テキサス州のアメリカ合衆国離脱問題

17.05.2016

Photo: smartpak 

 

 テキサス共和党大会で, テキサス州のアメリカ合衆国からの独立を巡り住民投票を行うかどうかを決める投票が13日に行われた。住民投票は2票差で否決されたが、10年前から始まったテキサス独立の草の根運動の支持は年々勢いを増しており、今回の結果は住民の独立を求める運動の高い支持率を如実に示している。

 

 

 テキサス州はlone star state(一つ星の州)と呼ばれ、メキシコから独立、アメリカ合衆国に加盟する前の9年間は独立国家であった。当時、メキシコから勝ち取った独立と将来の希望を願って掲げた一つの星の旗は、今でも合衆国旗と同じ高さに掲げられている。住民が求めば合衆国からの離脱は憲法上可能である。

 

 合衆国からの独立の動きは今回が初めてではない。2009年にリック・ペリー当時テキサス州知事は国の財務政策に反対して、テキサスの独立の可能性を示唆した。2012年には、8万人以上の住民が独立を求める請願書を連邦政府に提出した。最も保守的な州で独立を求める運動は、オバマ政権のリベラル政策や中央権力に対する国民の不信感と不満を反映したものである。

 

 

金・銀は法定通貨

 テキサス州は、2015年に金・銀を正式に法定通貨とする法律を成立させた。1973年に金体制から離脱してから、連邦政府により金・銀は法的通貨として使われなくなった。しかし、アメリカ建国の時から米国憲法第1条第10節で、金・銀を法定通貨として使うことを認めている。今では州の法律で、半数以上の州で金・銀は法定通貨として扱われている。

 

 中央政権と連邦準備制度の信用を下げる、反政権的行動として全米から批判を受けながら、テキサス州はアメリカの州の中で初めて州の管理下にある金塊保管所の設立を予定している。現在ニューヨーク中央銀行に預けている10億ドルの金をテキサスに移動、テキサス州からの金の流出を防ぐと同時にその安全の確保、預金口座と同様の金融サービスを提供することが目的である。

 

 

 ニューヨーク中央銀行への不信感、政府の信用で成り立っている信用紙幣と破綻状態にある連邦政府への信頼の衰失、連邦政府による金没収の脅威が設立の理由である。この動きも、将来の独立を目指すテキサス住民の強い意思を反映しており、独立に向けての体制作りとも言える。