ウイルス感染症の治療法に進展

13.07.2017

Photo: debunkingdietitian

 

オーストラリアのRMIT大学の国際共同研究チームは風邪やインフルエンザなどのウイルス感染の効果的な治療法を開発した。オーストラリアだけで毎年インフルエンザで13,500人が入院し、50以上の患者3,000人が死亡している。全世界では500万人が毎年感染し死亡率は10%に達する。

 

研究グループはウイルス感染で人体に与える影響を詳しく調べ、植物、きのこ、動物にみられるある種の生物学的プロセスがネズミ(と人間)(注1)へのウイルス感染力を増大させる働きがあることを突き止めた(Nature Comm. 8:69, 1 (2017))。

 

(注1)マウス実験からの類推であるが、生物学的メカニズムが共通であることから、ヒトへの応用が可能としている。

 

 

焦点となるNox2オキシダーゼ

マウスを使った実験で、蛋白質Nox2オキシダーゼ(注2)がインフルエンザ、風邪、テング熱、HIVなどのウイルス感染で活性化されると、体内の抗ウイルス反応を抑制しウイルス感染による影響が強まることがわかった。またこのメカニズムに特化された薬剤が効果的であることも確認された。

 

研究グループによれば(インフルエンザ・ワクチンのように)、現在のウイルス感染治療はすでにわかっている特定のウイルスにしか効果がないので、毎年現れる新種へ対応できなかった。今回の研究で免疫力を低下させる蛋白質を特定し、そのメカニズムの治療薬の効果も確認できたため、ウイルス感染症の治療が進むと期待される。

 

(注2)NADPHオキシダーゼ(NOX)の一つ。NOXは細胞膜を越えてNADPH由来の電子を輸送し酸素分子と反応させて酸素フリーラジカル(超酸素イオン)や他の活性酸素種(ROX)を生成する。NOX低下により免疫力が低下する。

 

 

進むNADPHオキシダーゼの役割解明

甲状腺ペルオキセダーゼに必要な過酸化水素の生成に関与するNADPHオキシダーゼが甲状腺ホルモン分泌や甲状腺癌と密接な関係にあることも明らかになっている(Nature Reviws Endocrinology 12, 485 (2016))。活性酸素種の関与する生物学的プロセスが解明が進む中で、その生成を支配するNADPHオキシダーゼの理解が進めば、ウイルス感染症の効果的な治療法の確立につながると期待される。

 

 

Credit:  Nature Reviws Endocrinology