欧州市民の過半数以上はEUを必要としていない

17.10.2018

Photo: express

 

 EUのシンクタンクの「Friends of Europe」の最新世論調査によると、3人に2人はEUがなくなっても、生活は必ずしも悪くならない、また49%はEUが重要な存在ではないと考えている。

 ブリュッセルに本部を置くFriends of Europeの調査は9月に、全てのEU加盟国に渡り10,960人を対象に行われた。各加盟国の人口に比例して、その国の一般市民が調査の対象となった。以下が調査結果の概要である。

 

EUは一般市民のために機能しているかは疑問

・64%の欧州市民はEUがなくなっても、生活は必ずしも悪くなると思わない。

・49%の欧州市民はEUが重要とは思わない

・41%のフランス市民はEUが無くても生活は変わらない、22%は悪くなると考えている。

・35歳以下の欧州市民の41%はEUが無くなると、生活は悪くなると考えている。

・ 90%の欧州市民はEUが単一市場より大きな役割をもつことを期待している。

・81%の欧州市民はEUの政策意思決定に各加盟国がより関わることを重要視していない。

・EUは欧州市民が最も関心が高い、平和の維持、雇用の創出、気象変化を最優先政策にすることを望んでいる。

・EUへの信頼を回復するには、41%は幅広いEU政策に対して市民投票を行う、31%は予算の透明化を望んでいる。

・EUの主要な役割として、40+%の中央ヨーロッパのチェコ、ポーランド、ハンガリーとスロバキアの4カ国と南ヨーロッパ諸国の市民は経済成長の改善をあげている。欧州中で価値観や民主主義を推進して欲しいと考える人々は、北欧では32%、フランス36%、ドイツ37%であった。

 

 以上の調査結果は形式的な当たり障りのないアンケートと違って、市民の本音に迫り奥深い意見を求めていることが特色となっている。今回の世論調査から見えてくることは、EUと欧州市民との間で、EUの役割や機能に対しての認識の違いがあることである。EU離脱で不況となると言われつつ、Brexitが決まった後好調な経済を見せてきた英国経済はEU脱退による経済状態の悪化懸念を払拭した。

 

EUの求心力に黄信号

 EUが無くなっても、生活が悪くなると思わない人が64%いることが今後のEUの行方を考える上で注目する点である。ポピュリズムが欧州中で広がりを見せている中、EUの行きすぎた移民政策や加盟国との経済政策の対立でますますEUを維持することが難しくなっている。

 

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