E  N  E  R  G  Y

石炭火力は大気汚染のホットスポット

ドイツが2038年までにドイツの電力の40%近くを供給している石炭火力発電全廃、英国も2025年までに石炭燃料を完全に廃止予定である。世界中に広がる脱石炭火力の動きの背景には脱炭素以外の要因があることがわかった。ETHチューリッヒの研究で、石炭火力発電所は炭素排出以上に、有害物質を大気中に拡散するホットスポットとなっている実態が明らかになった。

再生可能エネルギーがメインストリームとなる時代

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査報告書は再生可能エネルギー源の急速な成長と化石燃料の消滅は、世界の政治に大きな変化を引き起こし、世界的な権力配分、国家間の関係、紛争のリスク、および地政学的不安定の社会的、経済的、環境的要因となっていることを明らかにした。

大気中のCO2還元触媒はエネルギー危機の救世主となるか

ハーバード大学のローランド研究所の研究チームは、再生可能エネルギー(電力)を使ってCO2COに還元技術を高度化し実用化システムを開発した(Zheng et al., Joule online Nov. 08, 2018。研究チームが開発したシステムは石炭火力発電所やCO2を多く生産する他の産業と接続すれば、排出されるガスの約20%にあたるCO2を原料として、廃棄物からカーボンニュートラル燃料や化学物質を生産することができる

光ガルヴアニ効果でペロブスカイト物質の特性を向上

22%のエネルギー変換効率に達した鉛ペロブスカイトは、太陽電池材料やスピンエレクトロニクス材料として注目されている。フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲンFAU)の研究チームは、スピン偏極ベクトルと電流の方向の相関を実証し、これを利用してキャリア寿命を増大しエネルギー変換効率がさらに改善できる可能性を示した(Niesner et al., PNAS 18, 9509, 2018)。

CO2からの燃料製造にブレークスルー

コロンビア大学の研究チームは、表面増強ラマン分光法(SERS)を用いて、電極 - 電解質界面でCO2が活性化されるプロセスを調べ、太陽エネルギーでCO2から燃料を製造する(人工光合成)触媒設計を試行錯誤のパラダイムから合理的なアプローチにシフトさせ、代替可能で安価で安全かつ貯蔵可能な再生可能エネルギー普及につながる技術を開発した(Chernyshova et al., PNAS online Aug. 17, 2018。

人工光合成が実用化に前進

先進国では総じて原発の新規建設は困難で、発電と供給能力を大幅に引き上げなければEV化は現実的ではない。環境保全と安全性において理想的なクリーンエネルギー源は植物の光合成メカニズムを模倣した人工光合成である。エネルギー変換効率が低いため実用化は困難とされて来たが、最近の進歩で人工光合成のエネルギー変換効率が向上して、着実に実用化に近づいている。

燃料電池用の非白金系単原子触媒

ワシントン州立大学の研究チームは、燃料電池用に低コストの単原子触媒を開発する指針を確立した。これは単原子触媒の効率的な開発を可能にし、クリーンエネルギー技術をより経済的に推進できると期待される。

ドイツの送電網が増強される理由

現在のドイツの送電網の長さは約35,000kmである。再生可能エネルギー源から発生する電力を必要な場所に送電するために、約5,300kmの送電網延長が必要である。カールスルーエ工科大学(KIT)と送電網を管理する企業(TenneT)は、従来の短距離送電網の電源ケーブルの代替として超伝導技術のR&Dを共同で開始した。

光合成のエネルギー効率が過小評価される理由

カリフォルニア大学デービス校の研究チームの新しい研究は意外にも、光呼吸がエネルギーを無駄にせず、土壌から吸収された硝酸塩をタンパク質に変換する硝酸塩同化を促進することを示唆している(Bloom and Lancaster, Nature Plants online July, 02, 2018)。

貴金属を使わない水分解触媒

水分解で水素と酸素を生成するためには外部エネルギーと1つは水素生成反応、もう1つは酸素生成反応のための2種類の触媒が必要となる。新型触媒は鉄と二リン酸ニッケルを用いることで、外部エネルギー(電力)量を低く、水素生成の指標である高電流密度を達成した(Yu et al., Nature Comm. 9:2551, 2018)。

電気化学が切り札となる炭素捕捉テクノロジー

ローレンス・リバモア国立研究所の研究チームは、大気からCO2を吸収して溶液中に保持するために鉱物との化学反応と組み合わせて、電気分解で水素を製造するアプローチに着目して、電気化学的手法が炭素捕捉の本命となるとする論文を発表した(Rau et al., Nature Climate Change online June 25, 2018。

人工光合成ダイオードによる水素製造の将来性

水素は最もクリーンな燃料であり、唯一の排出物は水だけである。しかし、水素の製造は大量のエネルギーを必要とするため、環境に優しいわけではない。従来の製造方法は、天然ガスまたは電力を必要とする。ミシガン大学の研究チームは太陽エネルギーで水分解を行う新しい人工光合成デバイスを開発した(Chowdhury et al., Nature Comm. 9:1707, 2018)。

低コストの水素発生触媒ペントランダイト

ペントランダイト(硫鉄ニッケル鉱)(Fe,Ni)9S8はニッケル原料として豊富な埋蔵量であるため、貴金属を使用しない低コストの水素発生触媒として期待されている。ルール大学の研究チームはFe4.5Ni4.5S8の(111)面の走査型電気化学セル顕微鏡を用いて、水素発生効率が表面組成に強く依存することを見出した。

再生可能エネルギーの覇権を握る特定資源国とは

かつてのエネルギー資源大国といえば、石炭、石油そして天然ガスを大量に生産し輸出する国々であった。2050年以降とされる化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が完了する未来で、覇権を握る再生可能エネルギー大国はどの国なのだろうか。地球上に溢れる再生可能エネルギーだが、利用するには設備投資と特定資源の確保が鍵となる

新型電解質でEVの航続距離が飛躍的に向上

次世代のLiイオンバッテリーには電極の安定化による性能と寿命の向上が課題となる。パシフィック・ノースウェスト国立研究所の研究チームは新しい高濃度電解質により、Liイオンバッテリーの充電量が7倍に向上し寿命が向上することを見出した(Chen et al., Advanced Materials online Mar. 25, 2018)。

タンデムセル化で次世代太陽電池を目指すペロブスカイト

太陽電池の主流であったシリコンにエネルギー変換効率で肩を並べるペロブスカイトはコストを含めて、伸び悩む太陽エネルギー利用の救世主と期待されている。ケンブリッジ大学の研究チームはカリウムを添加することで、ペロブスカイト太陽電池のエネルギー変換効率が増大し次世代太陽電池の主流となる可能性が高まった(Abdi-Jalebi et al., Nature 555, 497, 2018)。

再生可能エネルギー比率100%への挑戦

2050年に再生可能エネルギー比率が100%になるかどうかについては意見の分かれるところで、スタンフォード大学の研究チームは2050年までにエネルギー再生可能エネルギー依存を100%とするロードマップを作成したが、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、2050年に再生可能エネルギー比率100%となる予想は楽観的と考えている(Heuberger and Mac Dowell, Joule online Feb. 26, 2018)。

再生可能エネルギー源となる自然蒸発

コロンビア大学の研究グループは再生可能エネルギーとして初めて湖や貯水池の水の自然蒸発を評価した結果、全米の消費電力の70%に相当する325GWの発電能力を持つことがわかった(Cavusoglu et al., Nature Comm. 8:617, 2017)。

新型触媒で燃料電池製造コストが1/100に

カリフォルニア大学リバーサイド校の研究チームは水素を燃料とした高分子電解質膜燃料電池(PEMFC)の貴金属フリー触媒を開発した。白金書屋バイト同等の性能でありながら製造コストが1/100になる新型触媒の登場でFCVや蓄電・発電デバイスの本格的な普及が加速すると期待されている(Tang et al., Small online Jan. 22, 2018)。

炭素系ナノ物質は燃料電池の正極材料に最適

Liイオンバッテリーの正極材料研究開発で実績のあるライス大学の研究グループは燃料電池の酸素還元触媒である白金の代替えとしてグラファイトN(B)ドープのカーボンナノチューブあるいはグラフェンナノリボンなどの炭素系ナノ物質が最適であるとする研究結果を発表した(Zou et al., Nanoscale, 2017)。

化学ループによる化石燃料からのシンガス製造

オハイオ州立大学の研究チームは効率よく化石燃料とバイオマスを電気や工業的に有用な人工燃料(シンガス)に変換するクリーンな技術の研究開発を行っている。CO2を使いシェールガスからメタノールと軽油に変換するこの手法は原料のシェールガスの代わりに石炭やバイオマスを用いることもできる(Kathe et al., Energy & Environmental Science, 6, 2017)。

脱合金ナノポーラス水分解触媒~水素社会へ向けて前進

クリーンエネルギーの一翼を担う燃料電池の燃料として水素は天然ガス(メタン)の水蒸気改質法に代わる新製造技術が模索されている。太陽エネルギーと触媒を用いる水分解反応は環境保全の点で理想的な水素製造法であるため、そのエネルギー効率を高める触媒開発が精力的に行われている。アルゴンヌ国立研究所の研究グループは最新の研究で、高性能の水分解触媒を開発した(Kim et al., Nature Comm. 8:1449, 2017)。

アゾベンゼンベースの光熱電池が高エネルギー密度達成

マサチューセッツ・アマースト大学の研究グループはアゾベンゼンをベースとした高分子電解質を用いた光熱電池でエネルギー密度~510J/g(最大698J/g)を達成した。研究グループはエネルギー密度に電解質溶液前処理と高分子薄膜のモルフォロジーが重要であることを明らかにした(Pyo et al., Nature Scientific Reports 7:17773, 2017)。

セパレータレス水分解による海上水素製造

コロンビア・エンジニアリングの研究グループは研究グループは海上に巨大な太陽電池パネルを浮かべ海水を電解質として水分解を行うことで、大規模な純水素(99%)製造が可能であることを示した。(Davis et al., Int. J. Hydrogen Energy online Dec. 15, 2017)。鍵となるのは水素と酸素を分離回収できる電極構造である。

ワン・プラネット・サミットはエネルギー・セクターのビルダーバーグか

新首相の元で環境対策に熱心なパリ議定書の議長国であるフランスは、12月12日から、再びパリで気候変動の対策を議題とするワン・プラネット・サミットを開催している。会議では化石燃料から脱却したグリーンエネルギー化のために、国境を超えて取り組もうという趣旨の元で、分野ごとに対策が協議された。

酷寒でも高性能なLiイオンバッテリー

氷点下の気温ではLiイオンバッテリーの蓄電量が低下する。これは寒冷地のEVにとっては致命的な問題となる。中国の復旦大学の研究者グループは寒冷地に強い前リチウム化炭素陰極とLiイオンを含む陽極を開発した(Liu et al., Angewandte online Nov. 30, 2017)。新たに改良した前リチウム化炭素陰極の採用で低温でもインターカレーションが妨げられない特徴を持つ。

トランプ政権の予算削減でITER建設に遅れ

トランプ政権は2017-2018年度予算を1.05億ドルから5,000万ドルへ50%削減、2018年度は1.2億ドルから6,300万ドルに削減した。ITER参加国には10年間の建設期間中の脱退は認められていない。また負担金に大幅な縮小があると建設に遅れが生じ、予定期間に完成しない恐れがあることから、ITER側は米国に当初計画通りの負担額を要求している。

低炭素電力の環境負荷~2050未来予測

ポツダム気候影響研究所の研究グループは長期サイクルでみた化石燃料と非化石燃料の温室ガス排気のライフサイクルアセスメント(環境影響評価)を行った。研究グループはエネルギー、経済、土地、消費、気候への影響を統合したグローバルモデルを構築して、未来社会の低炭素電力システムに関する環境影響評価の結果を公表した(Pehli et al., Nature Energy 2, 939, 2017)。

生物を模倣したエネルギー変換触媒

パシフィックノースウェスト国立研究所の研究チームは、自然の触媒 - 酵素を模したバイオミメテイクスを使用して、可逆的合成触媒を設計した。研究チームは、モデルとして天然の金属酵素を使用して可逆的水素反応(酸化・還元)触媒を提案し。、エネルギー損失を最小限に抑えながら高速で順方向および逆方向の反応を仲介する、エネルギー効率の高い電極触媒を設計した(Dutta et al., Nature Reviews Chemistry, 2, 244, 2019)。

採算性をクリアした水素エネルギー製造コスト

水素経済や水素エネルギーという新技術へのアレルギーが強い日本では、採算性を根拠に実用化はあり得ないとする短絡的な記事が目立つ。しかしNIMS、東京大学、広島大学の共同研究チームが、太陽光発電と二次電池を組み合わせた水素製造システムの経済性を評価した結果、水素製造システムが世界規模で競争力のあるコストで水素を製造するレベルに到達し再生可能エネルギーを水素転換し貯蔵すれば、ベース電源とすることができることが明らかになった。(Kikuchi et al., Int. J. of Hydrogen Energy 44, 1451, 2019)。

BPエネルギー経済予想2019~不確実性の時代

炭素排出を大義名分として、欧州諸国で急速な脱化石燃料政策の動きが活発化しているなかで、化石燃料企業の代表格といえるBPのエネルギー予測2019年版が公開された。低炭素未来への迅速な移行の必要性を認めつつ、増大するエネルギー需要との板挟みによって、2040年までの世界のエネルギー市場の不確実性を強調したBPエネルギー予測は、世界が直面している相反する要求の両立というジレンマを浮き彫りにした。

いますぐ実行可能な人工光合成の実用化

人工葉の目的は大気中のCO2を取り込み、水を分解して水素を製造するものと、CO2を還元してCOなどの有機原材料や液体燃料の製造を目指すものに大別される。後者は大気中のCO2削減につながるが、純粋なCO2を使用するため、実用化(スケーリング)は難しかったが、イリノイ大学の研究チームは人工葉を自然環境に持ち込む実用化の目処をつけたPrajapati and Singh, Sustainable Chemistry & Engineering online Feb. 5, 2019。

水から水素を製造する時代が確実にやってくる

炭素を含まない燃料で駆動される未来は、太陽光や風などの再生可能だが断続的なエネルギー源からのエネルギーを利用して蓄える未来でもある。将来的にはエネルギーは万人に開放され、誰でもエネルギーを使い放題できる社会が実現するのは夢物話ではない。トロント工科大学の研究チームは水から水素を生成する低コストのマルチサイト触媒を開発したことで貯蔵できるクリーンエネルギーに一歩近ずいた(Dinh et al., Nature Energy online Dec. 10, 2018).

MITが提案する再生可能エネルギー貯蔵

MITの研究チームは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを貯蔵し、そのエネルギーを必要に応じて電力網に送り返すシステムの概念を提案した。このシステムにより、太陽光発電が稼働する日中や、風力発電に十分な風が強いときだけでなく、24時間いつでも電力を供給するようになれば、再生可能エネルギーを主電源とすることができると期待される。

有機系太陽電池で世界最高効率を達成

エアランゲン大学(FAU)の材料科学研究チームは、有機(非フラーレン)ベースの単接合太陽電池の世界最高効率を達成した。分子構造の最適化で、1平方センチメートルの表面積で12.25%のエネルギー変換効率を達成した(Fan et al., Nature Energy online Oct. 22, 2018)。

実用化が近づく放射冷却原理の水冷システム

コロラド大学ボールダー校とワイオミング大学の研究チームは、放射冷却で昼夜連続で稼働する水冷システムを実用化した。これによって夏期の発電プラントの負荷を減らし、家庭、企業、公益事業および産業への効率的で、環境にやさしい温度制御が可能になると期待される(Zhao et al., Joule online Oct. 26, 2018)。

深海設置型洋上風力発電の将来性

海底に固定されたオフショア風力タービンは、海底面深度の制約を受け、比較的浅い沿岸域でのみ使用できる。これに対し浮動式海洋プラットフォームは、ほとんどの海洋環境に建設され設置できる可能性がある。海洋生物にとってより環境にやさしく建設コストの安い風力発電の潜在的な発電能力は高いが、沖合の深海部への設置で発電能力が数倍高まり、再生可能エネルギー転換が加速される。

バイオマスがカーボンニュートラルでない理由

ジョン・デチコ(John DeCicco)教授を中心とした研究チームは、森林や草原のような未踏の緑地は、二酸化炭素を封じ込めることで温室効果ガス(炭素)サイクルに重要な貢献をしているとして、バイオマスとして植物を大量に消費する政策の危険性に警鐘を鳴らしている(DeCicco and Schlesinger, PNAS 115, 9642, 2018)。

高効率酸素発生(OER)触媒

水中の酸素と水素の結合を壊すすなわち水分解は、持続可能な方法で水素を作り出すキーテクノロジーとなるが、経済的な実用技術には至っていない。イリノイ大学の研究者チームは、金属化合物と過塩素酸という物質を混合した電極触媒材料を用いた酸素発生の新型触媒を開発した。

2段階電気化学還元でCO2から燃料製造

デラウェア州立大学触媒科学技術センターの研究チームは、二酸化炭素(CO2)の電気分解効率を上げるための新たな2段階プロセスを発見した。これによって空気中のCO2を還元して液体燃料製造技術の実用化につながると期待されている(Jouny et al., Nature Catalysis online Aug. 20, 2018)。

水素社会化を加速する欧州

欧州では新規原子炉建設の遅れやドイツの脱原発とデイーゼルゲート問題に後押しされ、水素社会を目指す動きが加速しつつある。25カ国からのエネルギー関係者は、水素技術の研究を増やし、工場に電力を供給し、自動車を運転し、家を暖めるための日常的な水素利用を加速することに合意した(AP)。欧州諸国は、欧州の炭素排出を削減するために、化石燃料の代替として水素の使用を増やす計画を支持している。

可視光の85%を吸収する光電極

北海道大学電子科学研究所の研究チームは、従来の方法の11倍の光エネルギーを変換する、金および金ナノ粒子層と30ナノメートルの半導体薄膜の多層構造で可視光の85%を吸収する光電極を開発した(Shi et al., Nature Nanotechnology online July 30, 2018)。

クーロン効率100%の高エネルギー密度Li・酸素バッテリー

Liイオンバッテリーの高エネルギー密度化を目指して、空気中の酸素と化学反応してエネルギーを生成するLi・酸素バッテリー(リチウム空気バッテリー)の開発が世界中で競争的に進められている。ワーテルロー大学の研究チームは、リチウム - 酸素バッテリーの最も困難な問題の中の2つを解決し、ほぼ100%クーロン効率(充放電効率)で動作する高エネルギー密度のLi・酸素バッテリーの開発に成功した(Xia et al., Scence 361, 777, 2018)

新型光触媒として期待される2次元物質ヘマテン

ブラジルのカンピナス大学の研究チームは通常の鉄鉱石からヘマテンと呼ばれる2次元物質を抽出した。この材料は3原子層分の厚みで、優れた光触媒特性を有している(Balan et al., Nature Nanotechnology 13, 602, 2018)。

複合金ナノ粒子で効率化する水分解

ルトガー大学の研究チームは半導体でコーティングされた星型の金ナノ粒子(下図)が、他の方法よりも4倍以上効率的に水分解で水素を生成することができることを明らかにした(Atta et al., Chem, online July 12, 2018)。これにより太陽エネルギーの貯蔵効率が向上し、再生可能エネルギーの利用促進につながると期待されている。

米国の原子力時代の終焉

カーネギーメロン大学の研究チームは最新の論文で、現在の米国内の原子力発電所を調査した結果を発表した。この30年間米国発電の約20%が原子力によるが、これらの原子炉は老朽化しており、低コストの天然ガスとの競争とともにそれらを維持するコストは、今日の電力市場において競争力を喪失し原子力の未来は悲観的である(Morgan et al., PNAS online July 2, 2018)。

原発閉鎖でも上がらない電気料金の理由

現在閉鎖されている米国の2箇所の原発の影響を詳しく調べた結果、卸売エネルギー価格が3年間で毎年4~10%上昇すると予想されたが、天然ガスに置き換えると、卸売エネルギー価格は毎年9%から24%低下すると予測された。このことは天然ガスの市場価格が低く維持される限り、卸売エネルギーコスト削減が大きいことを意味している。

人工光合成に最適な材料ハライドダブル・ペロブスカイト

人工光合成(光触媒による水分解)によって、太陽光で水を水素と酸素に分離することができる。オックスフォード大学の研究チームは、新しいタイプの物質 - ハロゲン化物ダブル・ペロブスカイトが、水分解の光触媒として有力な材料であることを示した(Volonakis et al., Appl. Phys. Lett. 112, 243901, 2018)。

EUが2030年までの再生可能エネルギー比率目標を設定

EUは風力、太陽光、その他の再生可能エネルギー源からのエネルギー(消費)比率の目標を引き上げることで合意し、前回の27%ではなく2030年までに32%を目標とした。

天然ガスに30%水素添加で減らせるCO2排出

スワンシー大学の研究チームの調査によると、英国の家庭や企業に供給する天然ガスのほぼ3分の1は、ゼロエミッションの水素で置き換えることができて、これで英国のCO2排出を最大18%削減できる可能性があるとしている(Jones et al., Sustainable Energy & Fuels, online issue 4, 2018)

大気中の炭素から燃料を製造する時代

夢物語に聞こえるかしれないが、近い将来、我々が購入するガソリンは、地面から汲み上げられた化石燃料ではなく、大気中のCO2から製造されたものになる。排出されたCO2を大気から抽出して、新しい燃料に変えることで、既存車とインフラをそのままにしたカーボンニュートラル化が実現すると期待されている(Keith et al., Joule online June 07, 2018

世界初のゼロエミッション火力発電所

ネットパワー社(NET Power.LLC)は最近、カーボンキャプチャ技術を使用することなく、炭素排出のない新しい種類の天然ガス発電所のガスタービンの試運転に成功した。テキサス州ラ・ポルに設置された新型火力発電所は、東芝が開発した超臨界CO2サイクル発電システムで、化石燃料を用いながらゼロエミッションで発電することが可能であることを実証した。

垂直配列液晶分子膜による高性能スーパーキャパシタ

ドレクセル大学の研究チームは、どう大学が2011年に発見したエネルギー貯蔵機能を持つMXeneシートの自己集合現象に注目した。機能性2Dナノマテリアルの電極膜は、迅速なイオン輸送と市販の炭素電極と同等以上の電荷蓄積性能を持つことを明らかにした(Xia et al., Nature 557, 409, 2018

バッテリーの秒速チャージを可能にする3Dナノアーキテクチャ

コーネル大学の研究チームは、この要求に応えるために、秒速チャージの可能性を秘めたエネルギー貯蔵システムを開発している。そのアイデアとはバッテリーのアノードとカソードを非導電性セパレータの両側に配置する代わりに、エネルギー貯蔵に必要な数千個のナノ孔を有する自己組織化3Dナノ構造を相互に連結するものである。

空中炭素固定よる液体燃料製造に新展開

光合成では太陽エネルギーが植物の葉に当たると、それは葉緑素中の電子を励起し、励起された電子は最終的にCO2と水をグルコースに変換する。この化学反応では多電子反応が鍵となる。イリノイ大学の研究チームは、1電子反応よりもエネルギー効率が悪いとされボトルネックとなっていた2電子化学反応を促進する触媒を開発した。

単原子触媒設計の一般則

電気化学反応のための高活性単一原子触媒の開発は、水素製造を基盤とする将来の再生可能エネルギー技術の鍵である。ネブラスカ大学と中国の国際研究チームは、研究チームは酸素還元、酸素発生および水素発生反応に対するグラフェンベースの単原子触媒の活性を評価する非経験的デザインルールを提案した(Xu et al. Nature Catalysts 1, 339, 2018)。

日本近海で発見された1600万トンの希土類資源

希土類金属を含む磁性体でつくる高性能磁石は付加価値の高い輸出製品である。日本は希土類金属消費量で世界2位だが、原材料を中国からの輸入に大きく依存している。希土類に頼らない磁性体の研究も加速している中、早稲田大学の研究チームの研究で最近日本周辺に半永久的に世界的な需要を満たすのに十分な量の希土類が埋蔵されていることがわかった。

光格子緩和で効率が増大するペロブスカイト太陽電池

これまでの太陽電池材料のほとんどは太陽光照射下でエネルギー変換効率が劣化する経年変化の問題を抱えていた。これに対してエネルギー変換効率でシリコンに迫る勢いのペロブスカイト材料では、逆に太陽光照射で逆に効率が向上する。ロスアラモス国立研究所の研究チームは長時間照射によって、格子緩和が生じるため格子歪が取り除かれ、エネルギー変換効率を増大させることを見出した(Tsai et al., Science 360, 6384, 2018)。

グラフェン酸化物で進展するLi金属バッテリーの電極問題

エネルギー密度で圧倒的に優位な第三世代LiイオンバッテリーとなるLi金属バッテリーだが、10倍高い容量となる代償(致命的な欠点)は、充放電サイクルと共に電極に移動する際の金属Liの不均一な成長で、この電極問題のために実用化されていない。イリノイ大学の研究チームはこの問題をグラフェン酸化物ナノシートを電極間に挿入することで、金属Liの平坦化を実現した(Foroozan et al., Advanced Functional Materials online Feb. 07, 2018)。

ホワイトグラフェン(BNナノ構造体)による水素貯蔵

単位重さあたりの貯蔵エネルギー量が化石燃料を圧倒する水素は、再生可能エネルギーを貯蔵する有望な化学物質である。ライス大学の研究チームはホワイトグラフェン(h-BN極薄膜)層が5.2Å離れて積み重なったナノ構造体が理想的な水素を貯蔵物質となることを明らかにした(Sakhavand and Zhao, Small Online 1Mar. 08, 2018)。

ペロブスカイト太陽電池の効率が21.6%に

スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究グループはルビジウムを添加した新しいペロブスカイト材料で世界最高のエネルギー変換効率を達成した。同時に、これまでペロブスカイト材料の弱点であった熱安定性を克服し、高温でも安定な出力を維持できる新型ペロブスカイト太陽電池の開発に成功した(Sakiba et al., Science 354, 206, 2017)。

世界139カ国を再生可能エネルギー比率100%にするロードマップ

再生可能エネルギーを主要な電源とするには様々な問題が累積している。その中でも不安定な出力はベース電源となり得ないとされて来た。最新の研究でスタンフォード大学を中心とする研究チームは、再生可能エネルギーで世界20地域139カ国の電力需要を賄えると主張、そのための手法を発表した(Jacobson et al., Renewable Energy online Feb. 3, 2018)

経済的持続性が低すぎるシェールガス発電

マンチェスター大学の研究チームの最新の研究ではシェールガスは持続性に問題があるため、未来を託すことはできないことが明らかにされた。研究結果はシェールガス発電は9種類のエネルギー源の選択肢の中でも7番目と、もっとも適さない部類に入ることを示した(Cooper et al., Sci. of The Total Env.ironments 619-620, 804, 2018)。

窓型太陽電池でエネルギー自給する未来住宅

ケンブリッジ大学の研究グループは窓ガラスに色素増感型太陽電池を取り付けて発電する新しい概念の太陽光パネルを開発した。研究グループの提案する住宅の窓ガラス太陽光パネルは、色素増感型太陽電池の世界最高効率(14.3%)で、送電網への依存度が低い持続的なエネルギー供給が可能になるとして、未来都市のエネルギー問題の解決に役立つと期待されている(Zhang et al., J. Mat. Chem. A 37, 2017)。

ペロブスカイト膜(ITM)で排出炭素から燃料を製造

MITの研究グループはLCF-91と呼ばれるLa、Ca、Fe酸化物を含むペロブスカイト(

La0.9Ca0.1FeO3-δ)膜に火力発電所から排出されるCO2ガスを通してCOとし、水素化して炭化水素としたり、水と反応させてアルコールとして炭素軽減とカーボンニュートラル燃料に使う一石二鳥となる秘術を開発した(Wu et al., ChemSusChem online Nov. 4, 2017)。