連続するインドネシアの津波と海底地滑りの脅威

25.12.2018

Photo: irishtimes

 

インドネシア政府によると、12月22日、スンダ海峡に面するジャワ島やスマトラ島の沿岸で津波が発生し、222人の死者、28人の行方不明者を出した。この津波の特徴は地震が観測されなかったことで、海底の地滑りと高潮が引き起こしたもので、アナク・クラカタウ火山の活動によって海底で生じた地滑りが海面を上昇させて津波となった。リングオブファイアーの中でも特に注意が必要なアナク・クラカタウ火山の活性化が懸念されている。

 

 

Credit: cnn 

 

アナク・クラカタウ火山

津波を引き起こしたアナク・クラカタウ火山は、90年前の火山活動で海中から出現し、過去10年間にわたって噴火警戒レベルが続いていた。アナク・クラカタウとは "Child of Krakatoa"の意味で、6月から特に活動が活発化し、時折火山灰を吹き上げ、10月には観光船に噴火する火山から飛び出した岩石(冷えた溶岩)が降り注いだ。

 

アナク・クラカトアは1883年に噴火したクラカトアのカルデラに1928年頃に出現したことから"Child of Krakatoa"の名がついた。その後の溶岩流は、海底から小さな火山島へと成長し、円錐状の火山は海抜30mの高度に成長したが、成長は止まらず2~3年ごとに噴火が発生するにつれて大きくなっている。

 

1883年のクラカタウ火山の大噴火

この火山島はクーロン国立公園の一部で、クラカトア噴火以来の地質学的プロセスの進化を示す記念物としてユネスコ世界遺産に登録されている。1883年8月27日にクラカトア火山が噴火したときには3万6千人以上が犠牲になり、爆発によって空中に20km以上の高さに火山灰(注1)を吹き上げた。この大量の火山灰の雲がその地域を2日間覆い尽くし太陽光を反射して、地球の平均気温が1.2度Cも下がった(注2)。

 

(注1)火山灰の微粒子はその後何年もの間地球の気象パターンは乱され、農作物の収穫に影響を与えた。

(注2)ジオエンジニアリングという微粒子散布はこのときの地球冷却効果を人工的に起こそうというものである。

 

地震によって引き起こされた津波

9月18日にインドネシアのスラウェシ島のパルを襲った地震は1400人以上の犠牲者をだした。この地震ではM7.5の激しい揺れが、緩い土壌を液化させて海底(パル-コロ断層)の地滑りを引き起こしたことで被害が大きかったと考えられている。パル-コロ断層は片側を反対側に押し上げる推力断層とは異なり、両側が水平方向に互い違いに、年に30~40ミリメートルも移動し滑る横滑り断層である。

 

津波の規模が大きかった理由のひとつは、湾の形によって強められたと考えられている。

地震の震源は、主断層の北に位置していたが、横ずれ断層がどのように津波を引き起こしたかは解明されていない。しかしこの地域の急な山々は深海までつながっているため、それらの斜面が地震によって動いて、それが下図のように下方に滑り、大量の水を引き下げたことで津波を引き起こしたと考えられる。

 

 

Credit: abc 

 

リングオブファイアーの最危険地域

インドネシアは3つの大陸プレートの接合部に近接しているため、巨大な圧力によって、日本同様、地震や噴火に対して特に脆弱な地域として知られる。アナク・クラカタウ火山周辺には130近くもの活火山があり、太平洋のリングオブファイアーのなかでも最も活発な火山活動と考えられており、活発な断層と重なる危険地帯なのである。

 

リングオブファイアーは、日本から東南アジア、そして太平洋盆地に広がる激しい火山と地震活動の活発なベルトをつくっている。1883年の噴火はまさにカタストロフイであったため、この地域の火山活動の活発化であるならば、今後の噴火と津波に注意が必要である。

 

周辺海底の不安定さが浮き彫りになった今回の津波で、この地域の海底に潮汐計、地震計、位置計測システムや歪みゲージなどを配置したセンサネットワークを構築する必要性が認識された。インドネシアなどリングオブファイアー沿いの「危険地帯」にそのようなネットワークを構築し、得られたビッグデータのAI解析が災害予知に役立てて欲しい。