実用化が近づく放射冷却原理の水冷システム

29.10.2018

Credit: Yang Lab / University of Colorado Boulder

 

コロラド大学ボールダー校とワイオミング大学の研究チームは、放射冷却で昼夜連続で稼働する水冷システムを実用化した。これによって夏期の発電プラントの負荷を減らし、家庭、企業、公益事業および産業への効率的で、環境にやさしい温度制御が可能になると期待されている(Zhao et al., Joule online Oct. 26, 2018

 

研究チームは2017年に低コストのハイブリッド有機・無機放射冷却メタマテリアルを開発し、屋根に適合するようにスケールアップした。

地球は日中に吸収された熱によって暖まり、冷たい宇宙に赤外線を常に放射しているた。太陽の光がない夜間はこの原理でさらに地球は冷却される。研究チームが開発した素材は、ほとんどすべての太陽光を反射し、蓄熱を可能な限り避けながら、真夏の太陽の時でも周囲の空気よりも冷たく保つことができる。

 

この材料は低コストで生産できるので、屋上もしくは屋根に設置し、大規模な水冷システムを構築することができる。これは大量の電力を必要とする従来の空調システムに比べて大きな利点がある。

 

研究チームは、正午の照射条件で水を周囲より10.6℃以下に冷却するテストモジュールを風、降水量、湿度などのさまざまな気象条件で屋外でシステムをテストした。次に、13.5m2(表面積)のキロワット(kW)規模のシステムを製作し、夜間に1,296Wの最大冷却能力、平均冷却能力607W を得た。

 

建物一体型システムでは、水などの伝熱流体を介して冷気を取り込み、翌日に取り出すことで、需要のピーク時の冷却負荷を軽減することができる。モジュール化すれば、戸建て住宅、企業、発電所、地方自治体およびデータセンターの補完的な冷却としても使うことができる。

 

電力依存の冷房に抵抗のなかった米国だが、省エネルギーに目を向けることになったのは、環境保全(排気ガス規制)とともに、エネルギー効率意識が高まる経済的な要因も大きいのだろう。特に財政難が深刻化している地方行政では、公共施設の省エネ対策が不可欠になっている。