2022年からフォード車の標準装備になるコネクテッドカー

09.01.2018

Photo: voicendata

 

 コネクテッドカーとはIoTのひとつでインターネットに常時接続されているシステムの総称である。総務省によればそのサービスは、①緊急通報システム、②テレマテイクス保険、③盗難車両追跡システムなどがある。コネクテッドカー技術を2022年度から標準搭載するのは、5Gインンフラ整備のタイミングに合わせたもので、コネクテッドカー技術にクアルコムの提案を採用した背景には、ファーウエイとクアルコムの5G覇権争いを米国主導で有利に展開したいトランプ政権の思惑がある。 

 

 いち早く採用したBMWコネクテッドドライブの概要を以下のように定義している。コネクテッド・ドライブとは、車に搭載された通信モジュールによって、車両の状況をコールセンター、販売店・整備工場などで情報を共有し、迅速・的確な事故対応やメンテナンスを可能とするシステムであり、カーライフを進化させる利便性として、スマートフォンなどの情報端末を利用しネットに接続することで、最新の情報やサービス、エンターテイメントの提供を受けることも可能としている。

 

 同様なコンセプトはトヨタやGMも積極的に推進しているが、ここではフォードのコネクテッドカーをモデルとして、そのメリットとリスクを考察してみる。

 

コネクテッドカーは5GベースのIoT

の担当役員は、フォードが2022年からすべての新しい米国で販売する自動車モデルにクアルコムの5G技術を採用したIoT技術C-V2X(注1)を展開すると発表した(CES 2019)。C-V2X技術で装備された車が互いに「話す」そして「聞く」ことを可能にするだけでなく、信号機やVICSのような交通管理インフラストラクチャと直接接続することを可能になる。つまり「常に繋がる」(ユビキタス)というスマートフォン世代へのキラーキャッチコピーを自動車で実現するものである(下図はクアルコムの提案するV2Xの概念)。

 

Credit: embedded-computing.com

 

(注1)V2P(対歩行者)、V2N(ネットワーク接続)、V2V(車対車通信)、V2I(交通インフラ)を含めたIoTをV2Xと呼ぶ。

 

 歩行者は携帯電話を使って自分の位置を車に伝えることもでき、歩行者やサイクリストにとって道路の安全性を高められるとしている。欧州員会は2018年春から販売される車すべてにeCallと呼ばれる緊急通報システムの搭載を義務付けた。 

 

根底にあるのは5G

運転者支援技術や自律走行車では、搭載された複数のセンサーで複雑な環境情報を分析して安全にナビゲートするものだが、C-V2Xはこれらのシステムを補完するものと説明されている。この安全性向上に見えるIoT技術の根幹にあるのは5G通信なので管轄は運輸省ではなく総務省になる。しかし5G技術の賛否が渦巻く中で、コネクテッドカーが5G技術に依存していることは明らかである。

 

 5G技術は情報密度が4Gの100倍で、大量のデータ送受信に不可欠の技術である。クアルコムとファーウエイの5Gの覇権争いが激化していることは別記事にかいた。C-V2Xはクアルコムが提案したプラットフォームで、フォード社はファーウエイの排斥でクアルコム主導の5Gインフラが2年(注2)で整備されると判断して2022年からの標準装備に採用したわけである。

 

(注2)2年という整備期間は3Gから4Gへのインフラ交代に要した時間だが、これには成長産業であったスマートフォン需要が後押ししたことと周波数帯域が大きく変わらない3G技術の延長線上にあったことが有利に働いた。周波数帯域が大きく異なる5Gインフラ整備は技術的な問題と、すでに減速しつつあるスマートフォン市場で落ち込んでいる収益で、資金投入に不安があり、2年で完了する見込みは少ない。

 

 コネクテッドカーを含むIoTの5Gの社会へのインパクトは極めて大きい。フォードのC-V2Xプラットフォームは5Gで動作し、道路と交通インフラの正確な把握のために、既存のLiDAR、レーダーおよびカメラセンサー技術を補完する。下図に示すようにコネクテッドカーは遠隔手術など医療応用と並んで、5Gの遅延の少ない情報通信の特徴を生かした分野である。

 

Credit: citiesofthefuture.eu

 

 しかし、5Gベースのコネクテッドカー技術の普及シナリオの道のりは、まだ長いためフォードは、他の自動車メーカーや政府機関と協力しなければならないことも認識している。成功すれば、歩行者の安全と交通事故に大きな影響を与えるとして、政策で取り組みが始まっているものの、電磁波の健康被害を懸念から5G移行反対の声も大きくなっている。

 

ファーウエイの安全保障リスク

 5G基地局のインフラ整備は各国政府が検討中でスマートフォンメーカー各社の開発競争が激化する中で、フォード社がクアルコム主導の5Gインフラを前提としたコネクテッドカーのプラットフォームC-V2Xを2022年度からの全ての新車の標準仕様としたことは今後の5G動向に影響が大きいと考えられている。まず5Gの健康被害について結論が出ないまま、利益が優先されようとしていること自体が問題である。

 

 ファーウエイが5Gインフラの覇権をとると個人情報の漏洩リスクの規模ははかりしれないが、安全保障問題で西欧諸国から締め出されているファーウエイは中国政府の強力な後押しで業績を伸ばし波に乗っている。現在はエリクソン、ノキア、ファーウエイが独占する3Gインフラ事業展開では、クアルコム対ファーウエイの競争になっている。

 

 下図は基地局機材のシェアの移り変わりで、ファーウエイの躍進が明らかである。またファーウエイとZTEの実態が中国の国営企業で、両方を牛耳る中国共産党が基地局事業のトップに立ち、2位以下を引き離すとなれば脅威に感じない方がおかしい。スマートフォン事業の躍進で勢いをつけているファーウエイが、5Gインフラの価格競争に勝利して覇者となれば、最悪の情報漏洩リスクが現実となる恐れがある。 なお監視カメラ同様に個人の動きをリアルタイムで知ることができるコネクテッドカーは、使い方次第では監視社会の交通規制に悪用される恐れがある。好きな時に好きな場所に行く自由が奪われる社会を想像したくない人は接続する自由を主張すべきである。