海中原子炉の将来性

24.04.2016

Source: AREVA

 

福島第一の事故で原子炉の設置基準が厳しくなったことは大型原子炉建設に大きく影響を与えることとなった。安全性の高い第三世代原子炉が建設コスト高騰と工期遅れで各国とも建設が進まない。さらに核廃棄物処理の問題を含めた採算性に疑問が生じ、温室効果ガス排出もウラン採掘から廃棄物処理までを含めた採算性では優位性が低下することが認識されたことも大きい影響を与えている。

 

一方、新興国ではエネルギー不足が深刻化しており、簡便に利用できる小型モジュール原子炉(SMR)への期待は相変わらず大きい。海中あるいは洋上に原子炉プラントを設置する計画はロシア、フランス、中国で進められているが、フランスのアレヴァ社はFlexblueと呼ばれる海中設置型SMRを提案している。

 

Flexblueは出力160MWhの小型PWR(加圧水型原子炉)で、数キロ沖合の水深60-100mの海底に設置される。電力は海底ケーブルで陸上に送られる。フランス海洋開発局(DCNS)が設計し、アレヴァ社とフランス電力(EDF)が開発を進めている。

 

Flexblueは基本的に原子力潜水艦のSMRを海中固定としたもので推進機関として使うのではなく、発電に使う点が異なるだけである。原子炉の海底設置というと耳新しく感じる人も多いかもしれないが、海中にある原子炉(原子力潜水艦)は珍しくない。アレヴァ社によればFlexblueで発電された電力は内陸部80km圏内まで供給できるとしている。

 

 

Source: AREVA

 

Flexblueは直径12-15m、長さ100mの潜水艦のような円筒形である。海中拙著型SMRのメリットは陸地に建設場所を確保する必要がなくなることと原子炉の破損で放射性物資のフォールアウトから住民を守れることであるが、一方で海洋汚染につながる。これまで原子力潜水艦では原子炉を熱源として蒸気タービンを回し、ギアで減速してスクリユーを駆動する型式が一般的であったが、フランス海軍の原子リィク潜水艦はタービンで発電機を回し、電気モーターでスクリュー駆動する型式を採用している。そのため発電機まで含まれる原子炉ユニットがそのまま海中設置がたSMRに転用できることから、開発期間を大幅に短縮できることが特徴である。

 

 

燃料交換時期を伸ばして稼動効率を高めるたまには高濃度濃縮ウランを燃料に用いることができる。ただし海底設置型の維持コストは高く作業も困難である。この問題は洋上設置型SMRでは解決されるため、ロシアは海軍仕様の小型PWR2基を洋上に浮かぶ70MWhクラスの浮体原子炉を開中である。また中国も南シナ海開発を理由に浮体原発計画を発表した。SMRの海底及び洋上設置と並行して安全管理や運営の基準の見直しが必要である。