自動車関税を巡り対立するドイツとEU

26.07.2018

Photo: atimes

 

 欧州委員会のユンケル委員長は25日から米トランプ大統領と通商問題を巡り会談を行っている。焦点となっているのが、EUからの自動車・同部品の輸入に20%関税の適用をEU側が阻止できるかである。

 

 米政府は安全保証上の脅威を理由に5月にEUからの鉄鋼・アルミニウム製品にそれぞれ25%と10%の課税を発動した。これに対抗して、EU側は食品、衣類、洗濯機、モーターバイク、電池などを含む米国からの代表的な輸入品に28億ユーロ(約3,680億円)相当の報復関税を発動し、その結果貿易問題の対立が激化している。

 

 今回の会談はEU側にとって、貿易摩擦の沈静化、通商問題への解決を模索する場となる。しかし、トランプ大統は会談前に全ての貿易障壁や関税を撤廃することで公正な貿易が実現できると自信の考えを明白にし、撤廃以外の関税に関する交渉に応じない姿勢をみせた。

 

足並みが揃わないEU

 EU側も対談前から、欧州委員会とドイツの間で米政府が要求している自動車関税の引き下げを巡り意見の対立があり、欧州全体で意見が分かれている。2017年に64万台の自動車を米国に輸入したドイツ自動車業界は、早急な解決を望んでおり、EUの米国自動車輸入の現在の10%関税の撤廃と米国のEU自動車輸入に対する2.5%の関税の撤廃を望んでいる。

 

 フランスは米国のEUからの自動車輸入への関税が20%に引き上げられることは避けられないと考えている。しかし米国のEUからの鉄鋼・アルミニウムへの25%と10%関税が発動されている限り、通商問題の解決に向けての交渉を行わないと強い姿勢をみせている。

 

激しくなる貿易戦争

 EUもトランプ大統領が要求する公正な関税(現関税の引き下げ)や関税撤廃に応じる考えはないため、貿易戦争は今後も激化していくと考えられる。米国がEUからの自動車輸入に対し20%の関税を発動すれば、EUは米国輸入製品に対し3,000億ドルの報復関税を発動すると警告している。EUの潜在的な分裂リスクは国ごとの貿易交渉で露呈した。すでに移民問題で求心力が低下しているところに、今回の関税問題は致命的な打撃となる可能性がある。

 

Updated: 26.07.2018 06:23 JST

窮地に追い込まれたEUは米国との全面的な貿易戦争を回避するべく和解にこぎつけた。ユンケル委員長はワシントンを訪れ、トランプ大統領と全ての工業製品への関税の引き下げと関税撤廃に向けての交渉を行うことに合意した。ただし自動車税についての決着は先送りとなり、先行きは不透明のままである。