イタリアでも自治権拡大の動き

26.10.2017

Photo: vice

 

 イタリアの観光都市ベネチアがあるベネト州と商業都市のミラノがあるロンバルディア州の2州で、中央政府の直接統治を弱め、自治権拡大を問う住民投票が22日に実施された。住民投票は憲法違反ではないが、法的拘束力をもたない。完全独立を求めるカタロニアとは異なるが、経済的に豊かな地域が中央政府の特に税制や移民政策に不満や不公平感を感じ、自治権拡大を求める面は似ている。

 

 ロンバルディア州とべネト州はイタリアの人口の25%を占めるが、GDP30%に貢献している。失業率や社会保障受給者はイタリアの平均より低く、2州からの税収は政府財政を大きく支えている。

 

 今回の住民投票で自治権拡大は賛成多数を果たした。最も高い税収を納めている2州だが、地域インフラの整備、環境、教育や医療の向上などに税金は納得いくように使われず、大半は国の移民政策や貧しい南部対策費に使われていることに住民が不満を示した形となった。自治権拡大で、中央政府の統治を弱め、より多くの税収を地域に回し、予算の使い方や配分の権限、地域の政策策定や導入の権限を州政府が持つことを求めている。今後、中央政府との自治権拡大交渉を行う予定である。

 

 自治権拡大を求める動きの背景には、加盟国に押し付けられているEU政策への不満、イタリアの長期に続く経済の低迷、イタリア南部地域の経済と社会改革をこれまで避けてきた中央政府への不満がある。高い若者の失業率、金融機関の破綻リスク、低迷するビジネスや投資環境、人口の高齢化、増税、低下する公共サービス、移民への社会保障負担の増加などはイタリアが抱えている深刻な問題である。

 

 欧州の統合に懐疑的な考えが根強いイタリア北部地域では、EU政策が官僚的で反住民的と考えてきた。自治権拡大の要求は国の政策の失敗を示していると同時に、EU政策から乖離を求める動きでもある。今後、欧州諸国の中で経済的豊かな地域が自治権拡大や独立を求める動きが強まるのは避けられない動きとなった。

 

 

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