後半を迎えるラマダン~各国で強まる無差別テロリスク

11.06.2017

Photo: ibtimes.co.in

 

 イスラム教の国は今、イスラム教の最も重要な「聖なる月」のラマダンの最中にある。527日から始まったラマダン(絶食月)とラマダン明けの祭り(イード)は624日まで続く。過去2年、イスラム過激派組織「イスラム国」ISはラマダン月の間にテロを呼びかける声明をだし、一年でこの間最もテロ事件が発生している。

 

過去最大のテロと犠牲者

今年も日本の外務省を含む多くの国で、ラマダン月のテロについての注意喚起を出している。2016年のラマダン期間中には、15カ国に渡り、死者421人と負傷者729人をだしたテロ事件が起き、それまで最も被害者の多い月となった。イスラム教最大の聖地であるメッカにある、予言者のモスク(預言者ムハンマドの墓がある聖なるモスク)も攻撃対象となった。

 

 今年のラマダンは、2016年を大幅に超え、610日時点で29カ国(注1)に渡り、189のテロ事件が起きている。死者数も1,783人に上り、負傷者1,830人と過去最高の犠牲者をだしている。聖なる月と呼ばれながら、なぜこれほど無差別(男女、大人子供、宗教、国籍、イスラム教のスンニ派・シーア派など関係なく)なテロを起こしているのか?

 

(注1)イラク、シリア、リビア、イエメン、サウジアラビア、イラン、アフガニスタン、エジプト、ナイジェリア、ソマリア、チューニジア、カメルーン、アルジェリア、ニジェール、チャド、ケニア、ブルキナファソ、マリ、インド、パキスタン、インドネシア、フィリピン、タイ、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツ、英国、米国

 

 それは、ラマダンの期間中に殉死やジハード(聖戦)をすると、天国に行ける可能性が高まると言われているからである。特に、イスラム教の異教徒の神への捧げは、天国で報酬を受けられるとされている。そのためか、中東ではキリスト教信者がテロの対象となるテロ事件が多い。

 

ヨーロッパには「ジハード軍隊」

 現在ヨーロッパで最もテロ事件が起きている英国、フランス、ドイツ、ベルギーの4カ国には、66,884人のイスラム過激派がいると正式に発表されている。この数は「ジハード軍隊」とも言える規模のものである。

 

 英国情報当局によると、英国だけでも将来テロリストになる可能性がある人は23,000に上り、フランスでは対テロ対策部署は15,000を監視下に置いている。ベルギーでは、イスラム過激派は18,884で、その数はベルギー軍隊の62%に匹敵する。ドイツでもドイツの情報機関の一つである連邦憲法擁護庁によると、2011年から2.6倍の10,000に増えたと発表している。

 

 

 積極的な対策がない限り、ヨーロッパは日常的にテロが起きている中東と同じ状況になりかねない。最早、66,884人のイスラム過激派を全て監視することは困難な規模まで膨れあがっている。

 ラマダンが終了するまで残す13日、先進国でもテロの警戒が必要である。