ほぼ室温超伝導を示すランタン水素化物

16.01.2019

Photo: sciencesource.com

 

硫化水素(H2S)は200GPaの超高圧下で150Kの高温超伝導を示し、他の水素化物(PH3)も200GPaで100K台の転移温度が観測されて以来、高圧化の水素化物がBCS的な高温超伝導を示すことが明らかになった。ジョージワシントン大学の研究チームは、La水素化物の輸送物性を測定し、高圧下(200GPa以下)で室温に近い臨界温度(260K)のBCS超伝導を観測した(Somayazulu et al., Phys. Rev. Lett. 122, 027001, 2019

 

超伝導は電気抵抗の欠如であり、臨界温度以下に冷却されると多くの材料で観察される。これまで、超伝導材料は低温まで冷却する必要があったため、その用途は限られていた。1986年の高温超伝導発見以来、転移温度は経験的手法で上昇を続け、150Kに達したが最近はそれ以上の報告はなかった。

 

この発見にはふたつの鍵となる因子がある。①ひとつはH2Sから始まる金属水素化物の物質群に属していること、②次に非常に高い圧力下での測定であることである。研究チームはダイヤモンドアンビルセルで、ランタン水素化物を高圧をかけたのちにレーザー加熱し、LaH10という新しい構造への変化を観察した。この水素化物は計算で高温超伝導体になると予想されていた。

 

試料を高圧に保ちながら、研究チームは4端子法で輸送的性質の温度変化を測定した。彼らは、試料が180~200GPaの圧力で260 Kまで冷却されたときに抵抗率の著しい低下を測定した。その後の実験で、研究チームは280Kまでの温度で超伝導転移を確認した。結晶構造はAPS放射光を用いてX線回折によって決定された。

 

水素化物質あるいは超水素化物は加圧下でさらに高い転移温度、すなわち室温以上の転移温度を示す可能性があり、かつてUSO(Unidentified Supeconductor)と揶揄された室温超伝導体が現実のものとなろうとしている。