国際合意を無視したイランの核開発疑惑

24.05.2017

Photo: ipolitifact

 

反イラン政府の活動を国外で続ける国民抵抗評議会(NCRI)が4月22日、イランが核開発を凍結するとした協定とは裏腹に、核開発を進めている兆候が衛星写真に見られることを発表し波紋を呼んでいる。

 

国民抵抗評議会によれば衛星写真の他にイラン国内の情報からも開発の継続が確認されたとしている。防衛開発研究部(SPND)と呼ばれる兵器研究開発組織が7部に別れて分担して核兵器を開発中しており、一部の施設では拡張され活発な活動がみられる。テイラーソン国務長官が下院議長に送った書簡でも、イランは核開発凍結の合意に反して活動を続けるテロ国家であるとした。

 

一方、トランプ大統領もイタリア首相との合同記者会見でイランが米国との合意事項である核開発の凍結を反故にして、兵器開発を継続していると非難した。IAEAもSPNDの査察を許可されていないため、核兵器開発の実態はつかめていない。同様にIAEAの査察ができないパーチン軍事基地などの核疑惑が高まっている。

 

パーチン基地北部に新たに建設された第6計画と呼ばれる地区の衛星写真が公開され活発な活動が確認されたことで、国内情報と合わせてイランの進める核兵器開発疑惑が濃厚になった。ナタンやフォルド施設とは異なり武器製造の拠点であるパーチン基地周辺の兵器開発施設が核開発の中心とみられているが、IAEA査察の道が閉ざされ、決定的な情報が得られないことに米国政府は不満をつのらせている。

 

Credit: stratfor

 

米国が確実としてイラク戦争の理由となったイラクの大量殺戮兵器は存在しなかった。IAEA査察による現地情報の入手もできないとすれば、再びイラクのような先制攻撃も否定できない。イラクの核開発のもう一つの問題はテロ国家の指定を受けた北朝鮮との核ネットワークである。自前で核弾頭を製造しなくても部品を輸送して組み立てれば核兵器が所有できるからだ。非核拡散のための政治手法(CTBT)や交渉(軽水炉供与との引き換え)とIAEA査察という従来の手法が無意味になったことを認識しなくてはならなくなった。

 

核兵器(原爆)開発への道はふたつ。天然のウランをガス拡散法で濃縮して兵器純度に高める方法と黒鉛型原子炉でプルトニウムを生産するか、である。この内前者はIAEAのウラン濃縮施設に査察が行われウラン濃縮情報がつかめた。またイランで稼働中の原子炉はロシア製の加圧水型炉で、軽水炉では黒鉛型に比べてプルトニム製造には向いていないとされるが、使用済み核燃料には1%のプルトニウムが含まれるため、これから分離精製すればプルトニムを製造できる。イランは米国から導入した研究用原子炉でプルトニウム回収技術を習得しているので、原理的には兵器用プルトニウムの道が閉ざされたわけではない。また北朝鮮から部品を移送して組み立てることも考慮する必要がある。

 

 

複数の選択肢を潰していかなければイランの核兵器開発を封じることはできない。少なくとも経済制裁と引き換えの凍結は時間稼ぎでしかない。