携帯端末の電磁波出力リストをドイツが公表

11.02.2019

Photo: newsweek

 

ドイツの脱原発の決断は福島第一事故の影響だけではない。チェルノブイリ事故の影響でドイツ国内の土壌や牧草を汚染された苦い経験や、国内の河川の放射能汚染で、食品の放射能汚染を厳しく規制している。また世界で最も電磁波の健康被害に厳しいドイツの研究機関が、携帯電話のマイクロ波が脳に与える影響を警告していた。そのドイツが携帯端末の電解強度をメーカーとモデルごとに公表した。メーカーや機種に依存する携帯電話の電磁波の影響を最小限に抑えたい人にとっては、今回の公表は指針になるだろう。

 

ドイツ連邦放射線防護局(Bundesamtfür Strahlenschutz)には、新旧両方のスマートフォンを網羅したデータベースと、通話中に耳に当てたときに放射される電磁波の強度(電界強度)が記録されている。今回の公表リストで最低レベルの電磁波を発生させるスマートフォンはサムスンギャラクシーNote 8であった。Galaxyシリーズは iPhone対抗機種で高級機だが、Liイオンバッテリー発火事故を契機に、中国市場でも販売が低迷していた。意外なところで高評価となったが、吸収率は0.17W/kgである。中国系メーカーの強度は(機種によるが)、高強度ランキング上位の機種が多い(下図)。

 

 電界強度が高い端末ランキング

電界強度が弱い端末ランキング

 

一方、弱い機種ランキング(下図)トップ10の半分は韓国系企業で、サムスンの携帯電話は電磁波の漏れに関する安全性能が高い。一方、ライバルとなるアップルのiPhoneとは全く対照的でiPhone3機種は、放射線を出す携帯電話のリストに含まれている(下図)。

「安全な」レベルの電磁放射に関する一般的なガイドラインはできていないがWHOは、このほどWHOが「電磁波過敏症」(EMS)と「化学物質過敏症」(MCS)が「現代病」であることを認め、科学的根拠をまとめた資料を公開した。

 

暫定的に環境への負荷と人体への安全性に関するドイツの認証「Der Blaue Engel」(Blue Angel)は、1kgあたり0.60W未満の特定の吸収率を持つ電話のみを認証する。ここで取り上げた端末はすべてこのベンチマーク以下に収まるが、連続通話による脳の癌発生への影響が懸念される。これまで電離放射能の生物への影響(DNA切断)は、ある臨界値を超えなければ無視できるとされていたが、最近この考えに対立しているLNT説を支持する研究結果が報告されて、臨界値はなく電離放射線の強度に応じて生体損傷が起こる考え方が復活している。

 

原子炉の安全神話が崩れたように、LNT説が成り立てば電界強度の強い機種の長時間使用は脳細胞の癌発生確率を、使用時間に比例して増大させることになる。特に若年層への電磁波影響が懸念される。今後、WHOを中心として電磁波規制の動きが強まっている。

 

携帯端末の生体への影響は、微小なマイクロ波で水分子の運動が活発になり顔の発熱として観測される(下図)が、耳の近くの影響が大きく細胞損傷については系統的な研究が必要である。5Gへの移行で研究例のないミリ波電磁波が街中にあふれ、端末使用者が指向性の強いアンテナのビーム照射が集中する。研究例の少ない5Gについては、電界強度の規制が不可欠だろう。