ニューヨークに世界最大のレタスファクトリー誕生

09.06.2016

Photo: Aerofarms

 

世界最大のVertical Farmがニューヨークに出現した。巨大都市の近郊でも水の使用量を一般的な農場より95%カットしながら、75%多い収穫量が特徴だ。米国の農地面積減少で野菜の供給不足に陥っていたが、狭い土地を有効に利用するVertical Farm人口密集地域への野菜供給能力が一気に増大する。

 

AeroFarms社がマンハッタンに近いニュージャージー州ニューアークに9番目のVertical Farmを完成した。この「ビル中農場」では年におよそ100kgの野菜を収穫できる。同社は2004年から世界的な食料危機に備えて水耕栽培で野菜を生産する「ビル中農場」を開発し、これまでに8カ所に建設した。このシステムでは栽培のための水使用量を屋外農場の半分にカットした環境対応型施設であり、栽培における害虫駆除の必要もないことからオーガニック野菜の生産が効率的に行えるメリットがある。

 

 

2050年までに地球人口は7億人から9億人に30%増えるが、食料の需要は70%増加するとされている。これは都市部に人口が集中しエネルギー消費が増えるためであるが、そのため食料危機が危惧される。最も重要な収穫量については屋外農場の75%増しとなる。つまり半分の水使用で生産量を倍増させることが可能になることである。

 

室内の照射はLEDを用い、精密に温度を管理されたクリーン空間で養分を含む水を還流させる水耕栽培を用いる。基本的には家庭でのオーガニック野菜生産の小規模なシステムと同じ原理だが、レタス100万個の生産能力がある巨大施設も稼働し始めている。

 

 

 

管理には3万カ所のセンサー入力を参照して環境条件を細かく制御する必要があるが、それはもともと半導体産業では確立した技術であった。半導体技術と農業が意外な接点で結ばれるビル中農場は日本でも富士通や東芝など半導体メーカーが本格操業に乗り出した。

 

安全な野菜生産が効率良くできるという一石二鳥のハイテクビル中農場が摩天楼のひしめくニューヨーク近くに出現した。まるで2050年の未来図のようだが、アフリカの食料危機には同様の設備をメガフロートで海上に浮かべる構想もある。