黄色いベスト運動に治安部隊投入で増える負傷者

04.02.2019

Photo: tellerreport.com

 

 フランスの「黄色いベスト」運動は週末12週目を迎えた。一部の抗議者の暴動化を除くと、フランス全土の抗議活動はほとんどが非暴力的である。今回の抗議活動の中では、警察による暴力で負傷する抗議者が増加していることへの非難の声が上がった。昨年の11月17日以来、負傷を負った人は1,900人、うち重傷者は98人で失明に至ったケースは17人である。抗議デモとしては稀にない負傷者の数である。

 

非殺傷兵器の使用

 国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルや欧州人権委員会は、フランス警察、フランス軍や治安部隊による黄色いベスト運動の抗議者への極めて激しい暴力に警告を発した。デモ隊の制圧に装甲戦闘車、放水車催涙ガスが使われているが、特に問題視されているのが、非殺傷兵器の装備と使用である。

 

 フランスの治安部隊は防御弾発射装置(LBD)を使用していることから重傷者が増えつつあると非難。弾丸は発煙物質や催涙剤が含まれたゴム弾で、10メートル以内の距離から発射した場合、標的となった人には深刻な被害を与えるとされている。人間の首より下を狙う規則があるにも関わらず、17人もの失明被害、頭や顔に重傷を負う人がでていることは、頭部や顔、特に目を狙った可能性が高いという見方が強い。

 

危険な水平撃ち

 ガス弾、ゴム弾、高圧放水は威嚇してデモ隊を解散するために使用するもので、相手を傷つけるものではない。通常はそのため近距離からの水平撃ちは禁止であるが、負傷者が出るのは水平撃ちをしたことによる。かつて日本の東大闘争でも機動隊がガス弾を(危険なため、してはならないとされている)水平撃ちをしたため、頭部に直撃弾を受けた学生を(学生の救助要求に応えて)建物から救出した。

 

 黄色いベスト運動の中心活動家のジェローム・ロドリゲス氏もパリ市内で銃弾を受け、右目を失った一人である。母親に携帯で話し中に撃たれたとされ、現在警察により捜査中である。この負傷でより黄色ベストの運動は終結が見えない反政府運動となった。また、政府が人権を尊重しない手段でデモ抗議者の弾圧を行っていることへの批判は今後高まって行くとみられる。