トランプ大統領の弾劾訴追とアメリカ政治の行方 Part 2

11.01.2020

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 2019年12月18日に米下院本会議で弾劾訴追決議案が可決したにも関わらず、未だに弾劾条項が上院に送付されていない。民主党のペロシ下院議長は、上院で弾劾裁判が下院の要求通りに進められるまで、また、民主党に有利な状況になるまで、送付を見合わせていた。だが民主党内と上院からの圧力で来週にも上院に弾劾条項が送付されることになった。

 大統領の弾劾訴追を巡り、合衆国憲法では下院と上院の役割を明確に分けている。下院は弾劾の罪状について調査・起訴する「弾劾の権限を専有する」役割を果たす。そのため、下院は上院での弾劾裁判の条件を要求することはできないことから、下院で可決された弾劾訴追決議案は直ちに上院に送付しなければならない。

 上院は弾劾条項について「すべての弾劾を審判する権限を専有する」役割を持つ。弾劾条項を巡り、裁判を行って有罪か無罪かの判決を下す。有罪判決には上院3分の2の賛成が必要となる。現在の上院の定数は100議席で、そのうち共和党は53席の多数を占めているため、トランプ大統領が有罪となる可能性はないといえる。上院の有罪判決がない限り、トランプ大統領は大統領弾劾されたことにはならないのである。

2020年大統領選への影響
 下院の民主党が弾劾条項を上院に送付するのを政治的戦略として遅らせたことで、この間弾劾に反対する共和党における団結は強化された。弾劾条項を受け取ったうえで、上院での弾劾裁判は早くても来週から始まる予定となる。

 弾劾裁判の開始で、上院の民主党から5人の大統領選候補者がいるため、2020年の大統領選に大きく影響を与えることが予想される。上院での弾劾裁判とその後の判決に出席しなければならない5人の民主党候補者は2月3日のアイオワ州と11日のニューハンプシャー州に予定されている民主党大統領予備選に向けての選挙活動ができなくなくなり、影響を受けることになる。

 上院に弾劾条項の送付が来週見送られた場合、上院でトランプ大統領への罪状を不起訴とすることが検討されている。トランプ大統領の早急の退任を求めて始めた弾劾訴追だが、皮肉にも民主党の自爆行為となる可能性がある。