新しいヒッグスボソンを発見か

18.12.2015

Photo: Motherboard

 

エネルギーを倍の14TeVにパワーアップして第二フェーズの実験に取り組んでいる世界最大の円形加速器LHCが新しい粒子の可能性ともみられる兆候をみいだした。LHCに設置してある複数の検出器のうちの2システム(ATLASCMS)で予想外の巨大な特異点を示すデータが得られた。

 

CERNの情報サイトMotherboardによれば、陽子衝突実験で750GeVに相当する質量のピークがみつかった。このエネルギーは高エネルギー陽子が衝突して消滅する際の光子(上のイラストの緑のライン)のエネルギーに相当する。

 

750GeVピークが他の実験でも検証されれば、1500GeVに相当する質量を持つ新粒子の発見となる。新粒子は750GeVのエネルギーを持つ2つの光子に崩壊すると考えられる。ATLAS検出器の確度は3.6σ、CMSでは2.6σで両方ともエネルギーは750GeVであった。

 

新粒子発見とみなされる確度は5σ(0.00003%)なので、2-3σでは可能性にとどまる。CMSの観測したイベントは10ATLASでは40であった。二つの検出器で独立に観測されたことで単独の結果より新発見の確度は高いとされる。

 

ヒッグスボソンに対応する光子ペアのエネルギーは125GeVとされたが、それが1,500GeVである可能性もある。また新粒子は標準理論(注1)の不完全性を提起するものになるかもしれない。標準理論がほころび始めたことが次第に明らかになっていくことは素粒子物理の黄金期ともいえることを示しているのかもしれない。

 

 

(注1)これまで発見された素粒子を整理してそれらを説明することができていたが、暗黒物質や粒子間の重力相互作用などについて説明できないことから、より完全な理論が期待されている。

 

 

Photo: photo.sf.co.ua

 

写真は2012年にヒッグス粒子を発見したLHCの立役者、ATLAS検出器。ATLAS実験には38カ国から3000人の研究者が参加しているが、日本からはKEKをはじめ150名が参加し、主要部分の建設に重要な寄与をしている。詳しくはATLAS Japan(LHCアトラス実験)を参照。