W  O  R  L  D

ビッグデータの悪用がもたらす人権侵害

インターネットによって情報の水平拡散が容易になった反面、個人情報流出や悪意を持った情報拡散は人権侵害リスクとなっていることも事実である。所有権が明確でないビッグデータは、人工知能および顔認識ソフトウェアと組み合わされて、監視社会の強力なツールとなって、個人生活に侵入して人権侵害を引き起こす危険性が脅威となりつつある。

英国の「合意なきEU離脱」でアイルランドが補償要求

英国が合意なしでEUから離脱する可能性が高まるなか、その影響が英国を直撃するリスクが懸念されている。昨年6月に英国内の10万人以上の雇用を支えるエアバス社が「合意なき離脱」(ノーデイール)の場合、英国から投資を引き上げると警告しているmなかで、今度は「合意なき離脱」北アイルランドの国境問題が解決できないとして、アイルランドはEUに数億ユーロの経済援助を要求すると警告した。

半数が帰還する移民の実態

今日の世界的な移民の増加で、移民先の国のインフラと財政負担が増え様々な社会問題を生みつつあるが、移民の流れに関する正確なデータはつかめていなかった。ワシントン大学の研究チームはベイズ推定で世界の移民の流れを分析し正味の移住率を推定した結果、これまでの推定と対象的に、移住先の定住率は意外と低く、1990年以降、半数近くが(住みにくいはずの)母国に帰還していることがわかった(Azose and Rafarery, PNAS online Oct. 31, 2018)。

動き出した世界的なデジタル課税の潮流

カリフォルニア州規制当局は、携帯電話でのテキストメッセージの料金を請求する計画を放棄した。一方、フランス政府は、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの名にちなんで名付けられたいわゆる「GAFA税」による欧州の巨大事業に課税を決定した。ふたつの新しいデジタル課税立法の明暗が分かれたが、将来、情報サービス利用そのものが、課税対象となる可能性が否定されたわけではない。

政治色を強める「黄色いベスト」運動

フランスのマクロン大統領は「黄色いベスト」による政権批判デモの沈静化策として、燃料税増税の中止に続き、10日に最低賃金の引き上げ、残業代やボーナスへの非課税化、毎月の年金額が2千ユーロ(約26万円)未満の年金受給者への社会保証増税の撤回などを発表した。しかし、最新のOdoxa世論調査では59%がマクロン大統領の「譲歩策」を評価しないと答え、54%は抗議デモの継続を支持している。

世界中で増大傾向にある国外移住希望者

 欧州や米国など世界の先進国で移民の問題が深刻化しているなか、ギャラップ社が世界規模で行った世論調査、ギャラップワールドポールによると、世界中で約7億5000万人以上(世界人口の15%)が可能であれば自国を永久に離れ、他の国への移住を希望している。

世界一高税先進国となったフランス

経済協力開発機構 (OECD) が発表した2018年度先進国34カ国各国のGDP率としての税歳入ランキングで、初めてフランスは「世界1の福祉国家」と言われてきたデンマークを抜き、「世界1の税金国家」となった。

フランス国民に支持される反政府デモ

17~18日のフランス市民による大規模な抗議デモに続き、24~25日の週末もフランス全土で抗議デモが行われた。規模は前週の約半分の106,000人ではあったが、デモの中心はパリ市内となり、シャンゼリゼ通りには約8,000人が集結、警察と激しく衝突した。道路のバリケードは放火、高級ブランド店のショーウィンドウは破壊され、信号機も破壊されて、シャンゼリゼ通りは騒然となった。デモ隊の行動はエスカレートして暴徒化した現状には沈静化の兆しがみえない。

漁業水域をめぐるフランスと英国の争い

ブリュッセルで開かれたEU-英国の貿易交渉で、フランスのマクロン大統領は、英国がEU離脱後にEUとの交渉がまとまらない場合、英国の漁業水域がアイルランドの国境内(EEZ)に留まる可能性を示唆した。背景には英国とフランスのノルマンデイ海域の「帆立貝戦争」などの漁業権争いとアイルランド問題がある。

自閉症と大気汚染(NO)の関係

自閉症と農薬の成分である化学薬品の因果関係が疑われているなかで、母親が妊娠中に汚染された都市に住んでいた子供は、自閉症を発症する可能性がより高いかもしれないという新たな研究結果が発表された。5歳未満の132,000人以上のカナダの子供を対象とした調査によれば、より高いレベルの大気汚染にさらされた人々は、自閉症の傾向が高くなる。

2040年から内燃機関自動車(ICE)販売を禁止したスペイン

2018年11月13日、スペインはディーゼル車とガソリン車の販売を、2040年から禁止することを決めた。社会党党首ペドロ・サンチェス首相は、スペインが2050年までに経済を完全に脱炭素化するエネルギー移行法案の草案に、2040年から内燃機関自動車(ICE)の販売禁止を含めた。

欧州軍構想を巡って深まる米仏の溝

パリで開催された世界大戦休戦記念祝賀会の前日、フランスのマクロン大統領とトランプ米大統領の主張の違いが表面化し、米仏の協調関係に影を落とす結果となった。マクロン大統領は、核兵器不拡散条約(INF)から撤退するというトランプ大統領の方針を引用して、EUは中国、ロシア、さらには米国から欧州を守るために欧州軍の整備の必要性を説いたことが火に油を注いだ。

孔子学院に潜む中国のソフトパワー

中国政府は、孔子学院という文化交流団体を世界各国に大規模に設立しようとしている。このアカデミックな響きをもつ「研究所」は、海外の大学で中国語と文化の交流という名目で、実際には中国共産党宣伝部が教育環境に介入していることが懸念され、孔子学院への批判も徐々に高まっている。

カショギ氏殺害事件で揺らぐサウジアラビア王位継承

サウジアラビア政府は20日、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏がトルコのサウジ総領事館内で殺害されたことを認めた。殺害疑惑を否定してきたサウジアラビア政府だが、殺害から20日後に一変して殺害を認めたうえで、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の事件関与を否定したが、現サウジアラビア体制交代の圧力は避けられない状況に追い込まれている。

英国がエコカー助成を縮小する理由

このほど英国政府はエコカー新車を購入するための財政的インセンティブを大幅に削減することを決めた。補助金のひとつであるプラグインカー・グラントは11月9日から金額が改定され、現行のEV補助金(カテゴリー1)は4,500ポンドから3,500ポンドへ減額、2,500ポンドのPHV補助(カテゴリー2, 3)は完全になくなる。一見すれば補助金カットは英国が声高に推進する自動車のゼロエミッション化に逆行するようにみえる補助金縮小の理由は何なのか。

欧州市民の過半数以上はEUを必要としていない

EUのシンクタンクの「Friends of Europe」の最新世論調査によると、3人に2人はEUがなくなっても、生活は必ずしも悪くならない、また49%はEUが重要な存在ではないと考えている。ブリュッセルに本部を置くFriends of Europeの調査は9月に、全てのEU加盟国に渡り10,960人を対象に行われた。各加盟国の人口に比例して、その国の一般市民が調査の対象となった。

欧州のディーゼル車公害問題が深刻化

ドイツの自動車メーカーフォルクスワーゲングループの一角であるポルシェ社がディーゼル車の製造・販売を停止したことがメデイアを賑わしている。発端はVWのディーゼルゲートだが、すでにほかの大手メーカーにも飛び火し幹部の責任が追及されている。しかし現実にはもっと深刻な健康被害が欧州全土に広まっている企業の公害問題として捉えるべきであり、ポルシェ社の決定は「免罪符」的な意味合いを持つ。

欧州議会がEU著作権保護法案を可決

欧州議会は、Googleなどの巨大IT企業に強制力のあるEU著作権保護法案を可決した。賛否両論の渦巻く法案は一旦は否決されたものの438 対226で合意され、個々のEU加盟国が実施することになる。

増大するハッジ(巡礼)期間の感染症リスク

毎年、9月のハッジと呼ばれるイスラム教の巡礼期間中は、何百万人ものイスラム教徒がサウジアラビアのメッカへの巡礼を行う。イスラム教徒にとって、ハジは神聖な宗教的義務であり、信仰の重要な行為である。しかしサウジアラビアにとって、この期間の巡礼は感染症リスクが高まるため予防措置に追われ、警戒を強める試練でもある。

過去最大規模となる人身取引の実態

難民の支援を行っている仏NGO France Terre d’AsileFTDA)によると、年間320億ドル(約35200億円)に及ぶ規模の人身売買、人身取引が世界中で行われている。違法取引の中でも、近年麻薬密売や偽札ビジネスに続き、人身売買、人身取引は利益の高い密売となっているため、増加しているとしている。密入国あっせんのビジネスは過去最大規模である。

ドイツ大手自動車メーカーのリコール連鎖

降って湧いたようにドイツ3大自動車メーカーの主力車種に数10万台規模のリコールが発表された。デイーゼルゲートのみならずEVにまで及んだリコールの中には環境基準に反した規則違反から設計ミスによる発火の危険性に至る安全性の問題があった。ドイツ車のブランド力を損なう一連のリコール措置が相次いだ背景には何があるのだろうか。

カーシェアサービスの台頭~車を所有する文化の終焉

その国の近代化と経済成長に果たし、現在も経済牽引に欠かせない自動車産業に暗い影が迫りつつある。EVや自動運転など既存技術のシフトを余儀なくされ、デイーゼルゲートをきっかけにした自動車産業の不正への批判が強まっているが、それだけでもない。若者を中心に車購入のモチベーションとなる「車を所有する文化」に投資する意欲が薄れたことが将来性が危ぶまれている。このことを実感しているのは自動車メーカー自身だろう。

スエーデン各地に同時多発する暴動

スェーデンの複数の都市で13日、若者の集団により計100台の車が放火され、警官に投石するなどの暴動が起きた。全身黒服でマスクをした若者たちが、ソーシャルメディアを通じて連絡を取り合い、一斉に複数の都市で犯行に及んだ。

トルコ通貨危機の背景 Part 1

トルコ通貨のリラは12日大暴落し、史上最安値を更新した。経済政策の失敗、大幅な金融刺激策、インフレの上昇、貿易赤字の拡大などで2018年1月からトルコリラは33%と大きく下落していた。ここに来て、米国との関係の悪化で、トルコリラはさらに下落、トルコは金融危機を避けられない状況にある。

批判が高まるモンサントの除草剤グリホート

EU執行機関である欧州委員会は、当初、除草剤の使用許可を10年間更新することを勧告していたが、欧州議会が2022年までにグリホサート使用停止に関する拘束力のない決議案を承認したことを受けて、健康被害への脅威が増大していることを考慮した新提案を公表した。

自動車関税を巡り対立するドイツとEU

米政府は安全保証上の脅威を理由に5月にEUからの鉄鋼・アルミニウム製品にそれぞれ25%と10%の課税を発動した。これに対抗して、EU側は食品、衣類、洗濯機、モーターバイク、電池などを含む米国からの代表的な輸入品に28億ユーロ(約3,680億円)相当の報復関税を発動し、その結果貿易問題の対立が激化している。

米国・イラン衝突の危機

トランプ氏は、5月に行われた国際原子力機関(IAEA)の2015年の国際協定から、米国が離脱した後に、イランの石油輸出を禁止している。これに対し、イランは、米国が要求しているように、他の国が石油の購入を止めれば、主要な石油輸送ルートを阻止するという強硬策に出る可能性ができた。

世界に存在する現代奴隷の実態

オーストラリアの人権団体「ウォーク・フリー・ファンデーション」が毎年発表する「世界奴隷指数」によると、「現代の奴隷」状況を余儀無くされている人々が世界で約4,030万人に上る。「現代奴隷」には、性労働や児童労働のため人身売買された人、生れながらにして奴隷状態にある人、強制労働者、強制結婚などを含む、脅し、脅迫、暴力、権力による強制などで拘束され奴隷状況にある人々を指す。

英国が独自にステルス戦闘機を開発する理由

英国が計画している次世代戦闘機テンペストのモックアップモデルが7月16日から始まっているファーンボロエアショーで発表された。英国のウイリアムソン国防長官は、現在配備されている欧州共同開発の戦闘機タイフーンの後継機となるテンペストは有人でも無人機として運用できる世界初の試みになることを強調した。

アンドロイド独占でEUがGoogleに罰金

欧州連合(EU)は今週、米国の大手IT企業Googleに、数10億ユーロ規模のアンドロイド上の独占に対し罰金を課す決定を下した。AFPによれば、今週水曜日、GoogleがサムスンやHuaweiのような携帯電話メーカーと結託して、市場での支配的地位を得たことが独占禁止法違反に当たるとして罰金を決定した。

メイ内閣崩壊の危機

EU離脱推進派の中心人物であるボリス・ジョンソン英外相は9日、テリーザ・メイ首相のブレグジット方針に反対して辞任した。2016年から英国政府のブレグジット交渉を担当してきたデイビッド・デイビスEU離脱担当相の辞任に続き2人目の閣僚の辞任となり、メイ内閣は崩壊の危機にある。

ブレクジット担当大臣の辞任でメイ政権に暗雲

ブレクジット担当大臣のデイビス氏辞任はメイ政権に衝撃を与えた。 メイ首相はチェッカーズ(首相別荘)サミットでEUとの今後の関係に関する協議を重ね、EU離脱のソフトランデイング戦略は内閣の支持を得たものの、ボリス・ジョンソン外務大臣が「話にならない」とした計画となり、その後保守党から将来の見通しが不透明として反対意見が強まっていた。

著作権法強化でネット検閲に向かうEU

欧州議会の法務問題委員会は、賛否両論が渦巻く中でEUの新たな著作権改革に初めて肯定的な決断を下した。議論の的出会った条文11と13は、リンク税、検閲機構、インターネット・ミーム禁止が含まれる。

スエーデン国民がマイクロチップを埋め込む理由

何千人もスエーデン国民が、マイクロチップを人体に埋め込んで、非接触クレジットカード、キーカード、さらには日本ではSUICAPASMOなどで知られる公共交通機関カードとして使われている。チップが人体に埋め込まれたら、カードの置き忘れや財布に入れて持ち運ぶ必要はないし盗まれる恐れもない。

メルケル体制の終焉 Part5

メルケル首相とゼーホーファー内相との移民政策を巡る対立は、ドイツの深刻な政治危機を示唆している。6月末までにEU周辺国との移民対策に合意を得られなければ、メルケル連立政権は崩壊、メルケル体制の終焉を迎えることになるからである。

ビルダバーグ会議2018  Part 1

66回のビルダバーグ会議2018は、67~11日までイタリアのトリノで開催される。イタリアでの開催は14年ぶりで、4回目となる。イタリアで初のポピュリスト、反 EUEU懐疑派新政権が発足して一週間、「エリート・グローバリスト」たちが集まって、欧州で勢いを増しているポピュリスムを議論するのには、皮肉にも最も相応しい場所となった。

双頭政治となるイタリア新政権で強まる反EU色

 イタリアのマッタレッラ大統領が暫定政権の発足を進めていた間、水面下で五つ星と北部同盟は再び新政権発足に向けての調整を行っていた。31日には連立政権樹立で合意、コンテ氏は再び首相に指名され、同氏が提出した閣僚名簿をマッタレッラ大統領は承認したのである。6月1日には、就任式が行われ、イタリアで新政権がスタートした。

イタリアの政治混乱の背景にある反EU勢力の台頭

イタリアの暫定政権の首相に指名された、IMF元財務局長でEU支持者であるカルロ・コッタレリ氏は、29日組閣を断念した。上下両院で過半数の議席を有している五つ星・北部同盟から、暫定政権の信任を得られないため、現議会は解散、総選挙が60~70日後に実施されることとなった。

出口のみえないイタリアの政治混乱

イタリアのマッタレッラ大統領が、サボーナ氏の経済・財務相起用を拒否したことで、連立政権の新首相に指名されたジュゼッペ・コンテ氏は首相ポストを辞任、組閣発足を断念した。イタリア政治史において、選挙で勝利した政党、議会で過半数を占める野党が組閣発足に当たり、前政権の現大統領が大臣候候補えお拒否することは前例のないことである。

EUを巡る政治混乱でイタリアは再び政治空白に

五つ星・北部同盟の連立政権はジュゼッペ・コンテ氏を首相に指名、23日に前政権で現大統領のマッタレッラ氏は承認した。だが、経済・財務大臣候補のパオロ・サボーナ氏の指名を27日に却下し、イタリア政治混乱は避けられない状況になり、新政権樹立が不透明となった。28日には国民による大規模デモが予定されている。

スエーデン政府が国民に緊急時のマニュアルを配布

スエーデン政府は、戦争で敵国が国境を越えて侵入してくるなど重大な危機の対処方法を説明するマニュアルを470万世帯に送付した。緊急時には、テロやサイバー攻撃、自然災害、重大な事故、軍事衝突などが含まれる。

ガリレオ測位システムから英国排除でEUとフランスが対立

ブレクジットの直接的な影響として英国のEUへの科学技術協力に多大な影響が懸念されていたが、ドイツがEUのガリレオ衛星計画から英国排除を排除しようとしたことで、EUとフランスに溝ができている。

イタリアのパラレル通貨は現実となるか 

新政権樹立に向けて、イタリアの北部同盟と五つ星運動の両党は、欧州中央銀行(ECB)に対し、2,500億ユーロにのぼるイタリア政府の債務帳消しの要請の他、ユーロとの平行通貨、mini-BOTs’導入に合意、EUとの対立は本格化していきそうである。

ヒットラーの生存説に終止符か

モスクワで保管されていた歯の断片の調査を許可されたフランスの研究チームが、1945年、ヒットラーは青酸カリと銃弾によってベルリンで死亡したことを明らかにした。調査を行ったフィリップ・チャリエ教授は、歯は本物で、ヒトラーが1945年に死亡したことを証明したと結論付けた。

新政権発足で反EU色を強めるイタリア

3月のイタリア総選挙で反EUEUに懐疑的な立場をとる振興政党が勝利してから2カ月以上の政治空白がつづいている。当初から両党の間で隔たりがあり、フォルツァ・イタリアを率いるベルルスコーニ氏が連立の障害となっていた。ここに来てベルルスコーニ氏の了承と五つ星運動の歩み寄りで、中道右派連合と五つ星運動は13日に連立合意に達し、今週中にも新政権が発足する可能性が高まっている。

外国人指紋データ収集を義務化した中国

中国の国際空港で入国時に指紋データが義務付けられた。施行は430日で、14歳から70歳までの外国人に対して入国時に指紋データが収集される。収集は空港のパスポートコントロール手前に設置してある外国語に対応した自動読み取り機が行う。

米国核合意離脱で急展開するシリア情勢

5月10日、イスラエルのネタニヤフ首相が、ロシアから帰国、イスラエル国防軍(IDF)は、シリア領内にあるイラン部隊の軍事拠点とヒズボラ武装組織の拠点数10カ所を空爆した。イラン軍インフラに大打撃を与えた。

イラン核合意問題の真相 Part 1

イラン核合意に関しては当初から不明な点が多く問題視されていた。中でも、ウラン濃縮活動の制限期間が10~15年で終了すること、弾道ミサイル開発やテロ組織への支援を断念することが合意に含まれていないことが問題である。しかし、最大の問題点は合意から4カ月後の11月に、オバマ政権下の国務省が、イラン核合意は法的拘束のない、イランを含め参加国代表の署名がない合意書で、政治的コミットメントにすぎないことを認めたことである。

トランプ大統領が在韓米軍撤退を検討する理由

トランプ大統領は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日(キム・ジョンイル)総書記との会談を準備する際に、国防総省に駐留米軍の削減を選択肢として検討するよう求めた。現在韓国には約28000人の兵士が朝鮮半島に駐留しているが、この削減案計画が全面的または部分的な米軍撤退となるかどうか不明である。

北朝鮮が核実験場を閉鎖する背景

予想外の進展を見せる南北朝鮮の和解への交渉だが、その過程で北朝鮮は核開発の凍結の姿勢に沿ったかのように核実験施設の廃棄に手をつけている。核実験場の閉鎖が核開発の廃棄への一歩となるのか、それとも別に閉鎖しなければならない理由があったのか不透明な部分が残る。

ロンドン地方選挙を制した保守勢力

5月4日金曜日、2/3開票時点でメイ政権のさらなる弱体化につながる保守勢力の後退はなかったことは、ブレクジットの基本姿勢に変化がないことがはっきりしたと言える。保守党もブレクジットを巡って内部闘争が激化しているが、それでも労働党の勢力後退ははるかに深刻な結果となった。

ドイツ銀行の不透明な将来

ドイツ金融最大手のドイツ銀行は3月16日に、デリバティブの日常業務のなかで、クリアリングハウス(銀行間の手形取引所)に280億ユーロ(約3兆7000億円)を誤って送金したことを20日発表した。同行の時価総額240億ユーロ(約3兆2000億円)を上回る巨額で、誤操作をベアトラップ(bear-trap:誤操作防止)と呼ばれる内部のフェイルセーフシステムが機能しなかったことで、同行のITシステム、リスク管理への不信感が高まっている。

ロシア元2重スパイ暗殺未遂事件の真相 Part 2

化学兵器禁止機関(Organization for the Prohibition of Chemical Weapons: OPCW)は4月12日にセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんの暗殺未遂事件に使われた化学剤の分析の結果を発表した。旧ソ連軍が開発した神経剤の「ノビチョク」と断定していた英政府だが、公表されたリポートには使われた化学物質の正体は公表されなかった。不純物が全くなく、高い純度の「有毒な化学物質」と確認、化学物質がどこで製造されたかも特定されていない。

シリアに新たな戦果拡大のリスク

4月16日シリア軍は公式声明でイスラエル空軍がシェイラト空軍基地とホムス地方周辺に向けてミサイル攻撃を行ったことを認めた。声明ではシリア防空システムは8発のミサイルを迎撃したとしているが、イスラエル空軍機を攻撃したかどうかについては触れていない。米国はこの発表を否定している。

米国ミサイルを無力化するシリアの対空防衛システム

トランプ大統領がシリアにミサイルを撃ち込むと警告したが、実際にはロシアの配備した移動式のS-400ミサイルシステムで、シリアの防空能力は米国のミサイルを撃墜できるとして米国のミサイル攻撃を無力化できるとしている。

イランが核開発開始を警告

北朝鮮の核実験は外交の意外な展開で(先行きは不透明だが)、少なくとも緊張緩和の可能性が見えて来た一方で、イランの核開発問題に再び暗雲が立ち込めて来た。イランは米国と欧州の同盟国が5月に予定されている原子力開発協定の締結を前に、トランプ政権が協定離脱を決定する可能性が出て来たことを受けて、核開発開始を警告した。

ロンドンの犯罪都市化

2016年以来、英ロンドンで暴力的な犯罪が増加している。刃物や拳銃の犯罪、窃盗、盗強、強姦、殺人、ヘイトクライムなどが大幅に増加、同じ人口を持つ犯罪都市の米ニューヨークを初めて上回る殺人件数を今年の2月と3月に記録した。

EU軍の創設へ向けた行動計画

欧州員会委員長のユンケル氏は2017年11月10日に採択されたPESCOに基づいて、2015年までに本格的な欧州防衛軍(EU軍)の創設の必要性を訴えた。加盟国は行動計画に基づいてEU軍創設への道を着実に歩みつつある。EU軍はNATOを補完する欧州防衛同盟(European Defense Union)から進めて、欧州独自の軍事力と欧州内の運用能力を増強するものである。

オーストラリア航空機へのテロ攻撃を防いだイスラエルの8200部隊

イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカユダヤ人会議で、イスラエル諜報機関がISISによるオーストラリアの旅客機への攻撃を阻止したことを認めた。 ユニット8200が2017年に情報を提供したことが、攻撃を試みたレバノン系オーストラリア人ISIS2名の逮捕につながった。

エアバスに収賄容疑で罰金8100万ユーロ

エアバス社は2003年のオーストリアへのユーロファイター多用途戦闘機販売をめぐる賄賂容疑を認め、8100万ユーロ(~9900万ドル)の罰金の支払いに応じた。ドイツ検察当局によると、捜査ではエアバス社が有利になるような契約の直接的な汚職の証拠はないとしたが、(賄賂と見られる)多額の使途不明金について経営幹部の責任を追求した。

混迷するイタリア総選挙とEUへの影響

イタリアで3月4日に総選挙が実施される。最新世論調査によれば、反移民、反EU、反既存政治を掲げる政党に支持が集まっている。今回の選挙はイタリア国政のみでなく2016年の英国EU離脱を問う国民投票以来、今後の欧州連合の方向性を大きく決める選挙となる

炭疽菌免疫性を持っていた脱北兵士

北朝鮮から九死に一生で脱北に成功した兵士の経緯については手術中に発覚した腸内の寄生虫が発見されたことなど多くの記事がある。12月26日、今度は兵士の一人が炭疽菌の免疫性を持つことが明らかになった(UPI)。

メルケル体制の終焉 Part 4

ドイツのメルケル首相と社会民主党(SPD)は連立協議を終え、6日に大連立合意に達した。SPDに重要で影響力のある外務相、財務相、労働社会政策相のポストを引き渡すことで、4期目の政権樹立への道筋をつくった。しかし、その代償は大きく、メルケル首相が率いるキリスト・社会同盟(CDU・CSU)は国務相と経済エネルギー相のポストを獲得したものの、政策転換を余儀なく受け入れる形となった。

急増する香港のATM現金引き出し

香港のATMでの現金引き出しが急増している。香港のメデイアは一度に最大50枚のカードを使用して数十万ドルを引き出すなど、大量の現金を中国本土に移動していると報道している。これを受けて金融当局、銀行業界、警察が捜査に乗り出した。

ロシアが進める自国仮想通貨「クリプトルーブル」

2017年10月にロシアのプーチン大統領は、ロシア独自の仮想通貨「クリプトルーブル」(CRUR)を発行することを発表した。そのクリプトルーブルを法定通貨とする法案が議会に提出され、その導入に向けての法整備が着々と進められている。

準備が進む米国の戦術核攻撃と日本への影響

B-2爆撃機に16個が搭載される戦術核(小型核爆弾B-61)は最近改精度や地下攻撃力を増強した改良型B-61-12が開発されており、それらが搭載されれば戦術核攻撃力は格段に増大する。戦術核で標的となるのは北朝鮮の各施設を中心とする核インフラ攻撃で、死傷者を大幅に抑えることができるとして、現実的な選択肢となる可能性が高い。

世界に広がるビットコイン規制の波

仏のマクロン大統領とドイツのメルケル首相は19日に、仮想通貨ビットコインの法整備などの規制の必要性を議論、両国は4月に開催予定のG20会合で参加国にビットコイン規制を求めていくことに合意した。そのほかの世界各国でもビットコイン規制の動きが強まっている。

巧妙な北朝鮮の海上石油密輸入

台湾沖で米軍の偵察機が原油を運ぶタンカーから海上で横付けした北朝鮮の小型タンカーへの原油の移動が確認されているが、自衛隊の偵察機も上海沖で同様な密輸現場を発見している。たとえ公海上であってもこうした違法行為は国連決議に違反するものだが、現実には放置されている。その背景には密輸に協力する企業の巧妙な手口がある。

EUが国境を越えるオンライン・ショッピングを完全自由化

EU議会と欧州理事会及び欧州委員会は11月20日、「地政学的障壁」と呼ばれる加盟国間のオンライン・ショッピングの障壁をなくすことに合意した。デジタル経済担当理事によれば、これによってEU市民は国境を越えてデビットカードもしくはクレジットカード決済の商品のオンンライン購入やホテルの予約を自由に行うことができるようになる

経済規模上位が入れ替わる10年後の世界

英調査・コンサルティング会社の経済ビジネスリサーチセンター(Center for Economic and Business Research: CEBR)の年次レポートで発表している「世界経済順位総覧」によると、2032年には米国を抜き、中国は経済規模で世界1位となると予測している。また、日本は2027年にはインドと交代し世界4位、アジアの中国、インド、日本、韓国とインドネシアの5カ国が経済規模で世界トップ10位内を占める見通しである。

ポーランドへの制裁で揺らぐEU求心力

欧州委員会はポーランドに対し、司法の独立性を制限する改正法案の可決とEUの移民受け入れ分担制に応じないことで、 EU条約第7条を早くて20日に発動するとみられる。EU加盟国に第7条が発動されるのは前例がなく、欧州理事会での議決権停止に加え、EUからの経済支援や国際貿易が停止される。

WTO閣僚会議の合意なき閉会

2年おきに各国の貿易担当閣僚は会合(WTO閣僚会議)を開催し、貿易不均衡や自由貿易の障壁撤廃について協議する。この結果に基づいてWTO執行部の方針が決定されるので、閣僚会議は実質的なWTO執行部代行の会議といっても良い。1996年から11回目となる今回の閣僚会議はアルゼンチンのブエノスアイレスで開催されていたが、全く合意がないまま13日の閉幕を迎えた。

無力化する北朝鮮への経済制裁

 国連安保理は8月と9月の2回にわたり、北朝鮮の外貨獲得原を絶つことを目的に追加的経済制裁措置を採択している。北朝鮮の核・ミサイル開発の資金調達を困難にすることが狙いであったが、期待された効果はなく、北朝鮮は8月以降4回のミサイル発射実験を行っている。制裁効果を無力化する一つの理由は安保理の経済制裁措置に違反して、北朝鮮と貿易を進めてきた国が多いことで、49カ国もあることが最新の調査で明らかとなった。

メルケル体制の終焉 Part 1

9月にドイツの連邦議会総選挙が実施されてから2カ月が経過し、強い政治安定として知られてきたドイツのメルケル政権は未だに安定した政権を発足できずにいる。政権樹立ができないのは1949年以来のことである。メルケル首相が率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が自由民主党(FDP)と緑の党との間で連立協議は19日に決裂、連邦議会の解散による再選挙を支持するドイツ国民の声が高まっている。

欧州を目指す第二の難民の波

アフリカや中東の難民キャンプの収容能力の限界で、再び欧州に難民が殺到するリスクが高まり、国連世界食料企画(WFP)が警告をだした。難民キャンプ内の治安、生活環境の悪化、特に食料不足は2015年の最初の難民が欧州に流入した時より危機的状況にあるため、難民は食料がないキャンプを離れて、欧州諸国へと避難していくことが懸念されている。

カタロニア独立へ向けて強まる反政府デモ

カタロニア州の中心都市バルセロナでは中央政府が自治権の一部を剥奪したことに抗議して市内で数10万人規模の抗議行動が起きた。バルセロナ警察調べでは450,000人が抗議行動に参加、自由独立を求めてデモ行進を繰り返している。

サウジアラビアで何が起きているのか Part 2

今回の粛清は、砂漠のダボス会議」とも呼ばれるFuture Investment Initiative (未来投資イニシアチブ)の開催直後、Startup Saudi Arabiaの国際会議の開催中で起きた。世界中から投資家、政治家、実業家、政府高官、サウジアラビアからも王族、大臣、政府高官、有力投資家や実業家が首都リヤドに集結していた。一度に粛清を実行するには最高のタイミングであったともいえる。

EUが欧州炭素市場改革に合意

EU119日、パリ議定書に基づく排出ガス規制に本腰をいれるため、2021年後に欧州の炭素市場の改革を行うことに合意した。EU議会とEU参加国は世界最大規模の炭素市場の改革の暫定合意にこぎつけた。重い腰を上げたようにみえるEUだが、炭素市場の過剰供給を解消するだけでここ数年は実質規制は据え置きとなる。

サウジアラビアで何が起きているのか Part 1

サウジアラビア国王が4日に汚職対策委員会を立ち上げ、王位継承者であるムハンマド皇太子をトップに任命してから数時間後に、現職大臣4人と経済界の有力者を含む王子11人と官僚を含む38人が相次いで身柄を拘束された。国外渡航は禁止され、銀行口座は凍結、首都リヤドの5スターホテルのリッツ・カールトンで拘束されている。6日にも有力な実業家が拘束、汚職防止の粛清が続いている。

サウジアラビアとレバノンとの紛争激化

サウジアラビアは6日、イランが支援するレバノンのヒズボラの攻撃をサウジアラビアによる宣戦布告とみなして強く非難した(ロイター)。敵対関係にあるサウジアラビアとイランはレバノンでたびたび衝突を繰り返してきた。レバノン首相のサード・アリ・ハリル氏はイランの圧力に抗議して4日、辞任を決めている。

カタロニア独立反対派デモで負傷者

バルセロナではスペイン国旗を掲げた極右勢力とカタロニア警官隊が衝突し、負傷者を出した。スペイン政府は独立反対派の基盤となる組合の反独立デモ(主催者側発表では100万人規模、実際には40万人規模)を組織し、独立反対を掲げて市内デモを繰り広げた。

未来都市構想で若返りを模索するサウジアラビア

サウジアラビアのサルマン皇太子は25日、再生可能エネルギーのみに依存する未来都市を建設するとともに温厚なイスラム国家を目指すことを宣言した。新しい未来都市ネオムに5,000万ドルの国費を投じて、イノベーションハブとして世界から投資家を呼び込む構想である。

中国の近代化路線の総括~より困難な次の5

18日から始まった第19回党大会に前後して、中国の近代化の総括プロパガンダが活発になっている。焦点は人民主義(人民の幸福度)となる。1981年から2015年までに貧困から脱した7.2億の人口は欧州とロシアを合わせた人口より多く、米国の2倍で世界人口に占める割合は10%になる。

カタロニア独立の阻止が困難となったスペイン政府

カタロニア州の独立を問う住民投票が始まったが、スペイン政府の送り込んだ警官隊が投票所に押しかけ、実力行使で投票を阻止しようとして州民と衝突した。州都バルセロナでは政府側警察がゴム弾を使用して騒然となっている。これまでに一般市民800名以上が負傷した。

ソマリアの自動車爆弾は同時多発テロか

1014日のソマリアのモガデイシュのトラック爆弾テロは137人の死者、負傷者300名以上となった(AFP)。買い物客で混雑する土曜日の商店街に置かれたトラックが爆発したことで、死傷者が増えたとされる。

シリア北部に軍事力を展開するトルコの意図

トルコ軍がロシア、イランとの軍事演習を前にシリア北部近くに戦車と歩兵師団を展開した。3国はこれに先立ちアルカイダの勢力下にあったシリア北部を非戦闘地区にすることで合意している。トルコはこの地区における反シリア政府勢力の台頭を許さない構えである。

直接民主制を要求する黄色いベスト運動

フランスの黄色いベスト運動は当初の燃料税の引き上げ反対抗議運動から、反政府(マクロン大統領の辞任)、反グローバリズム、ロスチャイルド金融システムの崩壊やエリート支配階級への国民の不満と不信を呼びかける民主化運動となってきた。黄色いベスト運動による反政府デモは止まらず、12月末にはマクロン政権に新たな要望を突きつけた。それは政治的決定に国民が参加するスイス型の直接民主制の導入である。

止まらない世界債務の上昇基調

IMFの最新データによると、先進国,新興国と低所得発展途上国190カ国の政府部門、家計部門、企業部門を含む「世界債務残高」は2017年末に名目で過去最高の184兆ドルに達した。これは世界債務残高対世界GDP比率でも最大の225%となる。

IT巨大企業を攻撃するソロスの意図

ジョージ・ソロスは2018年1月のダボス会議で、権威主義者が民主主義を破壊する独占権を握っているとして、自らが投資しているFacebookやGoogleなどのIT巨大企業に対する攻撃を開始した。現在、ソロスの最大の関心事はインターネット広告収入の半分を支配しているシリコンバレーのIT巨大企業への規制強化である。

デジタル税に動くオーストリア

欧州委員会は2018321日、デジタル事業活動がEU内で公正かつ成長を損ねない形で課税されるように、①IT企業の利益が登録され課税されるようにする法人税規則の改正、②現在EUで免税されているIT企業への暫定税、を提案した。これを受けてフランスは「GAFA税」を201911日から徴収する。オーストリアはフランスに続いて1月初めに基本的枠組みを発表、2020年に政府が計画した税制改革の一環として、税が施行される。

米中貿易戦争の中心となった深セン市の光と影

中国南部の深セン市は、40年前から中国が展開している近代化政策「改革開放政策」でファーウエイ、ZTEなど中国勢大手のほか、アップル製造代行の鴻海精密工業やサムスンなど、国内外の大手ハイテク企業が拠点を集中した。上海についで中国第3の都市に登りつめた深セン市は中国経済成長のお手本とされる一方、最近は環境問題が浮上し、「中国製造2015年」を巡り米国との貿易戦争が勃発するなど影の部分が表面化した。

メイ政権のEU離脱案の否決で現実味を帯びるノルウエイモデル

英国のメイ政権が欧州連合(EU)と交渉の末に合意した離脱案の英下院での採決は11日に迫っている。現状では英国に不利なEU離脱条件に議会は難色を示し可決が危ぶまれている。EUとの離脱に関して合意に達することができなければ、英国はEUとのいわゆる”ノルウェーモデル”を検討する可能性がある。

自転車とスクーターのシェアサービスに暗い影

自動車を個人が所有する時代が終焉を迎えようとしているかのようなシェアサービスの台頭であるが、都市では車よりも小回りがきく自転車やスクーターのシェアサービスの人気が高い。前者は中国で急激な成長を見せたが、成長が急激すぎて回収が追いつかず放置された自転車が社会問題になっている。一方スペインのマドリードでは電気スクーターのシェサービス企業が当局に業務ライセンスを拒否されるなど、便利なはずのシェアサービスが世界各国で様々な問題を引き起こしている。

フランス全土に広がる反政府抗議の潮流

今回のデモの背景は単なる燃料増税だけではない。きっかけとなった今回の増税前に段階的な増税で国民の負担が限度を越えるところまできたために、富裕層に配慮するマクロン大統領への不信感がつのり、政府の転覆を目指した革命前夜のような状況をつくりあげた。

ブレクジット議会投票を控えて風前の灯火のメイ政権

メイ首相が欧州議会(通称ブリュッセル)から譲歩を求めるべきだとして、来週の議会投票が危ぶまれている。英国に不利なEU離脱条件を改善するように、保守党が再交渉を要求すれば、来週の月曜日に行われる予定の議会投票は、延期される可能性があるからだ。そうなれば、政府は12月11日の日付の2日前の金曜日に投票を断念せざるを得ない。

国内EVの位置情報を監視する中国政府

中国の大都市ではテスラEVをみかけることが多くなった。一流ホテルにはテスラの充電ステーションも設置されている。それでもテスラEV所有者は、テスラが常に中国の正確な位置情報を中国政府に送信している事実を知らない。監視されているのはテスラEVだけではない。中国政府は、中国のすべてのEVメーカーに位置情報を送信するよう義務付けた。これで習近平政権が自国民を監視・追跡する設備整備に新たにEV位置情報が加わった。

フランスで激化する反政府デモ

地球温暖化対策の一環として、フランス政府は2017年から内燃機関(ICE)への燃料増税と炭素税を段階的に実施してきた。ICEへの課税をEVなど低CO2排出車への切り替えの促進策としているフランス政府に対し、ガソリンと軽油価格の高騰やこれまでの政府エネルギー政策への不満で、17~18日フランス全土2000カ所で市民による大規模な抗議デモが行われた。

旧ソ連邦諸国の経済成長減速が明らかに

ロシア国立研究大学高等経済学院CBTSは2004年から2016年の間にCIS諸国の製造業の経済指標を比較して、CIS諸国の産業発展を一緒に分析するだけでなく、プロジェクトでの各国の役割を評価した結果、CISすべての国における長期的な着実な成長に向けた世界的なマクロ経済の減速を示し、この地域のほとんどの経済発展が後退しているという結果が得られた。

中南米移民キャラバンに潜むテロリスト

中南米出身者の移民キャラバンが、米国との国境を目指している中で、グアテマラのジミー・モラレス大統領はその中に、ISISの武装勢力を含む、100人のテロリストがグアテマラで逮捕されたことを発表した。モラレス大統領はまた、暴力組織MS-13のメンバーを含む1,000人以上も逮捕されたことを明らかにした。

南米に飛び火したポピュリズム

アメリカ、欧州に続き南米でも反体制、ポピュリズムの波が忍び寄せている。7日に実施されたブラジル大統領選挙では、極右の社会自由党のジャイル・ボルソナーロ下院議員は得票率46.43%で首位に、政治体制を維持してきた最大左派の労働党のフェルナンド・アダジ元サンパウロ市長は29%に留まった。当選に必要な過半数を獲得できなかったことから、両候補者は10月28日に決選投票を迎える。

イタリアが新年度予算を巡って欧州委員会と対立

EUの行政執行機関である欧州委員会は、2009年の債務危機以降、各加盟国の翌年予算案の審査を行ってきた。今年も予算案提出期限である10月15日を前に、イタリア、フランス、スペインの予算案を巡り、欧州委との対立は避けられない状況にある。

スェーデンでもポピュリズムの波

9月9日にスェーデン総選挙が行われる。投票日を前に、全ての世論調査は、反移民、反既存政治、EU懐疑派の極右派政党スウェーデン民主党(Sweden Democrats)への支持率の上昇、大躍進することが予想されている。現在、支持率では第3位だが、中道右派の穏健党(Moderate Party)を抜き第2位の政治政党になるのは確実とみられ、1933年以降約65年間最大与党として政治体制を続けてきた社会民主労働党(Social Democrats)を抜き、スェーデン最大の政党になる勢いを見せている。

金融面でも米国からの独立色を強めるドイツ

ドイツのマース外務大臣は米国から独立した、欧州独自の金融決済システムを構築する必要性を21日、独ビジネス紙のHandenblattで指摘した。主要同盟国が脱ドル化を提唱するのは初めてである。EUにNATO以外の欧州防衛軍(EU軍)の設立を積極的に進めるドイツは、経済面でも米国の影響力を受けない枠組みを模索し始めた。

ソーシャル・メディアによる世論操作

オックスフォード・インターネット研究所の最新の報告書によれば、この問題は大規模に拡大していることが明らかになった。インターネット上のフェイクニュースを防ぐ目的で新しい法律を導入した多くの民主主義政府の努力にもかかわらず正式に組織されたソーシャルメディア操作が行われている国の数は、世界28カ国から48カ国に増えている。

自国に不利なEU離脱交渉を進めるメイ政権

メイ英首相は12日に英国政府のブレグジット、離脱後のEUとの関係に関する基本方針を明らかにした。EU離脱担当相のデービス氏とボリス・ジョンソン外相が相次いでの抗議辞任で政治情勢が混乱を見せている中で、公表をした基本方針は内容が離脱を骨抜きにする内容であり、メイ首相の強引なプロセスが問題視されている。

欧州議会がEU著作権保護法案を否決

欧州議会は75日、世紀の悪法として批判が多かったEUの著作権保護法案を拒否した。この法案はインターネットのミーム機能など重要機能に規制がかかるとして、米国の大手IT大手だけでなく、インターネットの自由を擁護するユーザーも強く抵抗していた。法案にはフランスのストラスブールで開催された欧州議会で、議員ら318人が反対、278人が賛成、31人が棄権したため大差で否決された。

欧州に押し寄せるアフリカからの難民

欧州に流入した中東からの難民は2015年をピークに減少しているなか、アフリカからの経済的難民が増加している。2013~2016年の間にアフリカ全土から約50万人の難民が主に経済的逃避を理由に欧州に流入した。2018年は前年度よりアフリカからの難民は増加、欧州を目指す第二の難民の波に多くの欧州諸国は警戒している。

メルケル政権の終焉 Part 6

EU首脳会議(28~29日)を前に、メルケル独首相の呼びかけで、24日に移民問題に関する欧州連合緊急会議が行われた。メルケル政権の連立パートナーであるキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー内相と移民・難民保護政策を巡る対立でメルケル政権安定が揺らいでいる。

キャッシュレス化に歯止めをかけるスェーデン

世界で最もキャシュレス化が進んでいるスェーデンでは、完全なキャシュレス化に伴う社会的・経済的リスクが懸念され始めた。現金の流通を残す方向にスェーデン国立銀行や議会は、金融機関に一定の現金保有と現金取引ができることを義務づける法案を検討している。

コンゴ都市部で脅威となったエボラ出血熱

アフリカ中部のコンゴ民主共和国の人口約120万人の都市部で17日、エボラ出血熱感染者が確認された。11日にエボラ出血熱が農村地域で発生してから、感染者44人、うち23人の死亡者がでている。確認された感染者は、今回流行が始まった町ビコロから150キロ離れた都市部(西部・赤道州都市ムバンダカ)で、コンゴの首都キンシャサ(人口1,000万人)の上流に位置していることから、今後感染が拡大していくのが懸念されている。

中国のレーザー攻撃で緊張が高まるジブチ基地周辺

東アフリカのジブチにある米軍基地キャンプ・レモニエで米空軍の輸送機C130が着陸する際に、外部からの軍用レーザー光線で照射され、パイロット2名が目に軽傷を負った。米軍基地からわずか数キロメートル離れた中国海軍基地から照射されたことを確認したことを米国務総省は5月3日発表した。

フインランドがベーシックインカム制度導入を断念

2017年1月から欧州初の「ベーシックインカム制度」(統一最低所得又は基礎所得保障)を実験的に実施していたフィンランドは、今年の12月31日をもって終了することを決めた。予定されていた2019年からの、失業者だけでなく雇用者を含む規模を拡大した実験導入は見送られることになった

ドイツ警察がポルシェ幹部を拘束する理由

ドイツ警察は親会社であるフォルクスワーゲン(VW)がディーゼル排出ガスの不正行為に関連してポルシェ幹部を拘束した。ポルシェは逮捕された幹部の名前を公表しなかったが、ドイツの人気紙(Bild)と経済週刊誌(Wirtschaftswoche)は、拘束されたのは2015年にディーゼルゲートが発覚した際に、ポルシェのエンジン部門を担当していたエンジニアであるジョルグ・カーナー氏であるとしている。

バイエルのモンサント買収で化学・農業独占企業が誕生

EUは先月、バイエル、モンサント両社が60億ユーロの資産売却を条件に合併を承認した。これに続いて米国の独占禁止法当局はバイエル社に種子や種子処理技術の資産売却し農業関連資産の調整を条件に、モンサント社買収を認可した。農家と環境保護団体は強く反対していた両社の合併は、資産整理を条件に米国でも承認されることが報道されると株価は6.5%上昇した。

イタリア上下両院で反EU、EU懐疑派が台頭

3月4日に行われたイタリアの総選挙後に、既存の政党から反EUやEU懐疑的な立場をとる新興政党へと政党勢力が大きく移り変わっている。議会下院の議長のポストを初めて獲得したのは「五つ星運動」で、上院の議長となったのは中道右派連合のフォルツァ・イタリアである。

ハンガリー国民が支持したオルバン政権の反移民政策

 ハンガリー総選挙ではオルバン政権の反移民政策が圧倒的な国民の支持を得てオルバン氏は48日に3選を果たした。フィデス=ハンガリー市民同盟とキリスト教民主党は84.7%の議席を得て、199議席の133議席を手中にした。第2党は極右勢力のJobbik党、第3党は社会党主導の左派連立政権は20議席となった。

ロシア元2重スパイ暗殺未遂事件の真相  Part 1

ロシア元2重スパイスクリパリ氏と娘の暗殺未遂事件に関しては多くの謎がある。英国政府は当初からロシア政府が事件に関わっていると断定し、英国で多くの市民の命を危険にさらしたとして強く非難した。さらに対抗措置として英国を含む世界27カ国が露外交官を追放する報復措置をとっている。

ブレクジットの現実~貿易協定の対価は400億ポンドの清算金

英国の完全なEU離脱(ブレクジット)は19ヶ月の移行期間後になる。EUが英国に巨額の清算金を要求する一方で、英国とEUとの貿易問題が浮上し問題を複雑化している。英国のEU離脱担当大臣のデイビス氏は、貿易交渉は進展しているとしながら、最終結果次第では約400億ポンドに及ぶEU離脱清算金を拒否することもあり得るとしている。

米朝首脳会談の開催地候補にスエーデン

米朝首脳会談を巡っては、期待と同時に一向に進まない実務レベルの調整作業に不安感がよぎる人も多い。その開催地については国境DMZの他に遠く離れたスイスやスエーデンの可能性も浮上している。なかでも北朝鮮外交トップがスウェーデンに到着し、トランプ大統領とキム・ジョンイル首脳会談の準備を行うとみられる。

イタリア選挙の最新予想~反EU連立政権発足か

4日に開催されたイタリア総選挙の最新のTecne得票率予想によると、単独政党ではポピュリズム政党の五つ星運動がトップ支持率の34%と躍進している。中道右派連合の支持率は35%に続き、民主党が中心の現政権の中道左派連合は20%と低迷、大幅に議席を減らすのは必至である。イタリア議会では反EU、反既存政治、反移民の政党勢力が全体の69%を占めることになる。

グローバルパワーを目指す中国~ジブチ軍事基地拡充

中国は2017年7月に、アフリカ北東部のジブチに軍事拠点を設置した。しかしこれまでは物流と安全な港湾設備がないために軍事拠点としての能力は制限されていた。これに先立ち、外交面でも中国は2014年2月中国政府はジブチアのイスマイル・オマル・グレレ大統領と戦略的パートナーシップ契約を締結したことで、2016年にジブチ市商業港湾設備を活用した軍事基地設立に動き出した。

メルケル体制の終焉 Part 3

2017年9月のドイツの連邦議会(下院)総選挙から4カ月、メルケル首相は政権樹立ができない状況が未だに続いている。メルケル首相が率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が進めていた自由民主党(FDP)と緑の党との間の連立協議は11月には決裂、その後、中道左派の社会民主党(SPD)との大連立を模索してきた。ようやく大連立に向けて両党は協議に入ることを12日に合意したが、すでにSPD内の反発で大連立結成が不確実となっている。

イタリアでも自治権拡大の動き

イタリアの観光都市ベネチアがあるベネト州と商業都市のミラノがあるロンバルディア州の2州で、中央政府の直接統治を弱め、自治権拡大を問う住民投票が22日に実施された。住民投票は憲法違反ではないが、法的拘束力をもたない。完全独立を求めるカタロニアとは異なるが、経済的に豊かな地域が中央政府の特に税制や移民政策に不満や不公平感を感じ、自治権拡大を求める面は似ている。

全土に広がったイランの反政府デモ

12月28日にイラン第2の都市マシャドで始まった反政府デモは28日に入ったが沈静化の兆しが見えない。3日目に入って首都テヘランに拡大した反政府の動きに対して、政府は携帯のインターネット接続を遮断して、デモ鎮圧を試みた。

サウジアラビアで何が起きているのか Part 3

11月に始まったサウジアラビアの汚職対策委員会による前代未聞の粛清で、王族、現役閣僚、官僚や実業者を含む300人以上の要人が拘束された。全員サウジアラビアでは「特権階級」に属している。その後、法廷闘争を控える数人を除いて、拘束された要人の大半は和解で解放に向かっているとされる。

エルサレム首都宣言の背景

トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都と正式に認定、現在テルアビブにある米国大使館をエルサレムに移転する方針を明らかにした。発表前日にパレスチナ自治政府のアッバス議長には、イスラエルとパレスチの2国共存が可能な中東和平案を立案中で、早くて2018年前半には明らにできることを伝えている。

エルサレム首都承認を巡るパレスチナ暴動

12月7日のハマス指導者ハニエ氏の呼びかけ「インテイファーダ(蜂起)」に呼応してパレスチナ自治区の暴動が勃発した。ハニエ氏は12月8日は民衆に一斉に蜂起するようテレビ演説で呼びかけ、ハマスのテロリストにも活動強化を促した。

終結が遠のいたイエメン内戦

サウジアラビア主導のイスラム教スンニ派アラブ諸国の連合軍がイエメンを攻撃し始めて2年以上が経過する。激しい戦闘が続いていたイエメンの首都サヌアは4日、シーア派武装組織のフーシ派によって制覇された。サヌアからの脱出をはかっていたサレハ前大統領は殺害され、イエメン内戦は新たな局面を迎えた。

欧州におけるイスラム教人口の動向

Pew Research Centerが調査した欧州の人口動向によれば、今後2050年までに欧州諸国ではイスラム教人口が大幅に増加を続ける。“Europe’s Growing Muslim Population”(欧州で増え続けるイスラム教人口)と題した調査結果は、現在欧州に居住する2,580万人のイスラム教の人口動向を今後の移民政策によって、どのように変化するかを調べた。

メルケル体制の終焉 Part 2

連立協議が決裂に終わり、少数政権か再選挙の選択肢に追い込まれたメルケル首相は、中道左派で第2党のドイツ社会民主党(SPD)と再び連立を組むか否かの協議を30日に行うこととした。協議結果によりメルケル首相が率いるCDU・CSUとSPDは3度目の「大連立」を組む可能性がでてきた。安定多数の政権を求める一方で、両党内部だけでなく有権者からの不満が再び高まることが予想される。

EUの強大国化を目指す欧州委員会

EU執行機関である欧州委員会は英国のEU離脱後に、大蔵大臣ポストを据えて財源管理を一層強め、超大国を目指す方針を鮮明にした。ユンケル委員長の構想はEU加盟国の国家財政に立ち入って構造改革を促し、EU結束力を高めて強大国を目指している。

カタロニア独立宣言のインパクト

スペインのカタロニア州政府はスペイン政府の執拗な投票妨害にもかかわらず、独立賛成票が90%を越えたとして勝利宣言を行った。ロイターによれば投票所に派遣されたスペイン政府の警官隊と住民の衝突で、840名の負傷者を出しながら圧倒的な独立を支持する住民の前に、有効投票数2,260万票の90%が賛成票だった投票結果は州政府の完全な勝利となった。

日本はデファクト核兵器保有国

唯一の被爆国であり、核兵器保持はあり得ないとされてきた日本だが、崇高で情緒的な願いとは裏腹に、国際的には日本が原子力平和利用に隠れて、核兵器製造が可能なプルトニウムを保有する国(デファクト核保有国)とする認識が高まっている

オーストリアでもポピュリズムの台頭

英国のEU離脱、イタリア、オランダ、フランス、ドイツでの選挙で反EUや反移民政策を掲げる政治政党の躍進、カタロニア国民投票による独立宣言、ポーランドやハンガリーで台頭するポピュリズムの一連の動きで欧州の政治情勢は大きく変わろうとしている。15日のオーストリア国民議会選挙でもポピュリズム的な反移民、反体制の中道右系の国民党が大きく躍進し、第1党となった。