ナノダイアモンドがLiイオンバッテリーの電極問題を解決

01.09.2017

Photo: techspot

 

Liイオンバッテリーはそのエネルギー密度において他を圧倒しほとんどすべての携帯電子機器に使用されている。しかし高性能の代償としてスマホの火災事故が連続し潜在的な危険性が認識されることとなった。

 

火災事故の原因はLiが充放電で電極に脱着するLiが次第にデンドライドと呼ばれる物質を析出し薄い電解質膜(セパレータ)を突き破り短絡が起こることである(下図)。このためデンドライド形成を抑えた安全なLiイオンバッテリー開発の課題となっていた。

 

 

Credit: Credit: Harry, et al. ©2013 Macmillan Publishers Limited

 

ドレクセル大学の研究グループはナノダイモンドを電解質(LiPF6-炭酸エチレン/ 炭酸デイエチレン)に添加することにより、Li原子がダイアモンド表面に均一に析出するため銅電極にデンドライドが形成されないLiイオンバテリーをつくることに成功した。(Nature Commun. 8:336 1, 2017)。

 

安全性が確立するとともにLi原子の均一な脱着により充放電サイクル特性(寿命)が改善された。実験に使用されたナノダイアモンド(注1)の濃度は4.1 mg/mLであった。

 

(注1)直径10nm以下のダイアモンド粒子が市販されている。表面のダングリングボンドを利用して官能基で修飾することが可能。

 

下図a、fは銅電極表面にナノダイアモンド有り無しの状態のLi膜成長のモルフォロジーを模式的に示した。また図中のb-dはナノダイモンドが添加されていない場合のLi膜成長のSEM像、g-iはナノダイアモンドが添加された場合のSEM像で、緻密で平坦な成長を示している。TEM像のスケールは上から100、1、50μm。

  

Credit: Nature Commun.

 

 

ナノダイモンド添加でLiイオンの負極への金属膜成長は平坦となり逆反応でイオン脱離も平坦な表面が残る。使用するナノダイアモンドの濃度に最適値があるので、実用化には採算性の課題が残るが、デンドライド問題が原理的にクリアでき安全なLiイオンバッッテリーの見通しがついた。

 

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