LHCが過去最高エネルギーを記録

Jul. 9, 2015

Photo: Belfast Telegraph


ヒッグス粒子発見の後、アップグレードのため27カ月間の休止期間に入っていた世界最大の円形加速器LHC(Large Hadron Collider)が再び動き出した。LHCは前人未到の13TeV(テラは10の3乗ギガ)という、当初のエネルギーの倍のエネルギーの衝突実験を行えるようになった。


改造後の2カ月にわたる試運転を経て、今後3年にわたるLHC第2フェーズの運転が開始された。2015年6月3日10:40にLHCはビーム安定化により衝突実験の準備が整った。



Phto: CERN blog 

 

上の写真はLHCb検出器でみた12TeVプロトン衝突実験。

 

ビームとは周長27kmの円形加速器で光速に近い速度まで加速されたプロトン粒子の束(バンチ)で、逆向きに加速されて周回し超伝導加速空洞で最終加速され衝突する。LHCには現在6バンチで合計100億個のプロトンが周回しているが、バンチの数は最高2808まで増やすことができる。

 

2012年のLHCの最初の運転でATLAS、CMS検出器システムはヒッグス粒子発見という偉業を成し遂げ、宇宙を構成する物質の最小単位となっている素粒子(相互作用)を記述する標準理論に必要な最後の要素を解明した。

 

 

CERNの研究者達は今後、標準理論の境界領域を詳しく調べ、宇宙の1/4を占める暗黒物質の解明に向けての新しい衝突実験を開始した。これにより反物質についての知見も得られると期待されている。

 

LHCにはALLICE、ATLAS、CMS、LHCbと呼ぶ4つの検出器グループがあり、これらで未踏のエネルギー領域での衝突実験に挑む。過去2年間の実験によりこれらの実験の検出器システムは改良され、新しい衝突実験のデータを収集する準備が整っている。これらの検出器システムの建設には日本を含む世界中の高エネルギー研究者が関わっており、国際協力によって成り立っている。

 

 

高エネルギー衝突実験では観測されるイベントが衝突エネルギーに強く依存するために13TeVというエネルギー領域での衝突実験で新しい素粒子物理の側面が姿を現す可能性が高い。LHCのアップグレード後の実験後半では最大エネルギーとLuminosityと呼ぶ輝度を上げて、精度の高い実験も計画されており、これからの3年間はLHCから目が離せない。