パリ銃撃テロで揺れるフランス大統領選挙

22.04.2017

Photo: dailysignal

 

 パリの中心で死傷者3名を出したISの銃撃テロはフランス大統領選挙にも大きな影響を与えることとなった。今回の銃撃テロの犯人はベルギー国籍のアブ・ヨシフでISの指令で、自動小銃で警官を射殺、他に警官2名が負傷した。

 

 世界各国の首脳から哀悼の意が寄せられる中、国民戦線ルペン党首と中道路線のマクロン氏に水を開けられている保守、共和派のフイヨン候補はパリテロにいち早く反応し、キャンペーンの一時中止を決定した。フイヨン候補は選挙戦においてISに断固戦う姿勢をみせ、急遽予定されていた21日の演説を取りやめた。ルペン党首もツイッター上で警察官が犠牲になったことに哀悼とISへの怒りを表明し、一時演説を取りやめた後、再開した。またルペン党首に肉薄しているマクロン氏もツイッター上で警察官の家族に哀悼の意を表した。

 

 23日に予定されている投票で過半数を取れない場合、上位2者で行われる5月7日の決選投票で大統領が選出される。一方、パリテロに対して各国首脳は対テロ対策で団結して立ち向かう趣旨の声明を出したことで、候補者を選びきれていない1/3の有権者に候補者の対テロ政策が大きな比重を持つことになった。

 

 フランスでは2016年7月14日に暴走トラックが革命記念日の花火の見物客の人混みに突っ込み、少なくとも84名が死亡したフランス南部のニーステロ事件のあと、11月13日に パリ市内で同時多発テロ事件が起こり、当局は最大限の警戒を強めたとしているが、今回の銃撃テロの発生を許したことで、警備不足の批判が大統領選に少なからず影響を与えるとみられる。

 

 しかしLe Parisien紙は今回の犯人は別人で、パリ近郊で2月に警察が一旦確保しながら釈放したため強行に及んだとも報じている。そのため警備の不備が批判されルことになり、各候補者の選挙戦への影響を複雑なものにしている。この男は2003年に3名を殺害して服役したが5年に減刑され出所していた。

 

 イスラム教徒が総人口の約10%を占めるフランスは欧州諸国の間では最も高い国である。その多くはフランスの植民地であったアルジェリア、モロッコ、チュニジアからの移民である。フランスが抱える人口減少対策として他のイスラム国からの移民も受け入れてきたため、イスラム原理主義思想を持つテロリストが身を隠すコミュニテイが全土に存在する。イスラム化コミュニテイに潜むテロリストの検挙は現実的に困難なことも事実だ。

 

 パリ銃撃テロより前にマルセイユ警察は選挙妨害を計画していたテロリストを逮捕、パリのテロリストの潜伏先で、自動小銃、拳銃2丁、爆発物3kgが押収された。大統領選当日の妨害テロの可能性もあるとして、警備強化でフランス全土が騒然とした週末を迎える。ルペン党首、マクロン氏、フィヨン氏の上位3人が対テロを意識して国民の安全保証を政策に掲げている。

 

 

Credit: nomuraconncts