アメリカの史上最高の「好景気」はウォール街だけ

17.11.2019

 

 米アトランタ連銀とニューヨーク連銀が15日に発表した米第4四半期の実質GDPの予想値は0.3%と0.39%である。前回8日のGDP予想であった1.0%と0.73%より下降修正されたのは、10月の鉱工業生産指数が大幅に落ち込んだためである。第1四半期から第3四半期、実質GDP は3.1%から2.0%、1.9%へと減少しているなか、株式市場だけが史上最高値をつけている。

 

 GDPが減少傾向にある反面、上昇を続けているのは米株式市場。主要3株価指数は15日過去最高値を更新した。ダウ工業株30種平均は始めた2万8000台を超え、ナスダック総合指数とS&P総合500は8,540と3,120と史上最高値をつけている。

 11月時点の2019年度GDPは21兆5000億ドルであるのに対し、株式時価総額は31兆5000億ドルと実にGDPの146.5%である。2018年と比べ、GDPは6,000億ドル増加したことに対し、株式時価総額は6兆ドルも増え、GDPの122%から146.5%まで膨れあがっている。

 しかし、企業の税引前利益はここ数年下降傾向にあるのにも関わらず、株式市場は上昇を続けている。従来のファンダメンタルズで支えられていない株価上昇ともいえる。今は金融緩和政策と企業による自社株買いが上昇の原動力となっている。

 

 

 トランプ大統領が常に述べている史上最高の好景気とは経済全体ではなく、投資家、ファンドマネジャー、大企業の経営者、銀行や証券会社といったウォール街に限ってのことである。