水素化反応効率100%の単原子バナジウム触媒

31.05.2017

Credit: Chem. Comm.

 

アルゴンヌ国立研究所の研究グループはSiO2に担持された有機バナジン(SiO2)V(Mes)(THF))触媒を開発した。アルキン・アルケン炭化水素に対する単原子バナジウムサイトの水素化の触媒活性は100%に達する(Chem. Comm. May 03 20017)。

 

 

水素化はエチレンなど重要な不飽和炭化水素(注1)の工業化学に欠かせない触媒反応である。これまでの水素化触媒は白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属が使われてきた。バナジムは元素周期律表上、チタンとクロムに挟まれる第一列の金属で地球上の存在量も、これら同様に豊富であるが、これまで水素化には触媒機能がなかった。というのもバナジウム金属はIII価で存在するため反応性が高く不安定であるからである。

 

(注1)炭化水素のうち単結合のみであるものがアルカン、二重結合が一個あるものをアルケン、三重結合が一個あるものをアルキンという。

 

バナジウムに活性を持たせるには粒径を小さくして分散させる必要があった。研究グループはこれらの問題を解決するための単原子バナジウムを分散させたかったが他の金属酸化物上では作成が困難であったが、有機バナジウム化合物を用いてSiO2上に担持させることで、単原子としての特性を引き出すことに成功した。バナジウム化合物の触媒利用についてはこれまでも研究が多く、レビューがあるが、単原子バナジウムのアイデアは今回の研究が初めてとなる。

 

Credit: Catlysis today

 

エチレンへの水素付加反応(ニッケル)、アルケンの水素化(ウイルキンソン触媒)不飽和アミノ酸の水素化(ロジウム)など、工業化学では水素化触媒の重要性は古くから認知され、貴金属触媒が広く利用されてきた。低コストのバナジウムが高性能触媒となることで、広く化学工業へのインパクトが大きい。