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Geopolitics/Economy

NYクリスマスツリーに託す思い
ニューヨークにあるロックフェラーセンターのクリスマスツリーの設置、飾り付け、点灯はアメリカの一大イベントであり、ニューヨークの象徴である。近年日本でも、その点灯式の風景を放送するようになり、日本でもアメリカのクリスマスを代表する行事として広く知られるようになった。

Dec. 25, 2019

トランプ大統領の弾劾訴追とアメリカ政治の行方 Part 1
米下院本会議で18日、トランプ大統領を巡り「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追決議案が可決された。民主党は2016年の大統領選の結果を容認できず、2017年1月20日の大統領就任式前からトランプ大統領を弾劾することを目指してきた。

Dec. 21, 2019

年金改革案で政治混乱に向かうフランス

フランス全土で5日に始まった政府の年金改革に対する反対デモは尚も続いている。17日には13日目を迎える反対デモは、政府の改革案撤回がない限り労働組合は大規模ストを続ける予定である。1995年に政府が年金改革を断念したような状況に持ち込む勢いをみせている。

Dec.18, 2019

金融緩和策を続けなければならない中央銀行
米国のFRB(連邦準備制度理事会)、欧州のECB(欧州中央銀行)、日銀、中国の中央銀行は2008年の世界金融危機以来、空前の規模で金融緩和政策を行ってきた。今では、各国の中央銀行は、さらなる緩和を求める市場の声に応え続けなければならない状況にまで追い込まれた。

Dec. 09, 2019

ドイツが直面する高放射性廃棄物の最終処分の問題
福島原発事故のあと、ドイツは2022年までに原子力発電所を全て閉鎖することを決めた。2011年から原子力発電所を段階的に閉鎖してきたが、現在稼働中の7つの原子力発電所が2022年までに閉鎖される。あと2年のタイムリミットが近づくにつれて、高放射性廃棄物の安全な保管場所を探すのが深刻な問題となっている。

Dec. 05, 2019

金融緩和政策が広げた富の格差

米国連邦準備制度理事会(FRB)が2008年11月に初めて量的金融緩和政策を実施してから11年。その間、金融緩和政策は株式や債券などあらゆる投資商品のバブルをつくりだした。FRBは「景気拡大が順調に続くように適切に行動していく」として今年は政策金利を3度引き下げ、9月から再び資金調達市場に流動性を注入した。 バランスシートは債券買い入れで11月30日時点には2,920億ドル拡大している。その結果、主要3株価指数は過去最高値の更新を続けている。

Dec. 01, 2019

トランプ大統領の異例の病院訪問に毒殺未遂の疑い
 米トランプ大統領は今月16日、突然ウォルター・リード米軍医療センター(国防省最大の総合医療施設)で検査を受けた。2月に受けた健康診断では優れた健康状態と診断されたばかりである。今回はシークレットサービスのプロトコールを破ってまでの異例の病院訪問であった。

Nov. 20, 2019

パリとフランスの黄色いベスト運動

1年前の11月17日に、フランス全土の2,000カ所で約29万人のフランス市民が燃料増税の廃止を求めて大規模な抗議デモを行った。この黄色いベスト運動はその後、反政府運動に発展、16~17日の週末には抗議運動が始まってから53週目を迎えた。

Nov. 18, 2019

アメリカの史上最高の「好景気」はウォール街だけ

米アトランタ連銀とニューヨーク連銀が15日に発表した米第4四半期の実質GDPの予想値は0.3%と0.39%である。前回8日のGDP予想であった1.0%と0.73%より下降修正されたのは、10月の鉱工業生産指数が大幅に落ち込んだためである。第1四半期から第3四半期、実質GDP は3.1%から2.0%、1.9%へと減少しているなか、株式市場だけが史上最高値をつけている。

Nov. 17, 2019

人口構造の変化が進むドイツ:大いなる交代

ドイツは深刻な少子化と高齢化、大規模な移民流入、年々増加しているドイツ人による他国への移住により、今後20年をかけて人口構造が大きく変化すると予想される。2040年には、ドイツの人口の35~40%は移民と移民のルーツをもつ人たちで占めると予想されている。

Nov. 11, 2019

ルーブル美術館で展示が見送られたサルバトール・ムンディ

イタリアの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年を記念して、パリのルーブル美術館でダ・ヴィンチの記念展が10月24日から始まった。ダ・ヴィンチの最後の作品で、世界で最も高価な絵画とされるサルバトール・ムンディの展示が話題となっていたが、その展示は実現されなかった。

Nov. 3, 2019

マイクロチップ埋め込みが義務付けとなる日

今年2022年までに犬・猫にマイクロチップの埋め込みを義務化する法案が日本で成立した。人間に対してもこのような動きが進められている。ID2020プロジェクトによって世界の77億人全てにRFIDマイクロチップが埋め込まれる社会の実現化が進んでいる。

Oct, 31, 2019

ユーラシア版国際決済システムの構築への動き

世界で金融機関同士が使用する国際決済の通信システムSWIFT(国際銀行間通信協会)は世界200カ国以上、金融機関11,000 社以上が利用している。このドル中心の国際決済とは別に、ロシアの独自の送金ネットワークSPFSと中国が開発した人民元のCIPS決済システムに加えインドが開発中の独自システムを共有できる「ユーラシア」版国際決済システムの構築が進んでいる。

Oct. 30, 2019

米短期金融市場での流動性問題が深刻化
米連邦準備理事会(FRB)は、本日10月24日から短期金融市場における翌日物レポ取引で毎日1200億ドルに加え450億ドルの一定期間の短期レポであるタームレポ(10月24日と29日)の資金供給を実施することを、23日に突然発表した。レポ市場の混乱は収まるどころか、市場への資金供給は大幅に拡大、より大規模な市場調節に発展している。

Oct. 24, 2019

世界の中央銀行が検討している独自のデジタル通貨

8月に開催された世界の中央銀行の年次経済シンポジュウムで、イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は、世界金融システムにおいて、1994年のブレントウッズ合意以来の大規模な変革の必要性を提唱した。米ドルが世界の基軸通貨であり続けてはならないと述べ、特定の一国の通貨ではなく、代わりに複数の政府発行のデジタル通貨の基準バスケット方式の採用を提案したのである。

Oct. 21, 2019

EUの最重要指名手配犯の21人のうち18人が女性

重大な国際犯罪に対処する国際機関の欧州刑事警察機構(European Law Enforcement Cooperation: Europol)によると、各EU諸国の最重要指名手配犯の21人のうち18人は女性であることを公表、もはや重大犯罪には男性が多いとするこれまでの犯罪研究を覆すこととなった。

Oct. 20, 2019

世界で最も不動産バブル崩壊のリスクが高い7都市
スイスのUBSが毎年発表する「不動産バブル指数」の2019年版によると、世界で最もバブル指数が高かった都市はミュンヘンであった。バンクーバー(カナダ)と香港(中国)に加えて、2019年に新たにバブル崩壊「危険数位」にある都市に加わったのがトロント(カナダ)、フランクフルト(ドイツ)、アムステルダム(オランダ)とパリ(フランス)である。EU諸国のほとんどの都市で低金利と富裕層の拡大に伴う需要による不動産価格の上昇が見られる。

Oct. 18, 2019

2020年米大統領選にヒラリー・クリントンの出馬はあるのか
ヒラリー・クリントンが2020年米大統領選に出馬する可能性が高まっている。テレビ出演、ブックツアー、公演などまさに、民主党候補として選挙活動を開始したように積極的に活動している。最近では、クリントン氏は現在の17人の民主党候補者を全員支持しないと宣言したうえ、トランプ氏との再挑戦の可能性を示唆した。

Oct. 15, 2019

常設レポ・ファシリティーの設置とQE再開の可能性

ニューヨーク連銀は10月10までの「翌日物レポ取引」と14日間レポの資金供給を11月4日まで延期することを10月4日に発表した。レポ市場での流動性の問題が長期化するとなれば、これまでの短期的な対応から常設レポ・ファシリティーの設置とバランスシート拡大の再開といった長期的的な対応手段を実施する可能性が高い。

Oct. 5, 2019

FRBのバランスシートが再び拡大

FRBのバランスシートは2008年の金融危機への対応のため、量的金融緩和をQE1~3と3度まで拡大した。その結果、1兆ドル弱であったFRBの保有資産はQEの終了時には約4.5兆ドルにまで膨れ上がった。その後、量的引き締め(QT)で縮小したバランスシートは再び拡大している。

Oct. 4, 2019

米レポ市場の混乱で見えてくる金融システムの脆弱性

米短期資金調達市場のレポ市場で9月16日に金利が急騰、レポ金利がフェデラルファンド(FF)金利をFRBの誘導目標水準内に収まるように資金供給を行った。レポ市場での混乱は収まらず、さらに17日から27日の9日連続に資金供給、2008年の金融危機以降で初めての大規模な市場調整を実施した。

Oct. 1, 2019

ロバート・ F・ケネディ暗殺の真相 Part 1
9月11日に、セェィン・ユージン・セザールという名前の男性がフィリピンで死亡した。名前を知る人は多くはないが、ロバート・ケネディ暗殺を巡る研究者の間では広く知られている名前である。セザールの死亡をもって、息子であるロバート・F・ケネディJr. はSNSのインスタグラムで、セザールが父の実の暗殺者であることを示唆した。

Sep. 15, 2019

9.11 から18年後の真実 ~ 国際チームが科学的手法で明らかにしたWTC 7ビルの崩壊

9.11同時多発テロ事件から18年が経過した。この間に崩壊したワールドトレードセンター、第7ビル(WTC 7)の崩壊原因に関しての政府公式調査報告書と異なる学術論文が発表されている。今月9.11事件の18年記念日前に、公式発表の見解を否定する内容の学術論文が国際調査チームにより発表された。

Sep. 11, 2019

米債務残高は対GDP比で1,832%とする最新レポート

米投資顧問会社のAB Bernsteinが8日に発表したレポートがウオール街の金融専門家の間で注目を集めている。レポートは債務危機が必ずおきるとは限らないと前置きしたうえで、米債務残高は対GDP比で109.45%ではなく1,832%であると指摘した。

Sep. 10, 2019

世界の債務残高の深刻な拡大基調

世界全体の政府、家計や金融機関を含む事業会社部門の債務残高が、2019年3月末に対世界GDP比の320%に当たる246.5兆ドル(約2京6129兆円)に達したことを、国際金融協会(IIF)が発表している。世界金融危機前の2007年末に110兆ドルであった世界債務残高は124%も増え、危険的なレベルの拡大が続いている。

Sep. 05, 2019

5Gが破壊的イノベーションにならない理由

Sub-6Gと呼ぶ6GHz以下の領域の擬似的5Gを5Gとして、詐欺的商法を行うキャリアがある。例えばATTはLTE-Advancedを5Gサービスとしているが、LTE-Advancedは4Gに区分されるべきものである。国内では各社が5Gへの積極的な取り組みをみせているが、各社の5Gネットワーク構築へのロードマップは不透明で、要するに技術課題が多すぎて長期計画が立てられない状況の中で、5Gネットワークが独り歩きしていることに危惧を覚える。

Mar. 03, 2019

世界共通の普遍的道徳規範とは

オックスフォード大学の人類学研究グループは、普遍的道徳理論を世界60カ国で検証した結果、7つの普遍的な道徳的ルールを発見した。尊重されるべきその7つの道徳規範とは、①家族を助けること、②所属しているグループを助けること、③他人に恩恵を与えること、④勇敢であること、⑤上司に敬意を表すこと、⑥公平に資源を分かち合うこと、そして⑦他人の財産を尊重することである。これらは世界中の60カ国の文化を調査した結果、普遍的であることがわかった(Currry et al., Current Anthropology Feb. 08, 2019)。

Feb. 25, 2019

米国の子供たちの63%以上が資産貧困

オレゴン州立大学の研究チームの調査研究で、米国の子供たちの63%以上とアメリカ人の55%が資産貧困に悩んでいる事実が明らかになった。過半数のアメリカ人は、失業、医療危機、連邦政府閉鎖など、経済的緊急事態に頼るべき資産をほとんど有しない現実が明らかになった。(Rothwell et al., Children and Youth Service Review 96, 409, 2019)。

Feb. 22, 2019

相次ぐ大手自動車メーカーの国外工場撤退

ホンダは英南部スウィンドン工場での完成車生産を2021年中に終了することで従業員3500名の雇用がなくなることが波紋を呼んで外交問題に発展している。ホンダは同時にトルコでも生産を終了し、欧州生産から撤退するが、国外工場撤退はホンダだけではない。フォードは、南アメリカ(ブラジル)の大型トラック事業から撤退し、2,800人の雇用が失われる。

Feb. 20, 2019

BPエネルギー経済予想2019~不確実性の時代

炭素排出を大義名分として、欧州諸国で急速な脱化石燃料政策の動きが活発化しているなかで、化石燃料企業の代表格といえるBPのエネルギー予測2019年版が公開された。低炭素未来への迅速な移行の必要性を認めつつ、増大するエネルギー需要との板挟みによって、2040年までの世界のエネルギー市場の不確実性を強調したBPエネルギー予測は、世界が直面している相反する要求の両立というジレンマを浮き彫りにした。

Feb. 18, 2019

米国を根底から揺るがす不法移民

ギャラップ社がラテンアメリカとカリブ諸国を含む33カ国を対象に、他国への移住に関して行った世論調査によると、移住先として最も希望が高かったのが米国であった。今後、中南米諸国の経済や治安の悪化や国家破綻の危機で、米国を目指す不法移民の増加は避けられない状況にある。

Feb. 14, 2019

H-1Bビザ制度改正の狙いは高度人材の囲い込み

最近日本でも話題になっている外国人労働者の受け入れで、政府が特に積極的に受け入れているのが、「高度人材」と呼ばれる優秀な外国人である。その名の通り、高度人材は高い技術を持ち、専門性の高い職種に就いている外国人を指すのだが、お手本となるのが米国の外国人技術労働者に広く使用されているH-1Bである。この特殊な技能労働者受け入れのビザ制度に関するトランプ政権は資格の見直しを行い、米国の大学を卒業した学位を持つ人々に高い優先度を与えた。

Feb. 11, 2019

米民主党のグリーンニューディール法案が実行不可能な理由

民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員と上院議員のエド・マーキー上院議員は7日、10年以内に気候変動を逆転させ、すべての米国の炭素排出をゼロにする計画「グリーンニューディール法案」を発表した。既に、共和党だけでなく、産業界、民主党内からも実現不可能な無謀な計画として強い反対が上がっている。

Feb. 10, 2019

回復不能なアフリカ系アメリカ人の貧困

2009年の金融危機は、全てのアメリカ人にとって深刻な大恐慌以来最悪の事態だったが、最も経済的に脆弱なセグメントであるアフリカ系アメリカ人にとって最も厳しいものであった。大不況の影響から10年経った現在でも、黒人の経済はまだ完全に回復しておらず、不安定な財政状態にあることが明らかになる。

Feb. 07, 2019

ファーウエイリスクを米国が欧州に警告

欧州各国は高速接続と膨大なデータ容量でIoTインフラに不可欠な5Gネットワーク整備を加速している。米国は5Gモバイルネットワーク構築を技術支援している中国の通信大手ファーウエイがセキュリティ上のリスクが欧州全土に広がる恐れがあるとして採用しないよう警告した。

Feb. 06, 2019

ファーウエイを巡る欧州通信会社のジレンマ

欧州の電気通信大手は次世代5Gモバイルネットワークの整備にファーウエイ採用で迅速に進めるか、安全保障を優先に同社を計画から除外するかのジレンマに立たされている。遅延のない高速通信と膨大なデータ容量5Gネットワークはデジタル革命における革新であり、IoTで未来社会に大きなインパクトを持つとして、基地局テクノロジーも衛星ビジネスも民間企業主導で進められてきた。

Feb. 05, 2019

黄色いベスト運動に治安部隊投入で増える負傷者

 フランスの「黄色いベスト」運動は週末12週目を迎えた。一部の抗議者の暴動化を除くと、フランス全土の抗議活動はほとんどが非暴力的である。今回の抗議活動の中では、警察による暴力で負傷する抗議者が増加していることへの非難の声が上がった。昨年の11月17日以来、負傷を負った人は1,900人、うち重傷者は98人で失明に至ったケースは17人である。抗議デモとしては稀にない負傷者の数である。

Feb. 04, 2019

FRB利上げ中止の背景にゾンビ企業米連邦準備制度李議会(FRB)は30日、これまで続けてきた段階的な主要政策金利の引き上げを停止、年2.25~2.50%に据え置くことを決めた。貿易摩擦、政府機関閉鎖の影響や中国経済の減速による米国経済並びに世界経済の不透明感が増している情勢を主な理由とした。だが、米株式・経済に与える金利の上昇による最大なリスクが「ゾンビ企業」の増加とそれらの企業の倒産である。

Feb. 02, 2019

スマートフォン史上最悪となった2018年

翳りのみえたスマートフォン市場という記事をすでにかいているが、それを裏付けるかのように、DCによると2018年に世界の携帯電話の販売台数が4.18%減少し、通年で合計14億台が出荷された。世界のスマートフォンの売上は2018年に史上最悪の減少を記録したが、2019年の見通しもそれほど良くはない。

Feb. 01, 2019

選択的移住による都市成長で増大する地域格差

農村を離れ都会に移る人は、平均して、教育水準が高く、認知能力が高い。スウェーデンのリンシェーピング大学の研究チームはその「選択的移住」が、都市部と農村部の経済格差と不均一な地域経済を生み出すことを明らかにした。選択的移住はまた周辺地域の犠牲のもとで、都市を成長させて経済的繁栄の都市と農村の格差を拡大している。

Jan. 31, 2019

2038年までに石炭火力全廃へ動きだしたドイツ

ドイツ政府の石炭火力の廃止予定を検討する専門家パネルは、2038年までに石炭燃料を全廃することに合意した。ドイツが2038年までに石炭火力発電全廃に合意したことで、パリ議定書の気候変動目標に向けて努力する欧州各国の政策に大きな影響が予想される。

Jan. 28, 2019

OECDのデジタル課税方針のアウトライン

OECDは、デジタル化のために各国が直面する税務上の課題およびこれらの課題に対処するための潜在的な選択肢に関するG20財務大臣向けの中間報告の概要を発表した。OECDはG20閣僚を通じて各国に働きかけているが、欧州議会で否決された情報保護法案の見直しを巡って足並みが揃わないドイツとフランスの対立でEUの亀裂を広げることとなった。

Jan. 26, 2019

東芝、日立の英原発撤退で風力に好機

日本の原子力産業を支えてきた東芝と日立は、英国の原子力発電プロジェクトから撤退したため、英国はエネルギー政策の見直しを余儀なくされた。原子力プロジェクトを中止しても、太陽光と風力で2030年までの炭素排出目標を達成することは可能であるのに、英国政府は天然ガス火力発電所を優遇する政策をとっている。

Jan. 25, 2019

世界の経済格差2019年版統計で明らかになる「富の移動」

国際NGOのオックスファム(Oxfam)による世界の経済格差問題に関する2019年レポート(Public Good or Private Wealth:公共の利益か、個人の富か)が発表された。最新のレポートでは、世界の大富豪トップ26人が、世界人口のうち経済的貧困に当たる半数、約38億人の総資産と同額の富を所有している。2016年に最初に発表されたレポート以降、毎年経済格差は拡大している。

Jan. 23, 2019

著作権保護法を巡って分裂するEU諸国

米国IT企業GAFAに対抗するとして、EUが目指していた著作権法の見直しは、EU諸国間の結束を高めることにはならず、逆にEU諸国間の溝を深め、著作権法改定の動きが遅れる可能性が高くなった。このため欧州議会、欧州理事会および欧州委員会は予定していた法案の草案に合意する会合をキャンセルした。

Jan. 22, 2019

親と同居するミレニアル世代が社会に与える影響

ラフボロ大学の調査によれば現代の20歳から29歳までの独身成人の63%が両親と同居し、25歳から29歳まででも半数を超える。親離れし無い世代の増加で、生活費用の分担を巡って、生活水準の維持に関わる経済的な問題が生じている。米国でも同様の統計があり、OECDも2015年に調査報告をまとめている。

Jan. 21, 2019

NASAが月面探査で中国に歩み寄る理由

NASAは中国への技術移転防止を目的とした法的枠組みの中で、中国の宇宙機関と月の探査について情報共有をはかり協力関係にあることを認めた。NASAはアメリカの衛星からの情報を中国と共有していること、および中国が探査機が着陸した地点の情報を伝えた。

Jan. 20, 2019

グローバルな問題解決は地方自治体から

国境を無視したグローバリズムが引き起こす様々な問題が顕著になり、反グローバリズムの動きが各国で活発化している。エクセター大学の研究チームは問題解決の主体を国家に求めるのでなく、対極にある地方自治に託す考え方がある。研究チームは住民の地域に対する愛情が、地球規模の環境問題に取り組むために利用されるかもしれないと主張する(Devine-Wright et al., Transactions of the British Geographers online Dec. 24, 2018)

Jan. 18, 2019

リスボン条約第50条発動を巡る英国の苦悩

第50条で定められる離脱開始日は、3月29日の予定で、それ以上の延長はないEU参加国としての最終期限だが、火曜日に議会で離脱案が否決されたため、離脱の実施に暗雲が立ち込めている。合意なき離脱を懸念する経済界に対して、フィリップ・ハモンド首相は全保守党盟主ニック・ボレス氏の合意なき離脱の排除と第50条発動の9ヶ月延期する動きを阻止するつもりはないと伝えた。

Jan. 17, 2019

ベーシックインカムの厳しい現実

2018年は「ベーシックインカム」制度(統一最低所得又は基礎所得保証)を巡る議論が注目を集めた年であった。しかし、2017年からフィンランドとカナダで制度を実験的に実施してきた2つのプログラムは実施予定期間より早く終了した。ベーシックインカム制度導入による影響や効果の結果を出さないまま両政府は実験の継続を打ち切ったのである。

Jan. 16, 2019

ビッグデータの悪用がもたらす人権侵害

インターネットによって情報の水平拡散が容易になった反面、個人情報流出や悪意を持った情報拡散は人権侵害リスクとなっていることも事実である。所有権が明確でないビッグデータは、人工知能および顔認識ソフトウェアと組み合わされて、監視社会の強力なツールとなって、個人生活に侵入して人権侵害を引き起こす危険性が脅威となりつつある。

Jan. 15, 2019

直接民主制を要求する黄色いベスト運動

フランスの黄色いベスト運動は当初の燃料税の引き上げ反対抗議運動から、反政府(マクロン大統領の辞任)、反グローバリズム、ロスチャイルド金融システムの崩壊やエリート支配階級への国民の不満と不信を呼びかける民主化運動となってきた。黄色いベスト運動による反政府デモは止まらず、12月末にはマクロン政権に新たな要望を突きつけた。それは政治的決定に国民が参加するスイス型の直接民主制の導入である。

Jan. 10, 2019

2022年からフォード車の標準装備になるコネクテッドカー

コネクテッドカーとはIoTのひとつでインターネットに常時接続されているシステムの総称である。総務省によればそのサービスは、①緊急通報システム、②テレマテイクス保険、③盗難車両追跡システムなどがある。コネクテッドカー技術を2022年度から標準搭載するのは、5Gインンフラ整備のタイミングに合わせたもので、コネクテッドカー技術にクアルコムの提案を採用した背景には、ファーウエイとクアルコムの5G覇権争いを米国主導で有利に展開したいトランプ政権の思惑がある。

Jan. 09, 2018

止まらない世界債務の上昇基調

IMFの最新データによると、先進国,新興国と低所得発展途上国190カ国の政府部門、家計部門、企業部門を含む「世界債務残高」は2017年末に名目で過去最高の184兆ドルに達した。これは世界債務残高対世界GDP比率でも最大の225%となる。

Jan. 06, 2018

英国の「合意なきEU離脱」でアイルランドが補償要求

英国が合意なしでEUから離脱する可能性が高まるなか、その影響が英国を直撃するリスクが懸念されている。昨年6月に英国内の10万人以上の雇用を支えるエアバス社が「合意なき離脱」(ノーデイール)の場合、英国から投資を引き上げると警告しているmなかで、今度は「合意なき離脱」北アイルランドの国境問題が解決できないとして、アイルランドはEUに数億ユーロの経済援助を要求すると警告した。

Jan. 04, 2018

IT巨大企業を攻撃するソロスの意図

ジョージ・ソロスは2018年1月のダボス会議で、権威主義者が民主主義を破壊する独占権を握っているとして、自らが投資しているFacebookやGoogleなどのIT巨大企業に対する攻撃を開始した。現在、ソロスの最大の関心事はインターネット広告収入の半分を支配しているシリコンバレーのIT巨大企業への規制強化である。

Jan. 04, 2019

デジタル税に動くオーストリア

欧州委員会は2018321日、デジタル事業活動がEU内で公正かつ成長を損ねない形で課税されるように、①IT企業の利益が登録され課税されるようにする法人税規則の改正、②現在EUで免税されているIT企業への暫定税、を提案した。これを受けてフランスは「GAFA税」を201911日から徴収する。オーストリアはフランスに続いて1月初めに基本的枠組みを発表、2020年に政府が計画した税制改革の一環として、税が施行される。

Dec. 30, 2018

半数が帰還する移民の実態

今日の世界的な移民の増加で、移民先の国のインフラと財政負担が増え様々な社会問題を生みつつあるが、移民の流れに関する正確なデータはつかめていなかった。ワシントン大学の研究チームはベイズ推定で世界の移民の流れを分析し正味の移住率を推定した結果、これまでの推定と対象的に、移住先の定住率は意外と低く、1990年以降、半数近くが(住みにくいはずの)母国に帰還していることがわかった(Azose and Rafarery, PNAS online Oct. 31, 2018)。

Dec. 26, 2018

Facebook問題の経緯と最新情報

世界最大のSNSであるFacebookは、相次ぐ情報漏洩で個人情報とデータ保護に対する脆弱性に利用者の不満の高まっている。ニューヨーク・タイムズの報道によると、150のパートナー企業が、Facebookユーザーからの個人情報や、個人のメッセージを含む友人の個人データにアクセスしている事実が発覚した。Facebookと他のサービスとのデータ共有をユーザーに周知しなかった責任が問われるなかで、ガバナンス強化を求める声が高まり、個人情報保護のための法規制の動きもでてきた。

Dec. 21, 2018

米国安全保障の脅威となる中国とロシアの動き

 米国の同盟国であるイスラエルは、米国海軍と共同で長年にわたり軍事演習を行ってきた。その際の拠点で定期的に米軍艦船が寄港していた、イスラエル第2のハイファ港が2021年から中国企業の運営下に置かれる。ロシアはフロリダ州のフロリダキーズからわずか1,350マイル離れたカリブ海の島に超音速戦略爆撃機の Tu-160を南米で初めて配備する計画をベネズエラ政府と合意した。この2つの動きによって、米国は安全保障面で軍事戦略の見直しに追い込まれている。

Dec. 19, 2018

動き出した世界的なデジタル課税の潮流

カリフォルニア州規制当局は、携帯電話でのテキストメッセージの料金を請求する計画を放棄した。一方、フランス政府は、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの名にちなんで名付けられたいわゆる「GAFA税」による欧州の巨大事業に課税を決定した。ふたつの新しいデジタル課税立法の明暗が分かれたが、将来、情報サービス利用そのものが、課税対象となる可能性が否定されたわけではない。

Dec. 18, 2018

米中貿易戦争の中心となった深セン市の光と影

中国南部の深セン市は、40年前から中国が展開している近代化政策「改革開放政策」でファーウエイ、ZTEなど中国勢大手のほか、アップル製造代行の鴻海精密工業やサムスンなど、国内外の大手ハイテク企業が拠点を集中した。上海についで中国第3の都市に登りつめた深セン市は中国経済成長のお手本とされる一方、最近は環境問題が浮上し、「中国製造2015年」を巡り米国との貿易戦争が勃発するなど影の部分が表面化した。

Dec. 17, 2018

Science/Technology

ペルーのマチュピチュより古い遺跡の発見
ユネスコの世界遺産で15世紀インカ帝国最大の遺跡と呼ばれているペルーのマチュピチュ。この「天空の都市」はアンデス山脈に属するウルバンバ谷に沿った山、標高2,430mに位置する。アメリカの探検家により発見されて98年が経つが、このマチュピチュより古く、標高約4,000mに位置する古代の集落の遺跡が11月に発見された。

Dec. 02, 2019

生物を模倣したエネルギー変換触媒

パシフィックノースウェスト国立研究所の研究チームは、自然の触媒 - 酵素を模したバイオミメテイクスを使用して、可逆的合成触媒を設計した。研究チームは、モデルとして天然の金属酵素を使用して可逆的水素反応(酸化・還元)触媒を提案し。、エネルギー損失を最小限に抑えながら高速で順方向および逆方向の反応を仲介する、エネルギー効率の高い電極触媒を設計した(Dutta et al., Nature Reviews Chemistry, 2, 244, 2019)。

Mar. 05, 2019

採算性をクリアした水素エネルギー製造コスト

水素経済や水素エネルギーという新技術へのアレルギーが強い日本では、採算性を根拠に実用化はあり得ないとする短絡的な記事が目立つ。しかしNIMS、東京大学、広島大学の共同研究チームが、太陽光発電と二次電池を組み合わせた水素製造システムの経済性を評価した結果、水素製造システムが世界規模で競争力のあるコストで水素を製造するレベルに到達し再生可能エネルギーを水素転換し貯蔵すれば、ベース電源とすることができることが明らかになった。(Kikuchi et al., Int. J. of Hydrogen Energy 44, 1451, 2019)。

Mar. 01, 2019

石炭火力は大気汚染のホットスポット

ドイツが2038年までにドイツの電力の40%近くを供給している石炭火力発電全廃、英国も2025年までに石炭燃料を完全に廃止予定である。世界中に広がる脱石炭火力の動きの背景には脱炭素以外の要因があることがわかった。ETHチューリッヒの研究で、石炭火力発電所は炭素排出以上に、有害物質を大気中に拡散するホットスポットとなっている実態が明らかになった。

Feb. 21, 2019

励起子ポラリトン発光の新展開~カイラル表面励起子

ラトガーズ大学の研究チームは、粒子と反粒子が互いに結合し、固体の表面上で互いに回転する励起子ポラリトンが、トポロジカル絶縁体でその回転を制御できる「カイラル表面励起子」となることを発見した。「カイラル表面励起子」は円偏光の回転方向が制御できる発光デバイス、太陽電池、レーザー、電子ディスプレイに応用できる可能性が注目されている(Peng et al., PNAS 113, 6845, 2016

Feb. 19, 2019

いますぐ実行可能な人工光合成の実用化

人工葉の目的は大気中のCO2を取り込み、水を分解して水素を製造するものと、CO2を還元してCOなどの有機原材料や液体燃料の製造を目指すものに大別される。後者は大気中のCO2削減につながるが、純粋なCO2を使用するため、実用化(スケーリング)は難しかったが、イリノイ大学の研究チームは人工葉を自然環境に持ち込む実用化の目処をつけたPrajapati and Singh, Sustainable Chemistry & Engineering online Feb. 5, 2019。

Feb. 13, 2019

WHOがスマートフォンとオーデイオ機器の健康被害を警告

WHOはスマートフォンやオーディオ機器の過剰使用で、10億人以上の若者が聴覚障害を起こす危険性があるとして新しい安全基準を提案し、電磁波健康被害リスクを警告した。聴覚を保護するために、WHOと国際電気通信連合はオーディオ機器の製造と使用に関する拘束力のない国際規格を発表した。WHOは先に電磁波による健康被害を認めており、スマートフォンやWiFi機器についても過剰使用を警告している

Feb. 13, 2019

携帯端末の電磁波出力リストをドイツが公表

イツの脱原発の決断は福島第一事故の影響だけではない。チェルノブイリ事故の影響でドイツ国内の土壌や牧草を汚染された苦い経験や、国内の河川の放射能汚染で、食品の放射能汚染を厳しく規制している。また世界で最も電磁波の健康被害に厳しいドイツの研究機関が、携帯電話のマイクロ波が脳に与える影響を警告していた。そのドイツが携帯端末の電解強度をメーカーとモデルごとに公表した。メーカーや機種に依存する携帯電話の電磁波の影響を最小限に抑えたい人にとっては、今回の公表は参考になるだろう。

Feb. 11, 2019

南大西洋で弱まる地球磁場

地球磁場の北磁極移動が加速しているなかで、もうひとつ注意しなければならない地球磁場の異常が、チリからジンバブエまで広がる広大な「南大西洋異常」である。この地域では、磁場が非常に弱いためヴァンアレン帯が地球に接近し宇宙線シールドが弱く、この地域での高い宇宙放射線が衛星の電子機器を破壊する恐れがある。地磁気異常の解明は磁極の弱体化と磁極逆転についての理解につながると考えられている。

Feb. 08, 2019

速する地磁気の磁極シフト

厳密な真北は移動している。過去の地球の歴史には磁極が入れ替わる磁極逆転現象も起きている。磁極は常に移動しており、ふらふら移動したのちに戻ってくる”Polar Wandering”現象が起きている。しかし地球の北磁極はここ数十年で非常に速く移動したため、磁石の方位に誤差が生じている。そのためNOAAの磁極点の更新が予定よりおよそ1年早く行われた(Witze, Nature 565, 143, 2019)。

Feb. 06, 2019

5Gのインパクトへの警鐘

5Gについての大多数の人々の理解は、遅延が少ない高速情報通信速度で可能になる外出先の高精度動画コンテンツの再生やIoTによる産業構造の変革など、明るい未来テクノロジーだろう。しかし実際には指向性が高い周波数帯の使用で基地局整備は一変する。電波の到達距離が短いため都市部では、すべての通りに沿って5Gのセルタワーが乱立することになる。ここまではよく知られていることだが、長距離通信に、何千もの新しい通信衛星から地球にミリメートル波が照射されることは以外と知られていない。

Feb. 03, 2019

重力音波解析で絞り込まれたMH370の衝突地点

2014年3月に南インド洋に墜落したと考えられているマレーシア航空のフライトMH370探索が進展をみせている。水中音波解析で航空機が海面に衝突した可能性がある2箇所と新たな飛行ルートを特定することができた(U. Kadri, Scientific Reports online Jan. 29, 2019)。

Jan. 30, 2019

気象予報技術の進歩

ペンシルベニア州立大学とマサチューセッツ工科大学の地球科学研究チームは、天気予報技術の進歩を解説し、予測の正確さが改良されていることをハリケーン予報で実証した。論文は気象予測技術がどのようにして実現したかを説明した上で、将来実現可能な技術を展望した。(Alley et al., Science online Jan. 25, 2019)。

Jan. 28, 2019

次世代パワーエレクトロニクスの新材料

エレクトロニクス市場の成長は、産業の自動化とデジタル化の普及にかかっている。そのためには電子回路がより高いエネルギー効率で電力消費量を下げることが不可欠の条件である。欧州最大の応用物理研究所であるフラウンホーファー応用固体物理研究所の研究チームは、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)がこの目的に最適の次世代パワーエレクトロニクス材料であると考えて開発研究に取り組んでいる 。

Jan. 22, 2019

ほぼ室温超伝導を示すランタン水素化物

硫化水素(H2S)は200GPaの超高圧下で150Kの高温超伝導を示し、他の水素化物(PH3)も200GPaで100K台の転移温度が観測されて以来、高圧化の水素化物がBCS的な高温超伝導を示すことが明らかになった。ジョージワシントン大学の研究チームは、La水素化物の輸送物性を測定し、高圧下(200GPa以下)で室温に近い臨界温度(260K)のBCS超伝導を観測した(Somayazulu et al., Phys. Rev. Lett. 122, 027001, 2019)。

Jan. 16, 2019

有機エレクトロニクスの効率が倍増

スウェーデンのカルマース工科大学の研究者チームは、有機エレクトロニクスの効率を2倍にする高分子のダブルドーピング技術を開発した。 OLED(有機発光ダイオード)、このダブルドープ高分子によって有機系太陽電池およびバイオエレクトロニクスが、効率が倍増する。

Jan. 15, 2019

3Dプリンテイングが100倍高速に

ミシガン大学の研究チームは、プラスチック層を1層ずつ積み重ねるのではなく、複雑な形状を従来の3次元印刷プロセスの最大100倍の速さで、大量の液体から製造する技術を開発した(de Beer et al., Science Advances 5,eaau8723, 2019)

Jan. 14, 2019

再生可能エネルギーがメインストリームとなる時代

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査報告書は再生可能エネルギー源の急速な成長と化石燃料の消滅は、世界の政治に大きな変化を引き起こし、世界的な権力配分、国家間の関係、紛争のリスク、および地政学的不安定の社会的、経済的、環境的要因となっていることを明らかにした。

Jan. 13, 2019

大強度短パルスレーザーによる雷の制御

リヨン大学の研究者チームは世界で初めて、雷雲に高出力パルスレーザーを照射して人為的に放電を起こすことに成功した。研究チームはニューメキシコ州の山頂上で、フェムト秒レーザーパルスを使って避雷針の役目を持つプラズマフィラメントを作ろうとした。フィラメントの寿命が短すぎるため、落雷は発生しなかったが、レーザーパルスで雷雲自体に放電が起きた。

Jan. 11, 2019

小氷期による冷却が続く太平洋深海

ウッズホール海洋研究所とハーバード大学の研究チームは、小氷期による深海の寒冷化を見出した。(Gebbie et al., Science 363, 70, 2019)。19世紀末のHMSチャレンジャーの観測地と20世紀末の観測データを海洋循環モデルと組み合わせると、太平洋深海は小氷期の影響で冷却されており、1750年以来の地球全体の熱収支は25%下方修正されることがわかった。

Jan. 10, 2019

AIで地震の理解は進むのか~仮想地震学

リングオブファイヤーを形成する太平洋沿岸の火山地域地震と火山活動が活発化している。カルテックの地震研究チームはAIを使って、複雑な地震波を識別し、強度、速度、方向をリアルタイム評価を目指しているが、ほかにもスタンフォード大、Google-ハーバード大、MIT、ロスアラモス国立研究所でAIの地震警報システム開発が活発化している。

Jan. 07, 2018

光合成の効率化で農作物の収穫量を倍増

植物は光合成によって太陽光をエネルギーに変換する。しかし、地球上のほとんどの作物は非効率な光合成を補うために、光呼吸と呼ばれるエネルギーのかかるプロセスをつくりだしたが、これもまたエネルギー効率が低い。イリノイ大学の研究チームは、光呼吸プロセスの改良で農作物の収穫量は40パーセント生産性が高くすることができることを明らかにした(Eisenhut et al., Science 363, 32, 2019)。

Jan. 04, 2019

超高温高圧化の水素の挙動が明らかに

エジンバラ大学の研究チームはパルスレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセルで、10~150 GPaの圧力および6000 Kまでの温度で水素の光学特性を調べた結果、 2400Kおよび141GPaでの透過スペクトルは、吸収性水素が半導体性または半金属性の性質で、対象となった圧力範囲では絶縁体-金属一次転移がみられない、すなわち金属水素が実現しない代わりに”Dark hydrogen”と呼ぶ半金属的な中間体が存在することが明らかになった(McWilliams et al., Phys. Rev. Lett. 116, 255501, 2018)

Jan. 01, 2019

ハイブリッドキュービットによる高速量子計算機

スピンキュービットを基盤とした量子計算機は、通常の計算機では解決できない難しい数学的問題解決に威力を発揮すると期待されている。理研の研究チームは2つの異なる種類の量子ビットから作られたハイブリッドデバイスから構成されるアーキテクチャを開発した。これによって課題であった高速な初期化と読み出しが実現し量子計算機の実用化に向けて大きく前進した。(Noiri et al., Nature Comm. 9: 5066, 2018)。

Dec. 31, 2018

メタンが検出されない火星大気の謎

火星上のメタンガスの存在は、生命の存在の証拠であると長い間考えられてきた。2018年12月12日、ESAの最新の火星探査ミッションのトレース分析機器では、火星の大気中に痕跡量のメタンが確認できなかったことが波紋を呼んでいる。

Dec. 26, 2018

連続するインドネシアの津波と海底地滑りの脅威

インドネシア政府によると、12月22日、スンダ海峡に面するジャワ島やスマトラ島の沿岸で津波が発生し、222人の死者、28人の行方不明者を出した。この津波の特徴は地震が観測されなかったことで、海底の地滑りと高潮が引き起こしたもので、アナク・クラカタウ火山の活動によって海底で生じた地滑りが海面を上昇させて津波となった。リングオブファイアーの中でも特に注意が必要なアナク・クラカタウ火山の活性化が懸念されている。

Dec. 25, 2018

世界最高記録密度の光メモリ

オックスフォード大学の研究チームは、世界最高記録密度で光学データを保存できる新しい技術を実証した。光を用いてデータの書き込みおよび読み出しを行う相変化型光メモリセルを改善したことで、従来より飛躍的に高速でかつ省電力の計算機メモリが可能となると期待されている(Li et al., Optica 6, 1, 2019)

Dec. 21, 2018

2D遷移金属カルコゲナイドFETの将来性

パーデュー大学の研究チームは2D遷移金属カルコゲナイド(MoSe2)で作られた低ノイズで高性能のシットキーバリア型FETデバイスを開発した。このFETデバイスは、シリコンに代わる革新的なマイクロエレクトロニクスと精密センシングのキーテクノロジーとなる可能性がある(Kwon et al., Phys. Rev. Appl. 10, 064029, 2018)。

Dec. 20, 2018

AIとメガライブラリが切り開く未来の材料科学

ノースウェスタン大学の研究チームは、特定の用途に最適なナノ粒子を迅速に探し出す材料開発ツールを開発した(Kluender et al., PNAS online Dec. 17, 2018)。このツールはナノ粒子のコンビナトリアルライブラリ(メガライブラリ)を利用する。コンビナトリアルライブラリは、表面上の特定の部位に固定された系統的に変化する構造の集合体である。

Dec. 19, 2018

気候変動へ地域ごとの寄与~放射強制力

産業革命以降の人間活動が温室効果のような地球表面の温暖化に貢献したとして、気候変動に対処するために、国や地域が寄与した割合に応じて、排出ガス削減目標が定められ、炭素税が課せられる。しかしコロラド州立大学の研究チームによれば、気候変動は表面温度のわずかな変化では到底表現できない複雑な複合効果で、国ごとに規制量を決めるのは、時間スケールの長い放射強制力評価が必要だとしている(Murphy & Ravishankar, PNAS online Dec. 17, 2018)。

Dec. 18, 2018

水から水素を製造する時代が確実にやってくる

炭素を含まない燃料で駆動される未来は、太陽光や風などの再生可能だが断続的なエネルギー源からのエネルギーを利用して蓄える未来でもある。将来的にはエネルギーは万人に開放され、誰でもエネルギーを使い放題できる社会が実現するのは夢物話ではない。トロント工科大学の研究チームは水から水素を生成する低コストのマルチサイト触媒を開発したことで貯蔵できるクリーンエネルギーに一歩近ずいた(Dinh et al., Nature Energy online Dec. 10, 2018).

Dec. 17, 2018



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