イタリアが新年度予算を巡って欧州委員会と対立

03.10.2018

Photo: thelocal.it

 

 EUの行政執行機関である欧州委員会は、2009年の債務危機以降、各加盟国の翌年予算案の審査を行ってきた。今年も予算案提出期限である10月15日を前に、イタリア、フランス、スペインの予算案を巡り、欧州委との対立は避けられない状況にある。

 

 加盟各国には財政悪化の防止と財政健全化を目的に財政規律を維持する枠組みがある。 EU規則では、各国はGDP比3%を超える財政赤字を防止、是正することを義務付けている。政府債務残高がGDP比60%を超える国は、毎年GDPの0.5%を上回る規模の緊縮策を実施することが要求されている。

 

 過去にもフランス、イタリア、スペイン、ポルトガルは欧州委から予算案の是正を求められ、修正を巡り対立してきた。欧州委から求められた緊縮財政を実施、科された罰金に応じる、例外規定が適用されたりして、全面対立はなんとか避けられてきた。しかし今回は3カ国とも予算案の修正には応じない方針のようである。特にイタリアでは、6月に発足した「五つ星運動」と「北部同盟」の反体制連立政権は2019年を含む3年予算案を巡り、欧州委が予算を認めない場合でも、実施する強行の姿勢をみせている。

 

 イタリアの連立政権は、財政赤字の対GDP比を2.4%に設定し、EUの規則のGDP比3%以内に納めたが、要求されている大幅な財政赤字削減とはならず、歳出拡大路線の予算となった。

 

 予算案は「五つ星」と「北部同盟」が選挙公約とした政策の実施が盛り込まれている。貧困対策として、貧困層に毎月最大で780ユーロを支給する最低所得保障に100億ユーロの予算。雇用対策として、早期退職を可能にし、最大40万人規模の若者に雇用機会をつくる。減税対策として、現在の23%~43%税率を15%~20%に引き下げる。さらに、退職年齢の引き上げと最低年金保障の実施計画が含まれている。

 

 これまでの予算案を巡る欧州委とは異なった状況での対立となる。イタリアの連立政権は反体制、反EU色が強く、国民支持が高い政権である。欧州委が例外規定を適用すれば、ドイツや他の加盟国からの批判を浴び、欧州委の行政執行機能や能力が問われる。欧州連合の統一がますます難しくなる状況となる。