HIVウイルスを駆逐する遺伝子工学的治療

24.03.2016

Photo: Journal of Young Investigators

 

テンプル大学の研究グループは人間のDNAからHIVウイルスを完全に駆逐できることを発表した。抗レトロウイルス薬がHIV治療に効果がある。しかし投与を止めた患者はHIV症状を再発する理由はHIVウイルスが免疫性を弱め、最後に免疫性が機能不全に陥ることでAIDSを発症させることが問題であった。

 

AIDS発症で死亡した患者は1980年代に発見されてから2500万人に上る。HIV感染からAIDS発症を防ごうとしても、HIVウイルスがヒトのCD4+ T細胞に取り込まれると、HIVウイルスを除くことが難しい。最近の治療は一度HIVウイルスに感染した細胞の免疫性を刺激して機能を復活させることを狙ったものだがこれまで成功していない。 

 

テンプル大研究グループはこれとは異なるアプローチをとった。T細胞中のHIVウイルスゲノムを遺伝子工学的手法に改変した。T細胞中のHIV-1ウイルスDNA中のRNAをマーカーとしてT細胞の核酸酵素でDNAを切断し、HIV-1DNAを遺伝子を取り除いて切断箇所を復元した。この遺伝子工学的手法でウイルスの複製を抑制し、患者の体内のウイルスを激減させることに成功した。

 

これまでの研究でHIV-1 DNAをヒト細胞から駆逐する技術を確開発していたが、新たに感染したCD4+ T細胞からHIVウイルスを完全に駆逐するとともに再発しないことを確認した。遺伝子工学的手法でウイルスの複製を抑制したことで患者の体内のウイルスを激減させることができた。

 

RNAをマーカーとした遺伝子解析のゲノム塩基配列手法を利用してHIV-1ウイルスを完全に駆逐された細胞は正常に成長する。新たに開発された遺伝子工学的治療法が広く利用できるようになれば、AIDSで死亡する患者数を大幅に減らすことも夢ではない。

 

 

Source: what-when-how

 

上のイラストは代表的なレトロウイルス(ヒトTリンパ好性ウイルス(HTLV)、HIV-1、HIV-2)のゲノム構成。

 

HIVウイルスを薬剤で駆逐しても生き残ったウイルスが自己複製すれば発症が再発する。遺伝子工学的手法によってHIVウイルスを再生できないように改変することで根絶することが可能となれば、治療が難しいとされてきたAIDS治療の道が開かれる。