いますぐ実行可能な人工光合成の実用化

13.02.2019

Image: Meenesh Singh

 

人工葉(注1)には大気中のCO2を取り込み、水を分解して水素を製造するものと、CO2を還元してCOなどの有機原材料や液体燃料の製造を目指すものに大別される。後者は大気中のCO2削減につながるが、純粋なCO2を使用するため、実用化(スケーリング)は難しかった。イリノイ大学の研究チームは人工葉を自然環境に持ち込む実用化の目処をつけたPrajapati and Singh, Sustainable Chemistry & Engineering online Feb. 5, 2019)。

 

(注1)人工光合成は、植物が太陽からのエネルギーを使って炭水化物を生産するために空気から水と二酸化炭素を使うプロセスの模倣で、光触媒もそのひとつだが米国では一般的に人工葉と呼ばれる。

 

研究チームが開発した人工葉は、空気から取り込んだCO2を、自然の光合成より10倍以上高効率で液体燃料に変換する実用化が可能である。これまで、実験室でテストされた人工葉はすべて加圧タンクの純粋なCO2を使用していた。自然環境での実用化には、希薄なCO2を用いる必要がある。つまり実用化には空気からCO2を集めて濃縮しなければならないことを意味する。

 

研究チームは、アンモニウム樹脂の半透膜のカプセルに水と人工葉を閉じ込めることでこの問題を解決した。この膜は、日光によって温められたときに内側からの水が蒸発する。水が膜を通過するとき、それは空気からCO2を選択的に取り込む。カプセル内の人工葉(人工光合成システム)は、CO2をCOに還元する触媒でコーティングした吸光剤で、太陽エネルギーを使って還元反応を行い、合成燃料の出発物質となるCOと酸素が生成される。

 

長さ1.7m、幅0.2mの360枚(500平方m)の人工葉は、一日あたり約0.5トンのCOを生産する。この人工葉は1日で100メートル以内に周囲の空気中のCO2レベルを10%減らすことができる。このシステムは入手可能な材料と技術を使用しているため製造が可能で、自然の光合成より1桁以上効率が良い。

 

ある。水素を貯蔵可能なエネルギー源とするか、CO2を取り込んで液体燃料の製造が選択できる人工光合成の実用化で、有り余る太陽エネルギーの利用もカーボンニュートラル燃料製造も可能になる時代が近い。化石燃料で地球環境を汚染してきた人類が、ようやく「自然エネルギー源」を手にいれる時、石油利権も原子力利権も価値を失い、エネルギー利権に基づいた世界秩序は大きく変わるだろう。