親と同居するミレニアル世代が社会に与える影響

21.01.2019

Photo: ibtimes

 

 ラフボロ大学の調査によれば現代の20歳から29歳までの独身成人の63%が両親と同居し、25歳から29歳まででも半数を超える。親離れし無い世代の増加で、生活費用の分担を巡って、生活水準の維持に関わる経済的な問題が生じている。米国でも同様の統計があり、OECDも2015年に調査報告をまとめている。

 

 親は子供が近くにいれば安心なので、なるべく近くにいてほしいと願う気持ちは万国共通だが、かつては高校を卒業すると同時に、工場に働きに出る者、大学進学者、都会に出て成功を夢見る芸術家志望の若者など、事情はそれぞれでも親元を離れて自立への道を歩むのが普通で、自立の証は中古で買った車だった。だが統計に明らかなように、そういう時代は過去のものとなった。

 

米国のミレニアル世代

 米国のミレニアル世代は、2019年に米国で最大の成人世代となると予測されている。2016年には、7400万人の団塊世代(52~70歳)に対して、推定7100万人のミレニアル世代(同年20~35歳)、2019年には、7300万のミレニアル世代と7200万の団塊世代が共存する。移民の結果として2036年まで成長を続けると予想されるミレニアル世代は、成人しても同棲や結婚よりも親と同居を続ける傾向が強い。

 

 18~32歳のミレニアル世代のほぼ半数は両親と同居(45%)、23%はパートナーと同居、17%は一人暮らしである(下図)。 一方、2016年初めに発行されたGlobalWebIndexによると、ミレニアル世代の40%が大学の学位を持ち、3分の2(67%)は都市、22%が郊外、11%が農村部に居住する。

  

Credit: GlobalWebIndex

 

英国のミレニアル世代

 ラフボロ大学の最新の調査によると、賃貸アパートで一人暮らしをしている場合、この最低基準に達するには、少なくとも年間18,400ポンド(約260万円)、ロンドンで27,000ポンド(約380万円)の収入を得る必要がある。収入がこれに達しない若者にとって、住宅費と生活費の節約が、両親と一緒に暮らす主な動機である。住宅価格と物価の上昇に加えて収入の低下、すなわち経済的理由が同居の理由でもある。

 

オーストラリアのミレニアル世代

 家賃を節約するだけでなく、複合世帯だと、国税と水道代を負担し、暖房を節約し、食料や他の商品をまとめて購入することで生活費を節約することができる。実際、調査では、若者一人が両親と同居すると、年間約7,000ポンド(約99万円)の節約となっている。オーストラリアの最近の調査(finder.com.au)では、16歳以上のオーストラリア人2,306人を対象とした調査によると、25~29歳の22%がまだ家族の家に住んでいる。

 

歪められた世代間経済関係

 しかし、そのような状況で若年成人と親の2世代の共同生活が、一時的でなく何年も続く場合には問題が生じる。両親と同居している若年成人は、世帯主である親の支出は正当化されると主張する。一方で両親は、子供が扶養されているときと同じように子供の感覚で甘やかし、息子や娘のために最善を尽くすことを望む結果、歪められた経済的関係が生み出される。若年成人にとっても成人でありながら親に依存した生活で精神的ストレスが蓄積する。

 

 両親と同居している若い人々が家計にどの程度貢献するべきかに、親と子が向き合うと歪められた経済関係が露呈する。両親がほとんどの家計を支払い、同居する子供が生活費の一部を負担することで合意していても、その負担費用についての合意がないことが多い。

 

 また親は、家主のように家族関係は商業的関係ではないと考えがちだが、それは単なる合理的ではなく感情に支配される主観的な議論になる。調査によれば、自宅に息子や娘を同居させるための追加費用(共同食料品の購入や暖房費の増加など)は親の生活水準に影響する(悪化させる)ほど、開始時点では大きくはないとしても、両方の経済状況次第である。親が高齢化して収入が減ったり、年金に依存するようになって、負担が増えることになれば、双方とも生活水準を保つことが困難になる。

 

社会・経済に負の効果

 増え続ける親と同居する若者の一因には住宅の高騰の他に実質賃金の減少があるが、この傾向は同時に若者の自立する年齢を上昇させる精神面でも重大な影響を持つ。社会活動への参加を拒む若者の増加は国の経済活動の低下に結びつく。個人消費の低下、親への経済的負担増加で負の経済効果となる一方、結婚や家族などに対する考えや価値観の変化につながる。先進国特有の親離れしない世代の問題が世界各国で認識されつつある。

 

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