生物を模倣したエネルギー変換触媒

05.03.2019

Credit: Nature Reviews Chemistry

 

パシフィックノースウェスト国立研究所の研究チームは、自然の触媒 - 酵素を模したバイオミメテイクスを使用して、可逆的合成触媒を設計した。研究チームは、モデルとして天然の金属酵素を使用して可逆的水素反応(酸化・還元)触媒を提案し、エネルギー損失を最小限に抑えながら高速で順方向および逆方向の反応を仲介する、エネルギー効率の高い電極触媒を設計した(Dutta et al., Nature Reviews Chemistry, 2, 244, 2019)。

 

具体的には、一連の分子状ニッケル触媒を開発し、酵素に触発されたアミノ酸を適切に配置することによって、水素の高速な酸化速度を維持することができた(下図)。

 

 

Credit: Nature Reviews Chemistry

 

足場タンパク質は、熱力学的および速度論的側面を調和させるので、酵素活性の効率に重要なアプローチとなる。これまでの触媒設計では活性部位以外の領域にはほとんど注意を払わずに、金属コアと金属周辺の直接の環境に焦点を当ててきた。研究チームは、非貴金属錯体を使用して高活性で効率的な合成触媒を開発するには、周囲の構造も含めた設計を目指している。

 

研究チームは現在、このアプローチを産業用途に必要な乾式燃料電池条件にまで拡張することに取り組んでいる。プロトタイプのバイオ燃料電池が実現すれば化学結合に貯蔵された再生可能エネルギーの出し入れのエネルギー損失がなくなることで、再生可能エネルギーのベース電源化が実現すると期待されている。

 

風力と太陽光が再生可能エネルギーの主力となるためには、それらが断続的に生み出すエネルギーを効率的に貯蔵し回収する必要がある(再生可能エネルギーのベース電源化)。エネルギー変換効率を高めて採算にのせるためには、可逆的触媒、すなわち化学結合を「どちらの方向にも」急速に形成しそして破壊する双方向触媒が必要になる。