中東で危機感が高まるイランとイラク

17.03.2020

 

 中東のイランでは新型コロナウイルス(病名COVID-19、ウイルス名SARS-Co-2)の拡大に歯止めがかからない。イラクでは難民キャンプで最初の感染者が確認され、感染が広がると人道的危機が起きることが懸念されている。

イラン
 2月19日にイランのイスラム教のシーア派聖地の一つであるコムで始めて感染者が確認されて以来、感染者はイラン全土で拡大している。テヘランを始め、「レッドゾーン」となっているイラン北部は、感染者の指数関数的な増加が続いている。

 イランの健康省によると、16日時点で感染者は前日より1053人増え1万4991人、死亡者は前日より129人増えて853人に達したと発表。これは、中東では最多であり、世界では、中国、イタリアに続く感染者数である。中東のカタール(337人)、バーレーン(212人)、エジプト(126人)、イラク(124人)、サウジアラビア(118人)、クウェート(112人)だけでなく、アフリカ諸国にまで広げた感染源である。

 中国人労働者が武漢からイランへ帰国後に発症、感染はコムを訪れていた巡礼者や観光客の間で広がっていった。巡礼に参加した多くの政権上層部にも感染が広がっている。最高指導者ハメネイ師の側近とバチカン大使が死亡、副大統領や国会議員23人以上の感染も確認されている。感染力は強く、重症化・致死率が極めて高い。

 感染者の拡大の原因は、2月11日にイラン革命から41年記念式典や2月21日の議会選挙への影響を最小限にするため、政府が新型コロナウイルスの感染拡大の深刻さを国民に伝えなかったことにある。感染流行の初期対応がないまま、国民の健康より体制の維持を優先した政治的決断によって感染が拡大したと思われる。

イラク
 2月24日にイラクで最初の感染者が確認されてから、感染者数は133人、死亡者26人(16日時点)まで増えている。最も恐れていた国内避難民キャンプでの感染者も、10日に始めて国連人道問題調整事務所(OCHA)によって確認された。シリアとトルコの国境近くにあるニーナワー避難民キャンプで確認されたため、地域で緊張が高まっている。

 武力戦争がなおも続いているイラクでは、約100万人以上の国内難民が健康管理、衛生環境や生活環境が悪い難民キャンプで生活を送っている。このような環境で感染が拡大すれば、キャンプ内で「壊滅的」な状況が予想され、中東での爆発的な感染拡大が懸念される。WHOを先頭に感染の封じ込めに全力を尽くし、パンデミックを阻止することを願う。