カタロニア独立宣言のインパクト

03.10.2017

Photo: thedailystar

 

 スペインのカタロニア州政府はスペイン政府の執拗な投票妨害にもかかわらず、独立賛成票が90%を越えたとして勝利宣言を行った。ロイターによれば投票所に派遣されたスペイン政府の警官隊と住民の衝突で、840名の負傷者を出しながら圧倒的な独立を支持する住民の前に、有効投票数2,260万票の90%が賛成票だった投票結果は州政府の完全な勝利となった。

 

独立宣言を目指す州政府

 これを受けて州政府は「独立宣言」に向けて作業に入るとみられるが、スペイン政府は憲法を縦に自治権剥奪をちらつかせて、さらなる圧力を高める姿勢である。マイアノ・ラジョイ首相は住民投票を阻止できず、圧倒的な独立賛成の住民意思の尊重と憲法遵守を掲げる政府との間で、重大な局面を迎える。

 

 地元の新聞La Vanguardianは、投票でカタロニア住民の独立支持は明白となったものの、多数の負傷者を出した政府の投票妨害で政府とカタロニア住民の対立は、激化することになったとしている。産業中心であり観光収入で裕福なカタロニア州だが政府が自治権剥奪などで抑圧すれば、ストライキや街頭デモの暴徒化で、VWやネスレなど多国籍企業に打撃となり、スペインだけでなくEU経済に悪影響がある。

 

 

Credit: WSJ

 

 投票結果に基づいてカタロニア州議会は「独立宣言」に向けて動き出す。当面は州政府がラジョイ首相と交渉を行う予定であるが、法的にはスペイン政府は憲法(第155条)に基づいて州政府の自治権を剥奪し、政府直轄で行政を行う権利を有している。

 

スペイン憲法第155条

自治州が法的義務を守らない、あるいは中央政府の利益を損ねる行為を行う場合、自治区の首長に警告を送り議会多数の元での返答がない場合、実力行使で法的義務を遂行させるあるいは政府利益を損ねる行為をやめさせることができる。

上記措置の執行に際しては中央政府は自治州行政当局に指示を与えることができる。

 

スペイン政府の思惑

 今回の投票で州政府と中央政府の衝突で予想される経済損失を重くみたスペインのIBEX株式は1.3%下げた。実際、カタロニア州の貿易組合は3日のストライキを予定している。1日に全党派での議論を呼びかけたラジョイ首相だが、カタロニア独立を憲法違反として阻止する構えのままである。一方EUでは投票の実力阻止で市民に暴力をふるったスペイン政府への批判が強まっている。

 

 ラジョイ首相は(法のもとで)話し合いに応じるとしており、48時間以内に議会で「独立宣言」を採択を目指す州政府との間で、混乱は避けられない。英国のEU離脱を想起させるカタロニア州独立問題だが、言語と文化を同じくする「民族国家」擁立の動きが目立津ようになった。欧州ではカタロニアのほか、スコットランドで独立運動が広がり、中東ではクルド人が民族独立を目指している。

 

 財政難のスペイン政府にとって、カタロニア州は稼ぎ頭であり経済成長と税収で不可欠の存在であり独立すれば致命的な経済損失になりかねない。英国のEU 脱離に続いてスペインの財政悪化が現実となれば、EUの求心力低下が加速する。

 

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