世界共通の普遍的道徳規範とは

25.02.2019

Photo: dailyhunt.in

 

 オックスフォード大学の人類学研究グループは、普遍的道徳理論を世界60カ国で検証した結果、7つの普遍的な道徳的ルールを発見した。尊重されるべきその7つの道徳規範とは、①家族を助けること、②所属しているグループを助けること、③他人に恩恵を与えること、④勇敢であること、⑤上司に敬意を表すこと、⑥公平に資源を分かち合うこと、そして⑦他人の財産を尊重することである。これらは世界中の60カ国の文化を調査した結果、普遍的であることがわかった(Currry et al., Current Anthropology online Feb. 08, 2019)。

 

オックスフォード大の人類学研究チームは600以上の情報源からの60万以上の単語を含む60の社会からの倫理の民族誌的記述を分析した。この研究は、これまでに実施された最大かつ最も包括的な道徳の異文化間調査となる。以前の調査でもこれらの道徳規範の一部は明らかにされていたが、大規模な調査は今回が初めてとなる。

 

 道徳に関する普遍主義者と相対主義者の議論は何世紀にもわたって継続されてきたが、この調査研究で7つの道徳的規範は文化を超えて普遍的であり、すべての人が共通の道徳的規範を共有していることが明らかになった。また同時に「道徳規範が進化して社会の協力を促進した」と考える理論の検証にもなった。

 

 「協力のための道徳」理論は、人々が家族に対して特別な責任感を感じる理由や近親相姦を嫌う理由を説明できるほか、相互主義が集団や連合を形成する原動力となることも理解できる。社会的交流が、私たちが他人を信頼し、好意を表彰し、罪悪感と感謝を感じ、償いをし、互いを許すこと、人々の寛大さ、自分の上位の人間への隷属、資源を公正な分配、他人の所有物を認めることなど様々な社会規範の理由となっているのである。

 

 調査によれば、これら7つの規範は、ほとんどの社会で見られ、これらをガイドラインとした協調行動が常に道徳的に良いと考えられ、これらの行動が道徳的に悪いと見なされた社会はなかった。この調査ではすべての社会は7つの基本的な道徳規範が、(優先順位付けは差が見られるものの)これらの道徳規範は大陸を越えても成立するため、普遍的規範とみなすことができる。

 

 このことはこの道徳規範を守りさえすれば、移民がどの国に行っても問題を起こすことはなさそうに思えるが、欧州の混乱や米国の不法移民をみると現実にはそうなっていないようにみえる。道徳規範の優先順位付けの問題というより、「協力のための道徳」に優先する因子が存在することが示唆されるが、我々がそれとどう共存していくかが問われる。