世界で一番高価な元素とは

Aug. 30, 2015

Photo:  NUCLEAR STREET


世界で最も高い元素とはなんだろう。高価な物質のランキングベスト16http://grapee.jp/718)のなかで金属のみをピックアップすると次のように、金は金属として最下位である。


もちろんランキング上位の金属は希少価値があるものの、お金を積んでもで買えない(埋蔵量が少なかったり天然に存在せず、製造方法が困難だったりするため)ものもある。ちなみにランキング1位に輝いた反物質は単離されて存在していないので参考価格でしかない。)


No15 Au 金 5,700/g

No14 Rh ロジウム 5,900/g

No.13  Pt プラチナ 6,100/g

No7    Pu プルトニウム 400,000/g

No4    T3H) トリチウム 3,000,000/g

No3    C ダイアモンド 5,600,000/g

No2    Cf  カリフォルニウム 275,000万円円/g


それぞれ高価である理由について少し説明しよう。まず金であるが密度19.30g/cm3はずば抜けて重い。その価値は金本位制にあっては通貨としての価値である。金の性質である光沢を失わない安定性でその価値は保障される誰でも納得する物資であるが、1970年代後半は研究用の純金を田中貴金属から購入するとグラム千円であった。


現在の価格が5.7倍になっていることは、一定の量が市場に存在しても(貨幣と相対的な)価値は変動する、ということがよくわかる。導電性に優れた金は電極として理想的であり、電気測定になくてはならない。なので当時は大学院生の筆者も田中貴金属に10g単位で注文していた。先方も電話一本で10gぐらいだと請求書をいれて簡単に発送してくれた。現在の価格では考えられない価格になってしまった。この価格だと金発注を教授が厳しく監視するだろう。



Photo:bifaloo


安定ではない金価格

金価格の変動を示す上の図をみると近年の金相場の急激な上昇が実感できるし、その背景について疑問に思えるだろう。金の用途は装飾品の他、工業用にはICチップの配線など電極、配線材料、そして触媒だが最近のナノ科学の進展で直径が数100nmの金ナノコロイドが注目されており、この分野の工業利用の消費の節約に期待が持てるようになった。また金に変わる配線材料として銅が代替として使われだしてきた。電子回路からの金リサイクルは都市鉱山と呼ばれるが、廃液の環境汚染が問題になりつつある。ちなみに金よりも銀の方が電気伝導率は高いが銀は酸化するので、配線に使われるのは極めて少ない。


 

触媒が価値をさらに高める

ロジウム、プラチナはどちらも貴金属として、また工業用の触媒材料として金属錯体の中心金属として用いられる。例えばロジウムは水素化のウイルキンソン触媒に、プラチナは車の排気ガスの浄化触媒として欠かせない。プラチナの密度は21.45g/cm3と金を上回る。なおプラチナの世界の産出量の1位は南アフリカで75%近くを占める。金と並んで貴金属の先物取引で価格の変動が注目されるが、人類が手にしたプラチナはわずか4,000トンで金よりも希少価値ははるかに高い金属である。

 

ここまでは市場の動向が気になる金属すなわち自由に売買することが許される金属なのでその条件を課せば、貴金属のイメージにかなったランキングであった。


 

兵器としての価値

プルトニウムは同位体が全て放射性でウラン238の放射器編で生じるため、天然にはウランにわずかに含まれるのみであった。しかし原子炉でウランの核反応で生じるため、原子力発電所の核廃棄物として、また原爆、熱核反応兵器(水爆)実験で生成されることとなった。核実験で地球上に10トンのプルトニウム放出された。兵器に用いられるプルトニウムは同位体23990%以上でなければならない。

 

プルトニウムの価格は製造と保管に関するコストであり、原子炉の総数と関係がある。ちなみに米国のプルトニウム保有量は100トン、英仏は35トン、日本は9トン程度。


 

未来のエネルギー源

トリチウム(三重水素)は宇宙線や原子炉中の核反応で生成され、ベータ崩壊する水素の放射性同位体である。熱核反応核兵器(水爆)や融合の燃料としての価値である。もちろん一般に購買が自由な市場には存在しないが、規制をクリアできれば(例えば核融合の燃料用途として)大学など研究期間では入手ができる。

 


付加価値が高いダイアモンド

ダイアモンドの価値については説明不要で、装飾品、宝石の中でひときわ目立つ存在である。密度は3.52g/cm3と意外に軽い理由は炭素原子から構成されるためである。際立った透明性、硬さ、屈折率のたかさによって光り輝き安定なダイアモンドだが炭素でできているため、合成も可能で工業用のダイアモンドははるかに安価である。最近の合成ダイアモンドの品質は向上されており、長期的に見れば今後の市場価値が揺らぐ可能性はある。原料は超低価格だが付加価値が驚異的に上昇する元素No.1である。




意外なトップはカリフォルニウム 

もっとも高価な金属No1は原子番号98のアクチノイド元素カリフォルニウムCfである。その製造は原子炉内でウラン235の中性子捕獲を繰り返すことによる核反応による。カリフォルウニウムの由来はカリフォルニア大学バークレイキャンパスのサイクロトロンでCf245を発見したことによる。

 

熱核反応兵器(水爆)の小型化は困難だがカリフォルニウムを使った原爆は小型化できいわゆるスーツケース原爆が製造可能であるが、この価格では兵器といえども高価すぎてしまう。兵器といえども市場原理に逆らうことができないため今日まで(幸いなことに)実用化されずにいる。

 

 

 

こうしてみると希少価値という意味が自然界の存在微量で製造が困難という意味と他をもって変えがたい機能を持つという2点が満足されることが価値につながることが改めて認識される。貴方はどの金族を持ちたいと思うのだろうか。