新型コロナウイルスに関する最新学術論文

28.01.2020

 

 1月23~25日までに発表された新型コロナウイルスに関する学術論文を紹介する。人から人の感染が確認されてから、新型コロナウイルスの基本再生産数(一人の感染症患者から何人に感染させるかを表す数:R0)の研究が注目されている。現在、新型コロナウイルスの拡大が進行しているため断定はできないが、これまでの感染症例に基づくと、R0はSARSより高い2.6から最大で5.47までの想定値となった研究が発表されている。

 

2020.01.25  Report 3:Transmissibility of 2019-nCoV ( Imperial College London)

 17日に発表した研究(同サイトReport 1)について、1月18日までの新型コロナウイルスの症例を基に、基本再生産数(一人の感染症患者から何人に感染させるかを表す数、R0)を想定した論文である。平均的に一人の感染症患者から2.6人(1.5-3.5)に感染したと想定する研究結果となった。新型コロナウイルスの感染拡大の危機を抑え込むには、感染拡大を60%以上阻止しなければならない。

 

2020.01.25  Transmission dynamics of 2019 novel coronavirus (2019-nCoV)

 2020年1月23日までの症例データ、医療記録、疫学的調査を基に、23日時点で感染確認された830人の調査結果を発表した論文である。新型コロナウイルスの平均潜伏期間は4.8日であった。症状の発症から隔離されるまでの平均期間はSARSが4.2日であったのに対し、新型コロナウイルスは2.9日であった。基本再生産数 (一人の感染症患者から何人に感染させるかを表す数、R0) は2.90-2.92と推定された。2003年に発症したSARS感染のR0値が1.77-1.85であったことから、新型コロナウイルスの感染力はSARS より高い可能性があると推測される。

 

2020.01.24 Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China

 2020年1月2日までに新型コロナウイルス感染を確認された41人の臨床経過をまとめた論文である。感染者の特徴として、発症患者の73%は男性、平均年齢は49歳、41人中13人は武漢市の海鮮市場を訪れていなかった。呼吸器症状から始まり、発熱 (98%)、咳 (76%)、筋肉痛と疲労間 (44%)、頭痛 (8%)、下痢 (3%)などが主症状であった。41人全員は入院後重症な肺炎を発症、そのうち11人 (29%)は急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)を起こし、5人(12%)は急性心臓障害、6人(15%)が死亡している。

 この論文で注目するのは、感染症患者の13人は新型コロナウイルスが発生したとされる武漢市の海鮮市場を訪れていないことである。最初の感染症患者は2019年12月8日から発症、潜伏期間を考慮すると11月末に最初の人への感染が起きたことになると推測される。これは、海鮮市場で発生した感染症例とは別のものである。

 

2020.01.23  Preliminary estimation of the basic reproduction of novel coronavirus (2019-nCoV) in China, from 2019 to 2020: A data-driven analysis in the early phase of the outbreak

 新型コロナウイルスの中国でのアウトブレイクの初期段階の基本再生産数(一人の感染症患者から何人に感染させるかを表す数、R0)を想定した研究である。2020 年1月10日から21日までの中国全土のおける症例報告を基に、指数関数的な増加に従う流行曲線をモデル化した。感染拡大の初期の段階では症例は指数関数的な増加を続けている。新型コロナウイルスの平均R0推定値は3.30 (95%CI:2.73-3.96)から5.47 (95%CI:4.16-7.10)の範囲であることを結論とした。この結論により、今後新型コロナウイルスが大規模な拡大に発展する可能性が高いことを示唆した。

 

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