イリジウムNEXTによる次世代衛星ネットワーク

06.01.2017

Credit: Iridium

 

衛星電話を運営するイリジウム社は2016年12月1日、時期計画としてイリジウムNEXT計画を公表した。イリジウムはバックアップを含めて81基体制(注1)の静止衛星で地球全体を覆い衛星通信を可能とする計画で、次期計画では最初の10基のイリジウムNEXT衛星が12月にスペースX社のファルコン9ロケットで打ち上げられる予定である。

 

(注1)現在は地球を6区域に分けて各々11基の衛星でカバーする66基体制で運営されている。81基の衛星で運営する計画であったため原子番号81のイリジウムにちなんでイリジウム計画と呼ばれる。衛星軌道は高度780kmの低軌道(LEO)となり極地を含み地球上の全ての場所から通信が可能となる唯一の衛星ネットワークとなる。66基軌道上にバックアップ衛星6基と地上待機の9基を含めた81基が製作される。

 

 

2016年9月にケープカナベラルで打ち上げ直後に爆発したファルコン9ロケットはこの事故で打ち上げ事業が停止していたが、ようやく再開にこぎつけた。全81個の70個のイリジウムNEXT衛星打ち上げを託されたスペースX社にとっても今回の打ち上げは打ち上げ事業再開への一歩となる重要なステップとなる。

 

下図はイリジウムNEXT衛星の外観を示す。詳しいスペックと搭載機器の機能については別サイトにある。イリジウム社は2007年に通信能力の増強を目指したイリジウムNEXTを現在運用されている2015-2017年に66基を置き換えて配備する次期計画を公表した。

 

 

Credit: Iridium

 

イリジウムNEXTには通信速度を向上させた新しい通信システムが搭載され音声の他にデータ通信(上の図)を目指している。

 

81基の衛星製作はフランスのTAS(Tales Alenia Space)社が行うが、組み立てと衛星運用システムをアリゾナ州のATKオービタル社、打ち上げをスペースX社が担当する。

 

すでに最初の10基はスペースX社でファルコン9ロケット弾頭に搭載されケープカナベラル発射場の打ち上げパッドの回収作業を待っている。イリジウムNEXTの配備で全地球衛星ネットワークが完成すれば、地球上のすべての場所から音声・データ通信が可能となる。災害救助や安全な航空機運用など幅広い利用が期待される。

 

 

 

Credit: Iridium

 

マレーシア航空のジェット旅客機の遭難のように大洋にはレーダー網の届かない場所がまだ多い。イリジウムNEXTは通信のブラックアウトをなくすことができる。災害通信にも威力を発揮するであろう。複数の衛星同時打ち上げ事業は低コスト化が激化しておりインドは一度に103基の衛星を軌道に載せる予定であるが、イリジウム衛星は地球上の6ゾーンに正確に配置しなければならないので複数回の打ち上げが必要となる。