実用化が近いカーボンナノチューブICチップ

23.11.2016

Image credit: Nantero

 

カーボンナノチューブは炭素鎖が2次元につながったグラフェンシートを円筒状にした半導体としての性質はよく似ている。(シリコンの6-10倍)という高い導電性により高速スイッチングデバイスやメモリチップへの応用は発見当初から期待されていたが、製造法が簡単ではないため応用への展開には至らなかった。

 

非シリコンメモリ企業ナンテロ(Nantero)はメモリーチップへの応用に3150万ドル(日本円にして約35億円)を投資する。IBMは高速デバイスに応用しシリコンチップより最大1桁高速の演算チップの開発を目指している(Nature Letters 2013, 501, 526)。

 

どちらもカーボンナノチューブの移動度の高さに着目したもので、将来のウエラブルコンピューターなどの携帯電子機器、、家庭電子機器、宇宙軍事目的のデバイス市場でより高速なチップの需要が大きいと判断したためである。

 

 

ナンテロの目指す高速NRAM

ナンテロ社はカーボンナノチューブのNRAMを製造する。この新型NRAMはNAND型フラッシュメモリーの1,000倍で動作しDRAMと同等の高速性を備えるが、5nmスケールの製造ラインの設備が使える。

 

ナンテロ社は2001年に設立されたマサチューセッツに拠点を持つ社員50名ほどの小さな企業だが、米国出願特許200件、取得済みが175件のハイテク企業で、2008年にはロッキード・マーテイン社と契約するなど成長が著しい。

 

金属酸化物半導体によるNRAM(下図)は4MBまでのチップが従来の半導体ファブで製造されている。これらの製造ラインを用いてナンテロ社のカーボンナノチューブNRAMチップは製造される。

  

Credit: Hugh Hawkins

 

シリコン半導体の微少化はスケーリング則(ムーアの法則)が破綻して減速してもコスト的に電子機器市場を支える役割に変わりはない。しかし一方では今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。需要が見込まれる非シリコン半導体市場は高速性など特殊な機能を活かしたチップを模索している。

 

 

IBMの戦略〜高速演算素子

カーボンナノチューブチップはシリコンに対して1桁以上高いエネルギー効率を持つため、シリコンに変わる電子材料として特殊な用途を見込んだチップ製造の収益性が見込める。一方で電子をトラップするカーボンナノチューブ固有の欠陥密度が高いため、これまでは簡単なデバイスへの応用に限られていた。

 

 

IBMの研究グループは欠陥密度を低減させることに成功し、カーボンナノチューブ計算機の演算素子としてマルチタスク処理ができることを示した。同社とEUプロジェクト(Euro Carbon Nanotube Composite Interconnects (CONNECT)は共同で下図のうおうなCuとカーボンナノチューブ複合材料をチップ内配線に応用する開発研究を開始している。

 

Image: EETimes