朝鮮半島非核化の鍵を握る諜報機関主導の外交チャネル

20.03.2018

Photo: www.thelocal.se

 

 平昌オリンピックを境に北朝鮮と米国の交渉が急速に進展している。金正恩がこれまでの北朝鮮の外交方針を大きく転換した理由として、経済制裁の効果とする見方が多い。しかし北朝鮮の対米政策の変化はそれだけでは説明できないほど大きく、その背景には北朝鮮に影響力のある外部要因、特にこれまでの米朝間の交渉チャネルがトランプ政権で変貌を遂げたことが、強く影響している。

 

諜報機関が連携した新規外交チャネル

 これまで米国は国務省が主導して北朝鮮との連絡チャンネルを通じて外交交渉を行ってきた。しかし国務省は圧倒的にネオコン派が優勢で、北朝鮮問題を巡ってトランプ大統領はティラーソン国務長官と対立していた。トランプ大統領は従来の国務省中心の交渉チャネルが新規交渉の場となり得ないとの判断から、個人的に信頼を置くポンペイCIA長官に直通機密チャンネルを設置させ、北朝鮮との外交交渉を進めていた。

 

 今回の米朝急接近と交渉の加速には米国CIAのほか、韓国と北朝鮮の諜報機関の間の積極的な連携で、これまでの利益関係に縛られない自由交渉チャネルが形成できたことが大きく働いた。外交チャネルよりも諜報機関公認の新規チャネルが効果的に働いたことになる。

 

スエーデンで米国捕虜解放に合意

 世界中が期待を持って注視する中、スエーデン外務省が16日に予定していた北朝鮮側との会談の内容についての公式発表はなかったことから、米朝首脳会談の事務レベル交渉が暗礁に乗り上げたと取る見方もある。しかし交渉の結果、朝鮮に拘束されている米国人3人の解放について、両国当局と仲介国のスウェーデンが協議に入っており米朝政府が最終合意に「ほぼ至った」と伝えられている。

 

北朝鮮は核兵器解体を模索

 北朝鮮のチェ・カンイル北朝鮮北米局長はフインランド、ヘルシンキを訪れ、20-21日に北朝鮮の核兵器解体について協議すると見られる。20日からの米朝協議を前に北朝鮮のチェ・カンイル北米副局長は北朝鮮との核交渉に従事した米国元当局者と食事会に参加し、終始会談は和やかな雰囲気だったという。北朝鮮が核兵器解体に応じた場合、核兵器解体は確立した技術であり得られた高濃縮ウランはこれまでロシア政府が行ったように、希釈して自国の軽水炉燃料で使用するほか、輸出に当てることもできる。

 

兵器級ウランの使い道

 核兵器には高濃度ウラン、プルトニウムが使用されるがウランは希釈して原子炉燃料とすることができる。1993年に米国とロシアが締結した核兵器解体協定では核兵器解体で得た濃縮ウラン500トンを低濃縮ウランに希釈して20年契約で米国に安価で売却した。一方、ウランに比べてプルトニウムの使い道は極めて限定される。MOX燃料として消費することや高温ガス炉で燃焼させる核燃料サイクルなど様々な処分方法が研究段階で有効な処分は確立していない。

 

 ヘルシンキで20日から行われる米朝協議には米国から核兵器解体の専門家も参加していると見られる。プルトニウムの長期保管場所(注1)を国内に有するフインランドの核兵器解体の役割が注目される。ヘルシンキ協議に専門家が参加しているので、核兵器解体の工程や費用についても触れると見られる。ソ連の核兵器解体では米国は12億ドル、日本は1億ドル支出している。

 

(注1)核廃棄物処理先進国フインランド

 フインランドは1994年に原子炉起源の核燃料廃棄物(高レベル放射性物質)を国内で処分することを決めた。核廃棄物はオンカロの花崗岩の岩盤に長期地下貯蔵庫で長期保存される。オンカロで2004年から地下420mの貯蔵庫とアクセストンネルの建設が開始、2015年から貯蔵庫(横穴)の建設も開始された。横穴の貯蔵区画は全部でキャニスター100年分の容量を持つとされる。

 

 

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