超高温高圧化の水素の挙動が明らかに

02.01.2019

Credit: S. McWilliams

 

エジンバラ大学の研究チームはパルスレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルで、10~150 GPaの圧力および6000 Kまでの温度で水素の光学特性を調べた結果、 2400Kおよび141GPaでの透過スペクトルは、吸収性水素が半導体性または半金属性の性質で、対象となった圧力範囲では絶縁体-金属一次転移がみられない、すなわち金属水素が実現しない代わりに”Dark hydrogen”と呼ぶ半金属的な中間体が存在することが明らかになった(McWilliams et al., Phys. Rev. Lett. 116, 255501, 2018)。

 

この実験により、地球のそれより250万倍以上高い可能性がある木星や土星のような大気中の巨大惑星の内部での水素の挙動の理解が進むものと期待される。超高温高圧下で安定な状態を保つとする今回の結果は、水素が金属状態への中間体を含む相図をもつことを示唆している。

 

研究チームは、ダイヤモンドアンビルセルに水素とヘリウムを封入して、レーザー照射によって超高温高圧をつく、分光学的に水素の状態を調べた。ラマン分光法で、素とヘリウムが超高温高圧下で化学結合が形成されないことを発見した。圧力下でほとんどの物質は体積変化を伴う一次転移で金属化する。水素の金属化はこれまで大阪大学を始め多くの研究グループが挑戦してきた。2017年にハーバード大学チームが実験に成功したとされるが、水素の挙動の詳細は不明であった。

 

 

Credit: Phys. Rev. Lett.

 

上図に水素の光学的性質(141 GPaと2400(300)K)を示す。実験データは白丸、理論的予測は×、フィットは実線。 (a)1600~1700 K、101~159 GPaにおける半導体状態の吸収スペクトル。(b)Smith-Drudeによる伝導度スペクトル。(c)Smith-Drude後方散乱パラメータ(d)散乱時間。

 

研究チームはガスと金属の間のこれまで知られていなかった中間状態を発見した。「ダーク水素」(”Dark hydrogen”)と呼ぶこの中間状態は可視光を反射も透過もしないが、赤外線や熱を透過する奇妙な性質を持っている。この中間体は土星のようなガスの巨大惑星から熱が放出されるメカニズムが説明できる可能性がある。エネルギー依存の吸収がある点で、ダーク水素は幾分金属的ともいえる。

 

これは、それが地球の核の中の溶融鉄の運動が磁場を作り出しそして維持するのと同じように、ガスの巨人の惑星の核の中で金属水素が磁場を作り出すプロセスで重要な役割を果たす可能性がある。アッシュクロフトが金属水素がBCS理論の枠内での高温超伝導を示すとした論文(Ashcroft, Phys. Rev. Lett. 21,1748, 1968を発表してから50年を経て、同じ雑誌に半金属的な中間状態が発表されたことは興味深い。