トランプ大統領の弾劾訴追とアメリカ政治の行方 Part 1

21.12.2019

Photo : pxhere.com

 

 米下院本会議で18日、トランプ大統領を巡り「権力乱用」と「議会妨害」で弾劾訴追決議案が可決された。民主党は2016年の大統領選の結果を容認できず、2017年1月20日の大統領就任式前からトランプ大統領を弾劾することを目指してきた。

 民主党はトランプ大統領を巡り、ロシアの2016年大統領選挙関与、贈収賄、脅迫、性的・人種差別、憲法違反、ウクライナ疑惑などの多くの「犯罪」で批判、弾劾訴追を求めてきた。しかし、3年間続いた追求の結果、確信的な証拠や信頼性の高い証言はなく、最終的には大統領の弾劾訴追にあたる重罪や軽罪は特定できないまま、「権力乱用」と「議会妨害」といった一般論の弾劾訴追となった。

2020年大統領選への影響
 9月に始まった下院での弾劾調査は「political theater」(政治的茶番劇)とみている人が多く、なりふり構わず弾劾手続きを進めてきた民主党への反発が強まって、2020年の大統領選にも影響を与え始めている。Political Pollsの19日の世論調査では55%が
弾劾に反対、賛成は30.8%と反対を下回った。NPR/PBS News Hour/Marist Pollの世論調査でも、48%は弾劾に反対、47%は賛成と、下院での弾劾調査中の11月に46%であった反対派が増えている。下院での弾劾調査が進むにつれて、弾劾に反対する有権者が増えた結果はどの世論調査でも明らかである。

 

 トランプ大統領の支持率もRasmussen の最新世論調査(12月19日)では安定して49%を保っており、弾劾訴追による影響は全くみられない。さらに、IBD/TIPPの最新世論調査によると、トランプ大統領とバイデン氏を除く民主党候補者との間では、有権者支持率が逆転して12月はトランプ大統領支持の方が高い。バイデン氏に対しても、11月にバイデン氏支持が53%に対しトランプ大統領支持は43%であったが、12月にはバイデン氏支持50%に対しトランプ大統領支持は45%と上がっている。また共和党全国委員会は11月に2,060万ドルと1カ月の選挙資金としては史上最大の資金を集め、トランプ大統領と共和党への支持が高まっている。

 

弾劾訴追決議案に反対した民主党議員3人
 弾劾訴追決議案の採決はおおむね党派に沿ったものとなったが、民主党から3人の議員が反対にまわり、そのうちの一人、ドリュー議員(NJ)は民主党を離党し共和党に入党したことが注目を集めている。下院で多数党の民主党から少数党へと政党を変えることは異例であるからである。年々民主党が極左化しており、民主党の方向性や政策に不満を持つ党内の保守派議員は少なくない。