人工光合成が実用化に前進

04.09.2018

Credit: Katarzyna Sokól

 

世界中の内燃機関を駆動力とした自動車を全てEVに置き換えると、英国や日本の市場規模でも原発10基以上に相当する新たな電力が新たに必要になる。火力に頼るのも、再生可能エネルギーへの転換も現実には厳しい。一方、中国のEV市場の積極攻勢には、今後建設を予定している100基超の原発で、電力基盤が確保できる背景がある。

 

先進国では総じて原発の新規建設は困難で、発電と供給能力を大幅に引き上げなければEV化は現実的ではない。環境保全と安全性において理想的なクリーンエネルギー源は植物の光合成メカニズムを模倣した人工光合成である。エネルギー変換効率が低いため実用化は困難とされて来たが、最近の進歩で人工光合成のエネルギー変換効率が向上して、着実に実用化に近づいている。

 

よく知られているように植物の光合成は、太陽光を結合エネルギーに変換する地球上の最も重要な反応のひとつである。酸素は、植物に吸収された水が分解したとき、光合成の副生成物として生成される。この水分解プロセスの効率は低いが、世界のほとんどすべての酸素の源である。水が水分解時に生成される水素は、潜在的に無尽蔵のクリーンエネルギー供給源になる可能性がある。

 

人工光合成を用いて、太陽エネルギーを生産し貯蔵する新しい方法を研究しているケンブリッジ大学の研究チームは生物学的要素と人工技術のハイブリッド化を行い、太陽エネルギーを用いて水を水素と酸素に変換する技術を開発した(下図)(Sokol et al., Nature Energy online Sep. 03, 2018)。

 

 

Credit: Nature Energy

 

エネルギーを変換して貯蔵するプロセスの効率は高々約1~2%にすぎない。研究チームの開発したハイブリッド技術は、自然光合成よりも多くの太陽光を吸収する。自然光合成は、単に植物が生き残るために進化したために、効率的ではない。この研究は、再生可能エネルギー産業に革新的なイノベーションとなるとが期待されている。

 

人工光合成は過去数10年にわたり研究されてきたが、しばしば高価だったり有毒な触媒を使用するため、実用的な再生可能エネルギーの創出にはまだ成功していない。研究チームが開発した、純粋に太陽エネルギーで駆動される準人工光合成にヒドロゲナーゼおよびPSIIのハイブリッドをは実用化を目指している。

 

 

Credit: Nature Energy

 

研究チームは水分分解のためにPSIIをヒドロゲナーゼのハイブリッドデバイスでバイアスのない半人工的なタンデムプラットフォームを作成した。この光電気化学セルは赤色と青色光吸収体のPSII、緑色光吸収をジケトピロロピロール色素増感型TiO2光アノードの組み合わせで、相補的な太陽光吸収を実現した。酵素 - 物質界面での効果的な電子輸送は、階層的に構造化されたTiO2上のOs錯体修飾レドックスポリマーを用いている。