未来都市構想で若返りを模索するサウジアラビア

25.10.2017

Photo: nydailynews

 

 サウジアラビアのサルマン皇太子は25日、再生可能エネルギーのみに依存する未来都市を建設するとともに温厚なイスラム国家を目指すことを宣言した。新しい未来都市ネオムに5,000万ドルの国費を投じて、イノベーションハブとして世界から投資家を呼び込む構想である。

 

 サルマン皇太子はリャドで開催された投資家の会合(未来投資イニシャテイブ会合)で、新都市は過去のいかなる都市とも異なり、世界中の夢みる投資家を呼びよせる魅力的な構想になるとアピールする。

 

遅すぎた社会改革

しかし25日の未来都市ネオムの構想発表は、これまで自由化、近代化に慎重で政府主導の計画の達成度がいまひとつであったサウジアラビアにしては唐突な発表との印象が強い。原油価格の値下がりで2020年までに資産が底をつくとも予想されたサウジアラビアは、本来は3年前に近代化に着手すべきであったとする意見もある。

 

 サウジアラビアはいまようやく世界有数の資産を投入してイノベーションハブ未来都市を構築し、世界の投資を集めるために動き出した。その狙いは皇太子の長期ビジョン(ビジョン2030)のもとで、原油輸出収入への依存度を低くし、雇用を安定する近代化である。

 

 モハメド皇太子はまた過去には考えられなかった、女性に運転する権利を与える法改革に代表される社会改革も並行して進め、寛容なイスラム国家を目指している。しかし国民のほとんどが月数100ドルで生活する公務員で、国の予算の半分は雇用費である。ビジョン2030では公務員の20%を民間雇用に振り分ける構想で、次の10年で500万人の若者に雇用を生み出さなければならない。

 

競合構想が多いネオム

ネオム構想はそうした雇用対策とみることができる。エジプトとヨルダンに近い地域を特区として車に依存しない未来型都市に期待をかける。具体的にはノルウエイの国家予算の2倍の資金を持つ公共投資ファンドを通じてアラムコ株の5%を使う。

 

 一方、他の中東諸国もエネルギーを石油に依存すれば、輸出量が減り原油市場での競争力が低下するために科学技術開発に取り組み再生可能エネルギーを使い、原油に依存しないクリーンエネルギー都市を建設する政策を立て未来都市構想が競合する。

 

 中でも中東の未来型都市計画としてはマスダールが有名である。マスダールでは生ゴミは有機肥料として栽培に利用され、焼却炉の排熱は発電に利用する。加えて産業廃棄物はリサイクルにより廃棄物ゼロの世界初の都市となる。電力供給は40-60MWクラスのメガソーラーを中心に130MWを太陽エネルギーで生み出す。未来都市構想の中でも先行したマスダールのような具体性はネオムにはまだない。こうした未来型都市構想の競争が激化する中でネオムの独創性と価値が問われるだろう。生き残りをかけた中東諸国の行き着く先の予想が困難である。

 

 

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