MITが鋼鉄の10倍の強度を持つポーラスグラフェンを開発

11.01.2017

Credit: Sci. Adv. 2017; 3:e1601536

 

MITの研究チームがフレーク状のグラフェンを圧縮・溶融して微細な穴を持つナノ構造体とすることで、鋼鉄の10倍の強度を有する軽量・高強度材料を開発した。2次元構造を持つグラフェンは軽量で機械強度が高い上に高電気伝導度を持つ次世代材料として注目されていたが、これまで特徴を生かして高強度材料として用いることが困難であった。

 

研究チームはポーラスな幾何学的形状に加工することで3次元構造を実現した。この研究開発の意義はポーラスナノ構造により他の材料を軽量・高強度に仕上げることが可能な応用性にある(Sci. Adv. 2017; 3:e1601536)。同様のナノ構造で高強度材料を作成する技術は他の研究チームが提案していたが、実証に至っていなかった。

 

グラフェンは1原子層の二次元構造した平坦なミクロ構造を持つため、そのままでは3次元材料に加工することが本質的に困難である。MIT研究グループは実験法を原子レベルの視点で見直し、フレーク状のグラフェンを高温で圧縮し、珪藻のようなポーラスナノ構造(ジャイロイド)(注1)に加工すると3次元材料化が可能となることを見出した。この構造(下の写真)では2次元のグラフェンシートがねじれながら各々は化学結合で強固に繋がっている。

 

 

Credit: Sci. Adv. 2017; 3:e1601536

 

(注1)3方向に無限に連結した3次元の周期極小曲面。グラフェンシートを金属微粒子上にCVD成長させ、中心の金属微粒子を取り除くことで作成できる。

 

有限要素法による数値解析でMITの研究グループは鋼鉄の密度の5%でありながら10倍の強度を有するポーラス材料の形状を見出し3Dプリント技術でテストブロックが作られた。薄い平面の材料も曲げて円筒状にすると機械的強度が増大するように、ミクロに見れば2次元面がねじれて3次元構造をつくるところがポイントである。ポーラスナノ構造は最近では光触媒などにも応用されており、ミクロな2次元材料を加工して3次元材料とする技術は実用化の時代に入った。

 

またMIT研究グループは数値計算によって他の研究グループの提案するグラフェンの3次元化が不可能であることも確認している。この研究ではミクロなポーラス材料をマクロにもポーラス化するという二重の幾何学的形状のメリットがポイントである。