米FBIが警戒するバイオセキュリティ・リスク

01.04.2020

 

 海外の科学研究者が、申告されていない、あるいは証明書類がない生物物質を個人の手荷物の中に入れ米国に持ち込もうとする場合、米連邦捜査局(FBI)の大量破壊兵器担当局は、深刻なバイオセキュリティ・リスク事件とする。

 中国の武漢市で新型コロナウイルスの感染拡大が始まる1年前の2018年11月に、デトロイト・メトロポリタン空港の税関・国境警備員によって、「抗体」と書かれた試験ビン3本を荷物に入れ入国しようとした中国人生物学者が拘束された。中国の同僚に頼まれ米国の研究所に届ける予定であると申告した。だが、研究者はバイオセーフティレベル(BSL)4の施設でしか取り扱いができない病原体のMERSとSARSのウイルス株が入った試験ビンを運んでいたのである。

 

 この事件を明らかにしたFBIレポートは、中国人研究者による米国での研究活動に関する警戒を示した。バイオセーフティ・リスクとなる病原菌の不適切な扱いや持ち出しは、偶発的な流出、不適切な研究やバイオテロに使われる可能性があり、公共の安全が損なわれる危険性が高い。

 過去にも中国人科学者による同様な事件が報告されている。2018年5月に北京から米国に入国した際に、手荷物の中に大腸菌の染色体外遺伝子を含む遠沈管を違法に持ち込もうとした。2019年3月末には、カナダ国立微生物研究所に所属する中国人科学者2人がエボラ出血熱とニパウイルス感染症の生きたウイルスを北京の研究所に違法に持ち出した。2019年9月にも、デトロイト・メトロポリタン空港で、1933年のH1N1インフルエンザウイルス (A型)とH9N2鳥インフルエンザAの病原体が入った試験ビンが押収された。