摘した(Nature Methods 14 6 547 (2017))。

水素化反応効率100%の単原子バナジウム触媒

アルゴンヌ国立研究所の研究グループはSiO2に担持された有機バナジン(SiO2)V(Mes)(THF))触媒を開発した。アルキン・アルケン炭化水素に対する単原子バナジウムサイトの水素化の触媒活性は100%に達する(Chem. Comm. May 03 20017)。

癌細胞の増殖速度を抑える新しい手法

癌は複雑な病気であるがその定義は極めて単純で、異常細胞の増殖である。ロチェスター大学RNA生物学研究センターの研究グループは肝臓癌と子宮頸癌に対して、異常細胞の増殖速度を抑える新しい手法を開発した(Science 356 6340 859 (2017))。 

アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントン病の共通因子が発見される

認知症の代名詞となったアルツハイマー病は全世界で350万人以上が発症するが、難病である神経変性疾患のパーキンソン病、大脳中心部の神経細胞が変質するハンチントン病に共通の因子として、脳細胞を変性させる異常蛋白質が存在することがわかった。

負の選択に遺伝子間相互作用が関与か

ヒトとショウジョウバエの遺伝子の機能喪失型変異を調べた最近の研究(Science 356 6337 539 ((2017))によると、劣勢遺伝子変異の個人差が統計的な予想より大きい。このことは遺伝子相互作用によって「選択」が生まれていることを示す。負の選択が遺伝子変異の総量ではなく、遺伝子間相互作用で決まることで多様性が保たれていることが明らかになった。

入射器を刷新してルミノシテイを追求するLHC

LHCはCERNの加速器軍のアップグレードの一環として、LHCの入射器(直線加速器)Linac 2を新しい設計のLinac 4に入れ替えた。Linac 4は試験運転の後に2019-20年に予定されているルミノシテイ(輝度)をあげるアップグレードでLHCに組み込まれる。

新型ライトシート蛍光顕微鏡による生体試料の3Dイメージング

従来の蛍光顕微鏡は焦点以外の試料を照射するので、焦点周辺の迷光(蛍光)がバックグラウンドとなり生体試料では光照射による損傷も問題となる。これに対してライトシート蛍光顕微鏡では励起工学系と検出系を別のテンズ系としているため、観測する対象のみを励起することができる。

ナノ構造シリコンでLiイオンバッテリーの弱点を克服

Liイオンバッテリーの性能を左右するボトルネック、グラファイト電極は精力的に研究開発が行われてきた。このほどカリフォルニア大学リバーサイド分校の研究グループはシリコンを陰極材料に採用するナノ技術でLiイオンバッテリーの陰極材料に起因する劣化問題を解決した。

細胞をHIVウイルス耐性化する治療法

HIVウイルスに感染した患者も、抵レトロウイルス治療法によって通常の生活を送れるようになったが、ウイルスが退治されるわけではない。抜本的な治療法はないのが実状である。カリフォルニア州にある民間研究所TSRIの研究チームはHIV抵抗能力のある細胞を体内に増やしてHIVウイルスに感染した細胞を抵抗力のある細胞で置き換えることに成功した(Proc. Nat. Acad. of Sci.)。

光遺伝学で解明が進む記憶のメカニズム

人間の短期記憶は海馬と呼ばれる脳の一部に形成されることがわかっている。この短期記憶が後に他の記憶と統合され別の部分に長期記憶として保存されるというのが定説であった。MITの脳神経研究チームはこのほど海馬の短期記憶と同時に長期記憶が形成されることを見出した(Science Apr. 6, 2017)。

CERNの考える未来の加速器~プラズマ・ウエークフイールド

電場の上限が~100MV/mとなる高エネルギー粒子加速器は全長が数10kmにも及ぶ。このためCERNはプラズマ・ウエークフイールドと呼ばれるプラズマ加速原理の研究を進めている。強力な短パルスのプラズマで加速すれば、わずか数cmの距離で1GeV以上のエネルギー電子を作り出すことができる

世界初の遺伝子編集技術による癌治療

2016年10月28日、中国人医師チームによってCRISP―Cas9と呼ばれる遺伝子編集を受けた遺伝子が世界で初めて人間に注入された。ペンシルバニア大チームの遺伝子編集技術を開発したあと、米国と中国の研究者らの熾烈な競争が続いていたが、世界初となる人間での試験は中国の研究チームによるものであった。

世界初となる幹細胞からマウス胚の発生

幹細胞が発生初期の多くの細胞に転換できるため、幹細胞から異なる器官を形成する知見が得られる胚幹細胞に関する研究が盛んである。このほどケンブリッジ大学の研究チームは世界初となる幹細胞から発生させたマウス胚をつくりだす試みが成功した。

衛星データ活用で進化するプレートテクトニクス

この20年で衛星データの活用でプレートの歪みの知見は飛躍的に深まっている。衛星データで地表の裂け目の観測や断層とずれのマッピングと地震の関係を調べることで、地震と起源となる断層の関係から将来歪みが引き起こす地震リスクの評価が可能になった。衛星データの活用によって地表の変形モデルの時間依存が得られ、長期的な断層形成とプレートの変動を知ることができる(Nature Comm. 7 13844 (2016))。

拡張現実のインパクトは未知数

学術的には拡張現実は次の条件を満たす技術として定義される。(1) 現実と仮想現実の組み合わせ、(2) インタラクテイブかつ実時間応答、(3) 3D情報として扱われる。新しい技術のような拡張現実は意外に歴史が古く1930年代から始まっているが、スマホの浸透によって急激に利用が進んでいる。

ナノピラーによる収差制御平面反射レンズ

ハーバード大学の研究グループは金属ナノ構造体(ナノピラー)を用いて、可視領域の非収差平面反射レンズをつくる技術を開発した。同グループはチタン酸化物による誘電位相シフタで光学レンズと等価な反射鏡を平面でつくることに成功した。(Nano Lett. Jan. 26, 2017)

水素の金属化にはじめて成功

米国ハーバード大の研究グループが超高圧化で金属水素個体を作り出すことにはじめて成功した。金属水素の可能性が1935年に示されて以来、これまで多くの研究グループが超高圧実験に挑戦してきたが、明確な金属化の証拠は得られていなかった。これまで4番目の高圧相(Phase IV)が230GPaで得られることがわかっていたが第5、第6の相は実現していなかった。

MITが鋼鉄の10倍の強度を持つポーラスグラフェンを開発

MITの研究チームがフレーク状のグラフェンを圧縮・溶融して微細な穴を持つナノ構造体とすることで、鋼鉄の10倍の強度を有する軽量・高強度材料を開発した。2次元構造を持つグラフェンは軽量で機械強度が高い上に高電気伝導度を持つ次世代材料として注目されていたが、これまで特徴を生かして高強度材料として用いることが困難であった

光触媒の水素発生効率が100% に

水分解反応は水分子を酸素とプロトンに分解する負極反応とプロトンから水素を生成する正極反応の4電子2反応プロセスである。この中の還元プロセス(水素発生)の可視光によるエネルギー変換効率はこれまで60%止まりだったが、このほどイスラエルの研究グループが効率100%を達成した(Nano Lett. 16 (2016) 1776)。

 イリジウムNEXTによる次世代衛星ネットワーク

衛星電話を運営するイリジウム社は2016年12月1日、時期計画としてイリジウムNEXT計画を公表した。イリジウムNEXTはバックアップを含めて81基体制の静止衛星で地球全体を覆い地球上の全ての場所で衛星通信を可能とする。

癌細胞の正常分裂を阻害する酵素蛋白を発見

英国癌研究所、ケンブリッジ大学、ダブリン大学の研究チームがこのほど有糸分裂時にBuBR1と呼ばれる酵素蛋白が癌細胞の細胞分裂時に攻撃して破壊することを発見した。BuBR1分子が染色体を複製して細胞分裂した細胞が未熟な状態に置かれ死滅することを見出した。

実用化が近いカーボンナノチューブICチップ

非シリコンメモリ企業ナンテロ(Nantero)はメモリーチップへの応用に3150万ドル(日本円にして約35億円)を投資する。IBMは高速デバイスに応用しシリコンチップより最大1桁高速の演算チップの開発を目指している。

骨阻喪症の薬が乳癌細胞の成長を止める

オーストラリアの研究グループによる最新の研究によれば、マウス実験で多発性骨髄腫(骨阻喪症)に効果のある薬剤の投与で、乳癌細胞の増殖を抑えられることがわかった。この薬剤は新薬ではなく認可され市販されている骨阻喪症のためのものであることから、乳癌の治療に役立つと期待されている。

ダイアモンドで磁気ナノイメージングが可能に

フランスの研究グループがこれまで困難とされてきた超薄膜磁気フイルムの磁気ドメインのナノイメージング技術を開発した。AFMのカンチレバー先端に取り付けたダイアモンドに発生する点欠陥を用いるこの手法で磁区の2Dイメージを観察したり、ドメインを移動させたりすることができる。

期待が高まるHIV新治療法

英国のHIV患者が受けた新治療法によって奇跡的な回復を遂げたことで、ウイルス根絶が現実となる日が近いかも知れない。44歳のHIV患者は英国の大学からの50名からなる選抜研究チームの開発した試験段階にある新治療法を受けた結果、順調に回復した。HIVウイルスを根絶して完治できる抜本的な治療法となると期待されている。

化学治療は諸刃の刃なのか

化学療法を始めてから30日以内に死亡した英国の癌患者を調べた最近の研究によれば化学療法を受けた癌患者の半数が薬の副作用で死亡するという衝撃的な事実が明らかになった。

ステルス機を無力化する中国の量子レーダー

量子もつれ効果の世界では距離によらず粒子間には相関が存在する。この現象(量子もつれ)の応用は量子計算機にとどまらない。原子時計や地磁気を頼りに飛ぶ鳥にも使われている。最新の応用はマイクロ波や光ビームに反射し

アルツハイマー型認知症の新薬を開発

高齢者の増加とともにアルツハイマー型認知症の患者数も比例して増大することが先進国共通の社会問題になりつつある。このほど米国とスイスの薬剤メーカーによって患者に注射するだけで進行を食い止める新薬が開発され、臨床試験により初期症状の患者の認知症治療に有効であると期待されている。

LHC再実験で新素粒子の確証は得られず

CERNのLHCは2015年12月はヒッグス・ボソンの6倍の質量を持つ謎の素粒子を発見した。標準理論では説明できないこの新素粒子の存在は標準理論を超える新理論あるいは第5の相互作用の存在を示唆するものとして、世界的な注目を集めた。そこで2016年4月から実験結果を再現する試みが行われたが、再実験では新素粒子は発見できなかった。

人間の判断と行動を決定する脳の領域

ジョン・ホプキンス大学の脳神経研究者チームは機能MRIを用い脳が判断を下す瞬間を捉えその場所を特定することに成功した。研究チームによれば前頭葉と左頭頂葉に判断機能を持つ場所があることがわかった。

人間にも磁気検知能力~第6の感覚

カルテックの研究によれば、人間は無意識に磁場を感じておりそれが第六感の科学的根拠だという。研究グループは電磁波の侵入を防ぐファラデーケージと脳波モニターを用いて人間のアルファ波が磁場に反応することを見つけた。

ヒトDNA編集が容認へ

米国で動物に対して行われている「DNA配列の編集」が世界で初めてヒトDNAに対しても認可される。このほどNIHは細菌を利用したDNA編集ツールCRISPRの癌治療を目的としたヒトDNAへの適用を認めた。これにより将来ヒトの免疫細胞が癌細胞を標的とした攻撃(免疫療法)が有効に行えるようになると期待されている。

CO2を石に変えて地球に戻すCarbfixプロジェクト

アイスランドのヘリシェイデイ発電所はCO2を石に変えて地球に戻す計画に取り組んでいる。世界初となるCO2を岩石に変換する試でみは、CO2を玄武岩に吸収させてから硬い岩石に変成するが、予想以上にその速度が速いことがわかった。

ニューヨークに世界最大のレタスファクトリー誕生

世界最大のVertical Farmがニューヨークに出現した。巨大都市の近郊でも水の使用量を一般的な農場より95%カットしながら、75%多い収穫量が特徴だ。米国の農地面積減少で野菜の供給不足に陥っていたが、狭い土地を有効に利用するVertical Farm人口密集地域への野菜供給能力が一気に増大する。

人工葉で水素社会

増え続けるCO2を減らすために太陽エネルギーを使って、空気中のCO2固定や、水分解を光合成に習って人工的に起こす技術の開発が精力的に行われている。まだ人工光合成のエネルギー変換効率は0.1%と低いが、後者は太陽光パネルによる電気分解と光触媒のふたつのアプローチが研究されている。MITの研究グループは人工葉(Artificial Leaf)と呼ばれる両者を組み併せたデバイスを開発した。

LHC4倍の規模の円形加速器FCCが発進

世界最大の円形加速器といえば、周長27km、エネルギー13TeVLHCLarge Hadron Collider)である。欧州はその次の計画としてより大型のハドロン衝突リング(Future Circular Collider, FCC)を推進する。現在は検討の段階にあるがLHCの成功により欧州が中心になって建設に踏み切る可能性が高くなった。

光で駆動する世界最小のナノエンジン

ケンブリッジ大学のキャベンデイッシュ研究所の研究チームが光で駆動する世界最小のナノエンジンを開発した。将来活躍するとみられる生態内部を動き回り治療に使われるナノロボットの駆動システムに応用が期待される (PNAS(20160. DOI: 10.1073/pnas.1524209113)。

砂時計フェルミオンで新型トランジスタ

KHgXX=As, Sb, Bi)結晶では。非共型対称性(non-symmorphic symmetry)による表面バンド分散が砂時計型となる(Nature 532, 189 (2016)。プリンストン大学の研究グループはこのような「砂時計フェルミオン」バンドは新しいトポロジカル絶縁体として、電子が表面バンドの上下をしめそれらをつなぐ両端のバンドのみを伝導する新しい概念のトランジスタが誕生する可能性があある。

量子スピン液体の確認に成功

1973年にアンダーソンが提案した「量子スピン液体状態」(注1)を持つ物質が見つかり、これまで幾つかの系(注2)でその存在が垣間見られてきた無秩序のスピン状態が中性子散乱で確認された。キャベンデイッシュ研究所とマックスプランク研究所の共同研究チームはRuCl3結晶に中性子を照射することにより、スピン配列が液体のように無秩序化することを中性子散乱実験で明らかにした

進化する風力発電

これまで巨大ブレードの風力発電の試みはあったが構造的な問題(機械強度)のため、重量と耐風強度に問題を生じていた。米国の技術者のSUMRでは強風時には椰子の木のようにタービンブレードがしなって抵抗を低くする設計で、強度を上げることで巨大化が可能になった。SUMRでは全体の高さが479mに達する。

サイボーグ心臓パッチ

多くの心臓病を持つ患者にとって未来技術でしかなかった遠隔操作の人工心臓をテルアビブ大学が開発した。バイオニックワールドの扉を開く画期的な治療法になると期待されている。“Cyborg Cardiac Patch”と呼ばれる開発されたバイオニック人工心臓はこれまでのもの同様に収縮・拡張して血液ポンプの役割を果たすが、遠隔で制御され必要に応じて薬剤を自動的に投与するもので、いわばサイボーグ技術に分類されるものとなる。

磁気演算でエネルギー消費が100万分の1

カリフォルニア大学バークレー分校の研究チームは世界で初めて熱力学上最低エネルギーで動作するナノ磁気チップを開発し、その動作を磁気顕微鏡で観測することに成功した。従来のトランジスタのような電流のオンオフでなく磁気チップで演算する原理あるため発熱がない。

LHCが標準理論を覆す新粒子を発見か

ヒッグス粒子の発見は長年にわたる素粒子探求の最終章であったが、同時にそれは現時点での理解(標準理論)に登場する粒子が全てが出揃ったことも意味する。もしLHCが新粒子発見すれば新粒子発見は標準理論の破綻を意味する

フェルミラボが新しい素粒子を発見か

引退したと思われていたテバトロンだが2011年間までの実験結果を整理して、新たな素粒子発見の可能性を示すことを発見した。この素粒子のフレーバー量子数は4個のクオークと反クオークを有する新しいものでテトラクオークとなる可能性がある。これまでの分類にない新粒子の可能性が高いとしている。

超高密度記録を可能にするスーパーメモリー

人類史が1枚のデイスクに書き込めるほど記憶容量が大きく10億年にわたって保持できる「スーパーメモリー」をサザンプトン大学の研究グループが開発した。このデイスクは5次元データ(大きさ、配向、3層のナノ構造)として記録する。

中性子の少ない新型核融合とは

NASAは火星まで7日間で到達できる推進理力を得るために中性子に頼らない新型核融合(Aneutronic Fusion)を開発している。現在運転を目指して研究開発が進められている核融合炉は原子炉の代わりに核融合炉でタービンを回す効率が悪いものであるが、この装置では電子を発生するので発電効率が高い。この電力を電磁推進に使用できるので惑星間飛行などの推進力源として期待されている。

脳の冷凍保存に成功

冷凍療法(Cryonics)の研究者たちが動物の脳の冷凍保存に成功した。21 Century Medicinehttp://www.21cm.com/)の研究グループはウサギの脳を取り出して冷凍保存したのちに解凍して、完全な状態に戻すことに成功した。これによりヒトの脳を冷凍保存し移し換えることができる見通しがついた。

10倍も大きかった人間の脳の記憶容量

人間の記憶をつかさどるシナプスの大きさを正確に測定した結果、これまで考えられていた容量の10倍大きいことがわかった。米国の研究グループ(Salk Institute)がシナプスの記憶容量を測定した。その結果、平均的なシナプスが4.7ビットの情報量を保持できることがわかり、脳全体の記憶容量は1ペタバイトに達することが明らかになった。

スピン流の長距離伝搬に成功:スピントロニクスに期待

英国にあるバース大学物理学教室の研究グループはスピン三重項クーパーペアを磁化の方向が異なる2層の強磁性体をBCS超伝導体で挟み込んだ強磁性体ジョセフソン結合をつくることによって、スピン三重項クーパーペアによるスピン流を50nm厚の非磁性金属(金)中に伝搬させることに成功した。

電極を自己修復する機能性ジェル

テキサス大の研究グループが電極材料の自己修復作用を持つ機能性ジェルを開発した。燃料電池の白金電極には動作中に欠陥が形成され不均一化することが劣化につながる。テキサス大グループはNano Lettersに劣化を未然に防ぐ効果のある自己修復機能を持つ材料をみいだしたことを報告した。

ホーキングが「スマートドラッグが人類を変える」と予測

AIロボットに対する警告などこれまで数々の未来リスクについて警告してきたホーキングが「スマートドラッグ」と呼ばれる頭脳機能促進剤(商品名Cogniq)が人類の歴史において最大の事象となるだろうと語った。スマートドラッグは脳神経細胞の接続、前頭前皮質の強化、記憶機能の強化の働きで脳を活性化させ潜在能力を引き出す。

瞬時に浄水する新しい機能性高分子

米国コーネル大学の研究グループが画期的な機能性高分子をつくることに成功した。新機能性高分子は水の不純物を瞬時に浄水する(Nature (2015) doi: 10.1038/nature16185)。使われたのはシクロデキストリンという環状に糖鎖が固定された表面積が大きい環状オリゴ糖の一種である。

WiFi電波で人間の行動を透視する技術をMITが開発

MITワイアレスセンター所長のKatabi教授は、WiFi電波を用いて離れた場所にいる人間の場所や活動を監視する技術を開発した。この技術を使うとこの技術は、認知症患者の動きや高齢者の生活を家族が遠方で見守ることが可能になるほか、軍用の監視装置にも応用が可能となるとしている。

限界を破るか新型高温超伝導体

高温超伝導研究は氷河期を迎えているが、沈黙を破って2014年12月に臨界温度の更新を伝える報告がロスアラモスのサーバーにドイツのマックスプランク研究所の論文原稿が掲載された。Erementsらは大気中で絶縁体の硫化水素(H2S)に圧力をかけていくと190Kで超伝導を示すことをみいだしたことで、超伝導の証明であるマイスナー効果も確認され、臨界温度更新の可能性が高まった。

加速器オンチップ(AOC)のインパクト

加速器を微細加工でスケールダウンするアイデア(AOC:Accelerator on a chip)が生まれた。スタンフォード大学の加速器研究所(SLAC)はこれまでに多くの斬新的な加速器技術を開発してきたが、AOCの開発に取り組んでいる。技術的な課題も多いが、この技術が完成すれば巨大な加速器のサイズダウンが可能となり、物理実験は医療応用において画期的な展開が期待できる。

クラウドファンデイングKICKSTARTERの先見性

クラウドファンデイングのKICKSTARTERは芸術作品、楽曲を工業製品と同等に扱い、全13のカテゴリーで数100件の広告を掲載している。本社はNY、マンハッタンでTIME詩の2010年、2011年度の「Best Invention」に選出されるなど、話題を集めている。集めたファンドの5%KICKSTARTERに支払うことになっているが、若いアーテイストや起業家の支持を集めた新しいビジネスモデルとなった。

クローン家畜で子牛を量産する中国

中国の世界最大のクローン施設が家畜のクローン化を計画している。年間100万頭の子牛クローンを生産できる世界最大のクローン施設が近く操業を始める。動物のクローンは生まれてから数週で死ぬ確率が高く、しかも苦しんで死ぬという現状に、本格的な家畜クローンへの批判が高まっている。

EM DriveはNASA TRLでランクアップなるか

EM Driveはロケットに加速器の加速空洞を応用したものである。加速器で使われるマグネトロンからマイクロ波をコーン型の高Q値空洞に導き、コーン奥に共振器で空洞を共鳴させると出口方向に推力が発生するというものである。このほどNASAはコーン形状を改良して真空中で実験をしても推力が存在することを確認した。

グラフェンでつくる電子皮膚

電子皮膚では圧力の他に温度情報も同時に得られるため基本的には人間の肌が伝える感覚情報を伝えることができる。実験では電子皮膚は感度が高いためその上を流れる水や髪の毛1本が落ちたことも認知することができるという。製作したのは韓国のUlsan National Institute of Science and TechnologyPark教授。

中国の野望は加速器の世界に及ぶのか

中国科学院の王教授によれば、超巨大円形加速器CEPCでLHCのエネルギー限界を大幅に越えた加速器が可能になるという。25TeV(注2)では1周約50km、45TeVでは70kmの衝突リングをつくるCEPC計画の建設費は35億ドル(4,340億円)となる。

球状半導体の夢が復活

球状半導体ICは原理的には半導体ICの画期的な製造方法になる潜在能力があったが、残念ながらベンチャーの限界もあってその夢は途中で挫折した。時を経て同じサイズの球状半導体を太陽電池に応用しようとする企業(スフェリカルパワー)が日本に現れた。

カミオカに建設が進む大型重力波望遠鏡 

インシュタインの相対性理論で予想した重力波を検証するために、カミオカに世界最先端の研究施設(KAGURAと呼ばれる大型重力波望遠鏡)が建設中である。

文明の記録-ロゼッタプロジェクト

1996年に創設されたロングナウ財団(The Long Now Foundation)という財団の使命は地球上の言語で文明を記述するという壮大な計画である。骨子となるのはThe Rosetta Projectと呼ぶ言語データベースをロゼッタデイスクという媒体に収めるもの。

生体機能チップ(Organs-on-a-chip)

Lung-on-a-chipはマイクロリアクターを利用して血流と空気の流れを細胞膜で仕切った肺機能と血流をチップ化したもの。肺機能をシミュレートした上で血流と細胞膜の観察を行うことができる画期的なデバイスである。

ロボットに奪われる20の職種

20年以内にロボットに奪われる可能性が高いとみられる20の職種を選定し職種ごとのロボット化の確率を研究者が予想した。おおまかだが未来社会の姿を反映したものになっている。あなたの職種は大丈夫だろうか

不活性ガス封入の優越感

最近性能向上のため不活性ガスに封入するというテクノロジーが流行っている。例えば日産GTRのタイヤに窒素ガスを封入することが推奨されているし、ヘリウムを封入した高性能磁気デイスクも登場した。

ナノテクノロジー先駆者はローマ人

 金、銀などのナノ粒子は代表的なナノテクノロジーとして触媒材料を中心に広範囲に応用されているが、古代ローマ人が1,600年も前に使いこなしていたとしたらきっと驚くに違いない。

驚異の金ナノ粒子−球状核酸(SNA)

 金属ナノ粒子とは10nm=100オングストローム程度の直径の金属粒子のことである。様々な金属のなかでも金のナノ粒子は単純に微細な電子回路の配線や触媒に応用される他、最近は球状核酸(Spherical Nucleic Acid, SNA)という機能性のバイオナノ粒子が注目を浴びている。