イラン核合意問題の真相 Part 1

09.05.2018

Photo: bbc

 

 トランプ大統領は8日にイラン核合意離脱を表明した。表明に先立ち、マクロン仏大統領に続きメルケル独首相が相次いで訪米し、合意を維持する必要性を唱え、トランプ大統領に離脱を回避するよう説得に動いた。

 

イラン核合意は法的拘束力がない

 イラン核合意は2015年7月に、主要6カ国(米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国)とイランが結んだ合意である。ウラン濃縮などイランの核開発計画を大幅に縮小する代わりに、国連安全保障理事会の制裁決議、欧米などの経済制裁を解除する内容であった。国際原子力機関(IAEA)はイランが核合意を順守しているかの監視役を務めている。

 

 イラン核合意に関しては当初から不明な点が多く問題視されていた。中でも、ウラン濃縮活動の制限期間が10~15年で終了すること、弾道ミサイル開発やテロ組織への支援を断念することが合意に含まれていないことが問題である。しかし、最大の問題点は合意から4カ月後の11月に、オバマ政権下の国務省が、イラン核合意は法的拘束のない、イランを含め参加国代表の署名がない合意書で、政治的コミットメントにすぎないことを認めたことである。

 

 当時共和党下院議員であったポンペオ現国務長官は、核合意書にはイランのローハニ大統領の署名がないことに疑問を持ち、当時のジョン・ケリー国務長官に尋ねたところ、国務省は正式な条約でないことを認めた。

 

政治的コミットメントでしかない実態

 国務省の立法問題課のJulia Frifield次官補佐からポンペオ氏への返答には、「包括的共同作業計画(JCPOA)(注1)は条約や行政協定でもなく、署名のない書類で、政治的コミットメントである」とした。2015年に法的拘束がない、代表の署名がない、政治的コミットメントだけに、イランが合意を破棄する可能性を懸念していたポンペオ議員は皮肉にも国務長官となり、トランプ大統領の核合意離脱の支持者となった。

 

(注1)イラン核開発の凍結と制裁解除を交換にして2015年7月14日に米国の他EU3国(英国、ドイツ、フランス)にロシア、中国が加わって締結された最終合意である。イラン側はJCPOAでウラン貯蔵量、遠心分離機数の削減、プルトニウム製造中止、査察受け入れを遵守することを条件に制裁解除を約束するものであった。トランプ政権はイランとの核開発制限の交渉を継続するとし、制裁も完全解除していない。

 

核兵器への道はウラン濃縮とプルトニウム製造のふたつで、後者は黒鉛型原子炉の稼働が必要監視されやすいが、前者は高性能遠心分離機が小型化したため、数1000台のシステムを建物に隠すことも可能になった。。

 

 

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