WiFi電波で人間の行動を透視する技術をMITが開発

24.12.2015

Photo: The Japan Times News

 

MITワイアレスセンター所長のKatabi教授は、WiFi電波を用いて離れた場所にいる人間の場所や活動を監視する技術を開発した。この技術を使うとこの技術は、認知症患者の動きや高齢者の生活を家族が遠方で見守ることが可能になるほか、軍用の監視装置にも応用が可能となるとしている。2012年から隣の部屋のWiFi電波を調べる手法の開発中に、発信源(携帯など)の場所を表示する透視装置の開発を思いついたという。

 

これまでリモートモニタは赤ちゃんの監視やペットの活動の監視のための発信機で画像を送るモニタやスマホアプリで音声をモニタするものなどがあったが、位置を特定し動きをリアルタイムでモニタする機器はなかった、

 

 

開発された透視装置は平面上に対象人物の位置を表示しその動きをリアルタイムに追う。また発信機を取り付けた人間の呼吸や心臓音を検出してそれらの情報得ることができる。原理的には骨格から人物の特定も可能なので犯罪捜査に使うこともできる。対象者は(携帯やスマホを持つだけで)このために特別な発信機などのデバイスを身につける必要がない。

 

電波の受信状態の観測から壁を通して対象の位置監視ができる。携帯のWiFi電波を発信機として利用すれば、その受信状態を解析して対象の位置を部屋の平面図に重ねて表示すれば可能となる。もちろんフェーズドアレイアンテナを使えば情報量は格段に上がるが、市販化するには複雑で高価すぎる機器となる。開発された装置はPC程度なので簡略化したものが使われているのだろう。

 

 

監視対象が転倒したりした際には異常を自動的にメールや携帯に送ることにより迅速な手当が可能になる。この技術は認知症対策に有効であるが一方では軍用の応用も(例えば捕虜の動向を外部から調べるなど)ある。

 

 

MITはこの技術を2017年に市場に送り出すための会社、”Emerald”を立ち上げて、一台250-300ドル(日本円にして3万円から36000円)で売り出す。開発グループは装置を小型化してスマホアプリと連携させる計画である。

 

 

これまでDARPA予算が大学・研究所に注ぎ込まれ軍用に開発した先端技術の多くが、学術研究や民間機器に使われている。例えば軍人の健康状態を遠隔でモニターするためのBio-chipから派生したMicrofluidicsは薬剤開発ではなくてはならないデバイスでさらにLab-on-a-chipやOrgans-on-a-chipに発展している。

 

ロケット開発、AI技術など民間で先端技術を必要とする現代、経済状態を反映して市場を広げることになった。しかし今回の例のように市販すれば売れることが確実である場合、軍用のスペックダウンを市販化を同時に推し進めることで世界市場の独占を狙う時代に入ったといえるだろう。