中国依存により浮き彫りとなった脅威

17.02.2020

 

 新型コロナウイルス(Covid-19)の世界的な感染拡大を受け、中国の製造業に依存している状況の危険性・リスクが浮き彫りになった。中国で製造されている消費財、工業製品以外に、レアメタルなどの資源や化学品・医薬品などの原料供給を中国に依存していることが、今後感染状況が改善されなければ深刻な不足状態を招く可能性が高い。

 

 現在、中国における輸出品の製造の90%以上は工場操業が停止しているため、中国中心のグローバルサプライチェーンに大きな影響がでている。今後中国以外の国でも感染拡大が予想されているなか、化学品・医薬品又これらを製造するための原料の不足状況が深刻な影響を及ぼすことが懸念されている。

医療体制崩壊の危機
 中国は世界の医療用品、医薬品と医薬品原料の主要輸出国である。世界最大のジェネリック医薬品の供給国であるインドでさえ、その主要な原料の80%以上が中国からの輸入品である。

 中国への深刻な依存で、サプライチェーン停止により最も医療体制の崩壊の危険性が高いのは米国である。米国における全ての抗生物質の97%、米国で医薬品を生産するための原料の80%は中国からの輸入である。

 ペニシリン、イブプロフェン(非ステロイド系消炎鎮痛剤)、アスピリン、フェンタニル、プロポフォール(全身麻酔薬や鎮痛剤に用いられる化合物)、ガン治療薬、抗うつ薬、HIV薬、高血圧薬、糖尿病薬、ビタミン剤など、一般的に使われている医薬品や医薬品を製造するための原料は、ほとんど全て中国輸入に依存している。さらに、医療現場で使用されているサージカルマスクや手袋、手術衣などの医療用品もほとんど中国輸入である。

 米国では、40%以上の医薬品がジェネリックで、その割合が増加しているなか、ジェネリック医薬品の製造が5~10年後には米国から完全になくなるとも言われている。米国は主にインドからの輸入に依存しているが、インドは医薬品原料を中国からの輸入に依存している。そのインドも中国のジェネリック医薬品会社に追い抜かれ、中国が世界最大の供給国となるのは時間の問題とされている。

 

日本も例外ではない
 日本も医療用品・医薬品や医薬品製造の原料を中国輸入に依存している。漢方製剤を含む医薬品の製造に使われている原料の約80%は中国輸入である。日本国内で調達できる割合は12%に過ぎず、中国の原料供給に依存している。

 化学品、医療用品、医薬品、医薬原料の供給に依存していることで、供給の中断状況が長期化すれば、医療体制における問題が深刻化しかねない。国民の健康と安全に関わる医療分野の中国依存度を減らす方策は今後重要となる。

 新型コロナウイルスの拡大が懸念されているなかで、中国依存によるリスクが明らかとなった。企業が底コストを追求し過ぎた結果、中国が世界の製造業の中心となり、自国の製造業は空洞化し、中国サプライチェーンに依存する体制ができあがった。今回の新型コロナウイルスパンデミックで中国との貿易が停止し、この中国依存体制が自国の経済だけでなく、国民の健康や国家安全保障上の脅威になりえる可能性が高いことが明確となった。