室温ボース・アインシュタイン凝縮の発見

23.06.2017

Photo: quantum-munich

 

光は波動性と粒子性を併せ持つがボース・アインシュタイン凝縮状態では前者が支配的となる一方で、新たな量子的特性が現れる。これまで液体ヘリウム温度の現象だと思われていたボース・アインシュタイン凝縮が励起子ポラリトン(光と物質の相互作用)によって室温(注1)で実現した(Lerario et al., Nature Phys. online June 5 (2017)。

 

イタリアの研究所(CNR)の研究グループは有機分子の薄膜(130nm厚)を反射鏡で挟み込んだキャビテイに、35フェムト秒の短パルスを打ち込むことによって高密度励起子ポラリトンでボース・アインシュタイン凝縮(注2)を実現した。

 

(注1)温度の上限は励起子の束縛エネルギーによって決まる。ここでは有機分子キャビテイを用いることで、ボース・アインシュタイン凝縮を室温で達成した。

 

(注2)外部ポテンシャルによって閉じ込められた弱く結合しているボース粒子の希薄気体が0K近くの極低温で、多数のボース粒子が外部ポテンシャルの最低エネルギーの量子状態をとる。このような状態(ボース・アインシュタイン凝縮)では個々の粒子の微視的な量子状態が巨視的なスケールの粒子集団の凝縮現象として発現する。

 

 

研究グループはボース・アインシュタイン凝縮の持つ量子現象である光の「超流動」を観測した。超伝導同様に超流動では摩擦や抵抗がない。例えば光の波動で通常見られる媒質の密度変動がなく、波面の移動によって媒質は変化しない(下図)。

 

 

Credit: Credit: Polytechnique Montreal

 

この研究によって超流動状態にある励起子ポラリトンを使って超伝導に対応するデバイスができるかもしれない。アインシュタインが予言したボース・アインシュタイン凝縮は絶対零度の世界から飛び出して、新奇な量子的特性の探求という基礎科学の興味と光超流動デバイスへの応用の両側面での進展が期待されている。