スマートフォン史上最悪となった2018年

01.02.2019

Photo: hitechcentury.com

 

 翳りのみえたスマートフォン市場という記事をすでにかいているが、それを裏付けるかのように、DCによると2018年に世界の携帯電話の販売台数が4.18%減少し、通年で合計14億台が出荷された。世界のスマートフォンの売上は2018年に史上最悪の減少を記録したが、2019年の見通しもそれほど良くはない。

 

 IDCによればインド、インドネシア、(韓国)韓国、ベトナムのような高成長市場以外では、2018年の販売実績は低調だった。その理由としてIDCアナリストは、携帯電話市場は、すでに携帯電話を所有しているユーザーが新型モデルを待ち買い控えたこと、フラッグシップモデルなど高級機器の高価格に対する不満、そして政治的および経済的な不透明さにあると分析するが、筆者は一昔前のPC離れのようなより本質的な問題があるとみている。

 

 水曜日に発表されたIDCの調査によると、スマートフォンの売上高の約30%を占める中国市場は10%の落ち込みであった。スマートフォンメーカー5社の上位5社の独占率が上昇し、現在では全世界の売上高の69%を占めている。これは1年前の63%から増加していて、消費者にとっては選択肢が減少したことになる。

 

 トップに君臨するサムスンは年間売上高が8%減少したにもかかわらず、20.8%のシェアを維持している。一方、Appleは14.9%の市場シェアで第2位のポジションを取り戻し、Huaweiの14.7%を上回った。

 

 しかし第4四半期のスマートフォンの売上は4.9%減、5四半期連続で減少しこの四半期は、スマートフォンの出荷が史上最悪の年を締めくくることになった。IDCのみならず、Counterpoint Researchによるレポートでも同様の調査結果で、第4四半期には7%、通年では4%の減少が予測された。

 

 インド、インドネシア、ベトナム、ロシアなどの新興市場でのスマートフォンの出荷台数の増加は、中国の減少を相殺できなかった。販売落ち込みはスマートフォンが行き渡り、購入が更新であるユーザーが増えたことによると筆者は考える。つまりメーカーの提示する新型モデルが手持ちの機器を買い換える出費の対価となる「価値」を見出せなかったということが大きいのである。かつてのPCは1年に春夏モデルが送りだされても、僅かな性能向上に飛びついて購入したユーザーも、いったん機能と性能に満足すると新型モデルを買わされる商法に嫌気がさすのは当然である。

 

 スマートフォン市場の上位3社が激しい性能競争でフラッグシップモデルのスペックが接近したものの、高額商品になったことで1年のサイクル商法が成り立たなくなった。一方で新興市場では低価格商品の需要がほとんどである。折りたためる大画面や3カメラ搭載を歌っても、ユーザーの生活レベルが劇的に変化するわけではない。つまりメーカーの思惑に惑わされる愚かなユーザーがいなくなったのである。

 

 ちなみに筆者はiPhone7pllusを愛用している。理由はスペック(2カメラと画面サイズ)、特に暗闇ですぐホームボタンが見つかるTouchIDである。同じように考えるユーザーが多いようでいまだにSEやiPhone8の需要が多いという。FaceIDやアニメ顔アバターなどは完全にappleの失策なので、Samsungのバッテリー問題も含めてメーカーの失策も信頼を失った要因のひとつである。

 

 これからの市場維持にはふたつの方向性がある。ひとつはこれまで高級機器の販売で利益を肥やしてきたメーカーは、低価格帯の機器の選択肢を広げなくてはならないだろう。もちろん利益率は低くなる。もうひとつは高級機器には目先のスペックアップでなく、新たな付加価値を加えることである。現在カメラの性能競争がこれにあたるが、他にも多様なセンサーとアプリの連携でできることは多い。1->2-3とカメラが増えるのはズームで置き換えられる。ソニーや富士フイルムが作っていた三角プリズムを使ったレンズが飛び出さないズームを搭載すれば1つで済むのだから、メーカーに先駆的なカメラ技術を採用する勇気が必要になる。appleがiPhoneのバッテリー交換に応じるようになったのは逆に言えば売れなくなったからで、「簡単には売れない市場」になったことは「まともな市場」になったということなのかもしれない。

 

 いずれにしても現在の新型開発戦略を変えなければ、スマートフォン市場がPCの後を追うことは明らかなのである。成熟した産業には豊富な選択肢がある。スマートフォン市場の低迷はメーカーへの警鐘と受け取るべきなのである。

 

 

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